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営業も知っておきたい!今、B2Bマーケターに求められる7つのスキルとは

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2017年に改訂された学習指導要領が昨年(2020年)から小学校で、今年からは中学校で始まっています。昨年は小学校からプログラミング教育が必修化されるということで、大きな話題にもなりました。来年の4月からは高校で新カリキュラムがスタートします。統計解析やデータ分析に関連する仕事をしていて、関連する学会にも在籍している立場としては、データサイエンスを大学以降で学ぶ際の大前提である「行列」が部分的であっても復活し、統計が必修化したことは好ましく思っています。

行列や統計だけに限らず、時代が遷り、社会の求めるものが変化するのに合わせて、私たちが習得すべき学習項目やスキルは異なってきます。そしてこの学ぶ内容の変化は、Web化・デジタル化が進んでいるB2B営業・マーケティングにおいても、現在進行形で起きていることです。

そこで今回のトライツブログでは、現代のB2B営業・マーケティングの必須スキルについて、これまでの変遷と絡めて見ていきたいと思います。自身のB2B営業やマーケティングのスキルを高めたいが、何を勉強したら良いか分からないという方、自社の組織としてのB2B営業・マーケティングのスキルアップを図りたいという方は、ぜひお読みください。

B2Bマーケティングの変遷と求められるスキルの変化

B2Bマーケティングという仕事が日本でも一般的になってから現在に至るまで、その仕事の内容とそれに求められるスキルは大きく変化してきました。ここ20年程のB2Bマーケティングの変遷について簡単に振り返っていきましょう。

私が2000年にデータベース・マーケティングのコンサルタントとして働き始めたころ、B2Bマーケティングはまだまだ業界紙や展示会、ダイレクトメールが主流でした。メディアに掲載する広告を作る、イベントの展示空間をデザインするといったクリエイティブな仕事をするために、デザインやコピーライティングといったアートに関連するスキルが重要視されていたように思います。もちろん、A/Bテストのようにテストや検証を通じて、より反応の良いデザインやコピーを選ぶということはしていましたが、現在のような大量の複雑なデータを取り扱うものではありませんでした。

そのような中、2000年を過ぎたあたりから、ITツールの普及・浸透に伴ってマーケティング施策がセグメント別・顧客別にカスタマイズされるようになってきました。データベース・マーケティングや、CRM、1to1マーケティングなどというコンセプトが一気に普及し、データを使ってターゲットごとに最適な施策を選んでいくようになったため、データベースを操作し統計ツールなどを使って分析する専門家がマーケティングチームの中に入ってくるようになったのです。

そして2010年ごろには、B2Cで始まったWebマーケティングの波がB2Bにも押し寄せてきました。検索結果で上位に表示するための手法や、様々なWeb広告、ブログ記事や動画などの各種コンテンツの活用、SNSを使ったマーケティングなど、Webが重要な位置を占める現在のB2Bマーケティングの姿が出来上がってきました。また、MarTechと言われるデジタルツールが一気に普及し、MAはもちろんのこと、チャットボットなどのAIツールも身近なものになってきています。

このようにB2Bマーケティングと一言で言っても、その仕事の中身と求められるスキルはこの20数年のうちに大きく変化しています。そのような状況において、私たちは世の中から求められるようになるために、どのようなB2Bマーケティングのスキルを身に着けていけばよいのでしょうか。

海外調査レポート「B2Bマーケターに求められる主要7スキル」

現在のB2Bマーケターに求められるスキルについて調べていたところ、面白い記事を見つけました。それは、ニューヨークに拠点を置くB2B専門の広告代理店Ironpaper社の記事「Key Skills for a B2B Marketing Career」。同社はSEO(検索エンジン最適化)やWebコンテンツの作成、Webページのデザインなどに強みを持っているます。この記事の中では、Mckinsey Marketing Partners社などの調査会社のデータを基にして、企業がマーケターに求めているスキルを7つピックアップしていますので、それらをまとめて見ていきましょう。

1. 分析スキル:効果的なキャンペーンの要素を知る
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(以下、EIU)の調査では、企業の32%がデマンドジェネレーションとデータ分析のスキルが必要だと回答しており、そのうち47%はデータ活用のスペシャリストを増やしたいと答えています。

2. ライティング/メッセージングスキル:質の高いコンテンツを届ける
McKinley Marketing Partners社(以下、MMP)の調査によると、デジタルマーケティング分野で最も需要の高いスキルは、コンテンツの作成・編集(23%)とコンテンツ戦略(20%)です。

3. 見込客創出スキル:様々なチャネルから見込客を獲得する
見込客をランディングページなどに誘導し、フォームへの入力や資料のダウンロードなどのアクションへとつなげる見込客創出(デマンドジェネレーション)スキルが必要です。EIUの調査では、企業のうち32%がこのスキルを必要としていますし、MMPの調査では、マーケティング担当者の採用者のうちリードジェネレーションのスキルを持つ人は16%に上ります。

4. 見込客の顧客化スキル:見込客を顧客に転換する
何が見込客を顧客にコンバージョン(転換)させるかを理解し、その割合を向上する仮説検証のスキルが必要です。自社のWebページでテストを実施してコンバージョン率を上げられるというのは、どの企業からも求められるスキルです。

5. テクノロジー活用スキル:Googleアナリティクス、マーケティングオートメーション
実用的なマーケティングツールが増えた現在では、それらを活用できるスキルが不可欠です。どの分野のスキルを身につけたいかという質問に対し、39%のマーケターが「マーケティングテクノロジー」と回答している(EIU調査)ことからも、このスキルの重要性がわかります。

6. 調査スキル:市場と競合を知る
トップマーケターは、市場や競合についての調査を行っています。CoSchedule社の調査によると、最も優秀であると評価されているマーケターの56%は、月に1回以上もの頻度で調査をしています。

7. 戦略立案スキル:価値提案、市場環境、価格設定
マーケターの38%が、向上させたい重要なスキルとして「戦略策定および計画づくり」を挙げています(EIU調査)。

7つのスキルを駆け足で見てきましたが、いかがでしたでしょうか。Ironpaper社がWebマーケティングを得意としている代理店ですので、若干Webやデジタルに偏っている傾向があるとは言え、現在のB2Bマーケティングのトレンドに沿ったスキルセットになっていると思います。これら7つのスキルセットは、3つのグループ(スキル群)に分けられます。

1つ目のグループは、デジタル活用に関するもの。データを「1. 分析」し、最適な施策を選ぶことで「3.見込客獲得」し「4.見込客の顧客化」を実現する。そしてそれらに必要な「5. テクノロジーを活用」する。これらのデジタルに関するスキルが、現在のB2Bマーケターにとって不可欠な素養になっています。

2つ目は、コンテンツ作成に関するスキル。「2. ライティングとメッセージング」のスキルを活かして現在のマーケティングに必須であるコンテンツを作成・編集し、それを見込客や顧客に適切に届けるというもの。

そして3つ目のグループが、伝統的なマーケティングスキルである「6. 調査」と「7. 戦略立案」です。マーケティングチャネルの主流がマスメディアからWebへと移ろうと、どれだけデジタルツールが広がろうとも、市場を調べて自社の戦略を具体化するスキルが不要になることはありません。

この3つのグループに分けることで、7つのスキルセットの意味合いがより理解しやすくなるように思います。

主要7スキルを参考に自身のスキルアップ/組織力の強化に取り組もう

この7つのスキルセット、すなわち「デジタル活用」「コンテンツ作成」「調査&戦略立案」という3つのスキル群についての情報を、私たちはどのように活用すればよいのでしょうか。

世の中から求められるマーケティングや営業のスキルを伸ばしたいという方は、自己学習のテーマを決める参考にしていただくのが良いでしょう。データ分析のスキルを磨く。色々なツールの無料版をダウンロードしたり、YouTubeなどの動画を見たりして、使えるツールの種類を増やす。ブログ記事や動画などのコンテンツ作成の技術を磨く。取り組むべきテーマはきっと見つかるはずです。

ちなみに記事ではB2Bマーケティングのスキルとして紹介されていますが、これらのスキルは「マーケティング」の文字を「営業」に置き換えれば、B2Bの営業企画でも欠かせないスキルばかりです。営業部門でのキャリアアップやスキルアップを目指されている方は、7つのスキルセットを営業に読み替えて磨きをかけるテーマを見つけてほしいと思います。

そして、もう1つの活用方法は、自社のマーケティング力・営業企画力をこれらのスキルセット/スキル群を使ってチェックする、というものです。自分たちの組織はこれらのスキルを備えているだろうか、安定的に高めていくための組織的な対策を打っているだろうか、自社だけでは不足しているスキルを補填する社外のパートナー網を構築できているだろうか、という観点でチェックすることで自社の組織力を高める方向性が見えてくるはずです。

Web活用の広がりやAIなどの技術の進化など、B2B営業・マーケティングを取り巻く環境が大きく変化するのに合わせて、私たちがそれらの仕事で成果を出すためのスキル、社会から求められるスキルも変化してきています。こういった変化を意識して、自らの成長のルートを定期的に描き直すということが今の時代に働く私たち一人ひとりに求められているのです。

参考「Key Skills for a B2B Marketing Career」(Ironpaper, October 26, 2021)

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