トライツコンサルティング株式会社

コンテンツの無差別攻撃はもうたくさん!コロナ禍におけるコンテンツマーケティングを再考する

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ブログやダウンロード用資料、動画などをWeb上で情報発信することで、見込客の開拓・育成を行うコンテンツマーケティング。日本でも広く話題になり始めた2010年前後から10年以上が経ち、コロナでリモートワークが普及してマーケティング活動のWeb化が加速したことも相まって、国内のB2B企業でも多くが導入・運用するようになっています。

このブログをお読みの方の企業でも、ブログ記事や調査レポートを自社のWebページに公開していたり、メールマガジンを使って送付していると思います。このように日本のB2B企業でも当たり前の手法になってきているコンテンツマーケティングについて、気掛かりな調査レポートが最近発表されました。

今回のトライツブログでは、そのレポートを参考にしてコロナ禍でさらに加速したコンテンツマーケティングで企業の購買担当者は何を問題視しているのか、そしてそれを乗り越えるために何が必要なのかを見ていきます。現在取り組んでいる方はもちろん、今後取り組みたいとお考えの方にも参考にしていただける内容ですので、ぜひお読みください。

海外調査レポート「コロナ禍でコンテンツマーケティングに起きている変化と問題」

コンテンツマーケティングについての興味深いデータが掲載されているのが「B2B Buyers Insights Report 2021」。このレポートは特に欧州市場向けにB2Bマーケティング用ツールを開発・販売しているdurhamlane社(ダーハムレイン)とCyance社(サイアンス)の2社が、共同で作成したものです。コロナ禍でどんな変化が起きたのか、早速見ていくことにしましょう。

B2Bの購買担当者は、コロナ禍でこれまで以上のマーケティングコンテンツを消費しています。(中略)
リモートで勤務する人が増えたことにより、あらゆる種類のデジタルマーケティングの量が増加しています。
ダイレクトEメール…92%増加
メールマガジン…64%増加
SNS上のダイレクトメッセージ…64%増加
SNS上の広告…57%増加
バナー広告…53%増加

イギリスやイタリア、フランスなど厳格かつ長期間のロックダウンが実施された欧州では、相当な量のコンテンツがWeb上を飛び交っていたことが想像できるデータとなっています。このように各社がWebマーケティングに力を入れたのですが、どうもそれが購買担当者にとってはありがたいものではなかったようなのです。

調査結果によると、購買担当者が積極的に購買を検討している場合であっても、関連性やタイミングなどがマッチしていない情報に圧倒されていることがわかります。
「企業から自分とは関連性の低いコンテンツが送られてくる」…79%
「企業からの情報発信の頻度が多すぎる」…74%
「企業からの情報発信のタイミングが適切でない」…64%

このデータを見ると、大量かつ不要なコンテンツでEメールの受信箱やSNSの画面がいっぱいになっていてうんざりしている購買担当者の顔が目に浮かぶようです。私はGmailを普段から使っていて、マーケティング関連のメールは「プロモーション」や「ソーシャル」タブに自動的に振り分けられているのであまりストレスを感じずにいられていますが、使用している環境によってはコンテンツの無差別攻撃に困り果てている人も多いのではないかと思います。

B2B購買担当者が求めているもの

そしてレポートの後半では、B2B購買担当者が何を求めているのかを尋ねた結果を端的にまとめています。

私(購買担当者)の課題を理解して(71%)、その解決の仕方についてを教育してほしい(69%)

商品や事業内容について話す以上に私のことを聞いて(40%)、適切な質問をし(39%)、購買プロセスに合わせたコンテンツを提供してほしい(53%)

このデータが訴えていることを平たく言うと、「私にとって適切な情報を、適切なタイミングで提供してほしい」、そしてそのために「私が何に困っているのかを正しく理解してほしい」ということ。特に新鮮な主張ではなく当たり前の話なのですが、無関係な情報を大量に送り付けられている購買担当者にとっての心からの叫び声のように思われます。

コンテンツマーケティング成功のための指針

そしてレポートの最後には、「最重要のヒント」と称してこの購買担当者からの切なる要望に応えるための指針が3つ示されています。レポートを作成した2社のPR色が強い箇所ですので、概要だけ簡単に紹介します。

1.インテント・データを活用する
「インテント・データ」とは購買の意図・関心に関連するデータのことで、それを基に購買プロセスなどを特定しようというのがこの指針で言わんとしていることです。このレポートの中では、Googleなどの検索エンジンでの検索キーワードや、LinkedInなどのSNSで閲覧していたページやクチコミ情報などの利用を推奨しています。

2.個別にカスタマイズされたダイレクトメールを導入する
このダイレクトメールはダイレクトEメールではありません。経済活動が急速に正常化している欧州では、ロックダウン中に大幅に減少したダイレクトメールを今活用することで購買担当者の目に留まりやすくなる、というのがこの指針の背景になっているようです。

3.マルチチャネルでリターゲティング広告を実施する
「リターゲティング広告」とは、自社のWebサイトを閲覧したり、検索エンジンで特定のキーワードを入力した相手に対して、追跡型の広告を表示するというもの。Webでのクッキー利用の規制によってリターゲティング広告のあり方に大きな見直しがかかろうとしていますが、インテント・データを活用してカスタマイズされた広告を表示するという基本的な考え方は今後も変わらないでしょう。

なぜMAツールが普及している今でも「無関係な情報が大量に送られてしまう」のか?

今回ご紹介したレポートで見えてきたのは、コロナ禍によって多くの企業がコンテンツマーケティングをより一層活用するようになったことで、かねてから言われていた「無関係な情報が大量に送り付けられてくる」という弊害が見過ごせないほどに大きなものになっている、という実態です。それに購買担当者からの「適切な情報を適切なタイミングで送ってもらえるように、自分のことを理解してほしい」という痛切な声でした。

ただ、この購買担当者からの声に応えることはそこまで難しいことではありません。自社のWebサイトに訪れた際の検索キーワードや見ていたページから顧客の関心を類推して、関連するコンテンツが送られるように設定しておくとか、以前にやり取りをしたことのある見込客や既存客と、新規の見込客とでメールのリード文を変えるなどは、MAツールの基本機能の中で十分にカバーできる内容です。

それなのに、なぜ「無関係な情報が大量に送り付けられる」ということが多発してしまっているのでしょうか。そこには顧客を分類して考えることが上手くできていない実態があるように思います。

顧客にとっての「分かってないなあ」を減らすことから始めよう

営業担当者によるきめ細やかで痒い所に手が届く個別対応と比べると、MAツールによるカスタマイズにはある程度の割り切りが必要です。顧客を分類わけし、ある程度フィットしそうな情報を送って、その反応を見ながら精度を挙げていかねばなりません。

ただ、そこでやりがちなのは「より良い反応」探しばかりに注力し、それ以外はただ送り続けるということになってしまうことです。反応のある顧客に「分かってるなあ」と言われることにこだわって、反応のない「分かってないなあ」と思っている顧客にフィットしない情報を送り続けてしまい、これが多くの顧客の不満につながっています。

ここで大切なのは、この「分かってないなあ」を減らすことを目的に顧客の分類を考えるということです。MAツールは人間が個別に行うのとはケタ違いに効率的に顧客とのコミュニケーションができるものですが、決して「痒い所に手が届く」というレベルでフィットさせられるものではありません。

その特性をわかった上で、ざっくりと分類した顧客に対し、それぞれに合わせた情報発信を行う。そしてその反応を見ながら「分かってないなあ」を減らしていきます。それによって、顧客にとってストレスのないコミュニケーションが可能になると思うのです。

各企業がマーケティング用のコンテンツを整備するようになり、コンテンツを使ったWebマーケティングは当たり前のものになっていますが、それは周りの競合企業にとっても同じことです。他の企業と一緒になって、顧客に大量の無関係なコンテンツを送り続けるのではなく、顧客にとってストレスのない/少ない情報源だと認めてもらう。そのヒントとして、今回ご紹介したレポート「B2B Buyers Insights Report 2021」はとても示唆に富んでいるものだと言えるでしょう。

参考:
B2B Buyers Insights Report 2021」(durhamlane & Cyance, 2021)
Study shows B2B Buyers Overwhelmed with More Sales & Marketing Material than Prior to Pandemic」(MarTech Series, September 28, 2021)

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