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B2Bオンラインイベント2つの変化/2021年のおすすめイベント

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2021年がいよいよスタートしましたが、1月8日から首都圏を中心に緊急事態宣言が発令されています。リモートワークのさらなる推進やイベント開催における人数制限などが要請されており、リアルでの活動がまたしばらく制限されることになりそうです。

そんな中、気になるのは展示会やセミナーなどの大規模イベントです。昨年の3月以降、これらのイベントのオンライン化が一気に進み、世界最大の技術見本市「CES」も今年はオンラインのみでの開催となるなど、この傾向は世界全体でしばらく続くものと思われます。

今回のトライツブログでは、海外のB2B営業/マーケティング関連のイベント情報をもとに、これらのイベントがどのように変化しつつあるのかを確認していきたいと思います。展示会などのイベントに現在起きている変化は、単なるオンライン化だけではありません。いったい何が起こっているのか、一緒に見ていきましょう。

B2Bイベントに起きた変化①視聴がライブからオンデマンドに

今回ご紹介するのは、米国のB2Bマーケティングコンサルタントのパム・ディドナー氏のブログ「Best B2B Marketing Conferences 2021」。ディドナー氏には「Global Contents Marketing」や「Effective Sales Management」などの著書があり、数多くのイベントでスピーカーとして講演してきた経歴の持ち主です。その知見を活かして、2021年の今注目のイベントを30件紹介しています。

それぞれのイベント紹介も役に立つのですが、私が面白いと思ったのはブログの冒頭にある「2020年の振り返りと今後の展望」です。そこでは、B2B営業/マーケティングのイベントにおいて起こった変化がうまく表現されています。

これまで対面で数日間開催されていたイベントの多くは、オンラインで1日だけのイベントへと変化しました。そして少数のイベントでは、Zoom疲れを防ぐために1日に1セッションのスケジュールで3週間開催する、というものもありました。
これらのオンラインイベントにおける2020年の全体的な傾向として、リアルタイムでのライブ視聴が少なかった、というものがあります。参加者はNetflixのように見たいセッションをオンデマンドで視聴していたのです。参加者は前年まで感じられていた連帯感などをイベントに求めていたのですが、リモートワークに家庭生活にオンラインイベントの視聴といったタスクをこなすのに疲労困憊してしまっていたのです。

この「オンラインイベントの視聴のオンデマンド化」というトレンドは、オンラインのイベントを色々と視聴してこられた方には共感いただけるのではないかと思っています。私も昨年の緊急事態宣言中は、国内/海外のカンファレンスやセミナーをいくつか見ていましたが、どうしても一日とか午後半日という時間を集中してイベントに向けるということができませんでした。注文していた宅配便は届きますし、子供やペットは悪気はまったくないままにトイレやいたずらなどの至急のタスクを発生させます。また、物理的に社外に出ているわけではないので、急ぎの連絡が社内外からどんどん届きますし、ライブ配信限定は消化不良になることが多かったように感じます。

B2Bイベントに起きた変化②マーケティング戦略から最適なチャネルを選ぶ

そして、ディドナー氏のブログのもう1つの興味深い点が、2021年の各社/各団体のイベントの開催予定にあります。30のイベントのうち1月12日時点では、リアルでの開催を予定しているのが10件、オンライン開催が11件、未定が9件とほぼ三等分されている状態です。この中で、コロナ禍に合わせてオンラインで開催するのか、あえてリアルでの開催にこだわるのかというところに各社/各団体の思惑が透けて見えてきます。

オンラインで開催する11イベントのうち、メディア系やイベント運営系以外の企業が主催するものは6つありますので、イベント名と企業名をセットで見ていきましょう。

そして、リアルで開催する10イベントのうち、先ほどと同様にメディア系やイベント運営系以外の企業が主催するのが以下の5つです。

11のリストの中で、皆さんがご存知の企業として「Adobe」「HubSpot」「Salesforce」の3つが目に留まったのではないでしょうか。このうち、AdobeとHubSpotのイベントはオンラインで、Salesforceのイベントはリアルでの開催を予定しており、そこに各社のイベントに懸ける狙いがあるように思います。

AdobeやHubSpotなどの企業は、確実にイベントを開催できるようにしよう、そしてその中で自社ソリューションの機能や価値を分かりやすく伝えることでビジネスチャンスを獲得しよう、という狙いでオンラインでの開催を選択しているのでしょう。

その一方で、SalesforceのイベントDreamforceは有名アーティストの生演奏から始めるなど、非常にエンターテインメント性が高く、参加者に没入感・高揚感を与えてファンにすることを狙っています。そのために、開催できない可能性があるとしてもリアルでの開催を選択しているように思えます。2020年のDreamforceのいくつかのセッションをオンラインで視聴したのですが、やはり実際にリアルの会場で感じられた雰囲気は再現できていなかったように感じました。

このように捉えると、確実に情報を届けることを優先している調査・コンサル系の企業がオンライン開催のグループに多く、ユーザー企業とのつながりや意欲喚起を狙いたいシステム系の企業がリアルでの開催にこだわっているということが言えるのではないでしょうか。

コロナ禍におけるB2Bのイベントだから必ずオンライン開催を最優先しなければならないと判断しているのではなく、自分たちのマーケティング戦略からイベントの提供チャネルを戦略的に考えられているという印象を受けました。

B2Bオンラインイベントの2つの傾向

ここまで、パム・ディドナー氏のブログ「Best B2B Marketing Conferences 2021」を基に、コロナ禍におけるB2Bイベントの変化の傾向として、
1.視聴のオンデマンド化
2.単なるオンライン化ではなく、自社のマーケティング戦略に基づくチャネル選択
という2つの傾向を見てきました。

この2つの傾向は、私たちが日本でB2Bイベントのあり方を考える上でも役に立つ内容だと思います。今後のマーケティング計画などを立案・修正する際に、ぜひ参考にしてみてください。

無料&手軽に視聴できるおススメB2Bイベントコンテンツ

最後に、ディドナー氏のブログでおススメのB2Bイベントが紹介されている中から、2021年1月12日時点で視聴可能なコンテンツを抜粋して以下にご紹介します。緊急事態宣言などによって、なかなかリアルのイベントに行けない日々が続きますが、B2B営業/マーケティングのトレンドを確認し、知識をアップデートするのにご活用ください。

TOPO
Gartner社主催のオンラインカンファレンスです。Eメールを登録することでこれまでのセミナーのコンテンツ(PDF、動画)を視聴することができます。また、1月19日から開始する今年のイベントも無料で視聴可能です。
過去のコンテンツの視聴はこちら)(今年のイベント登録はこちら)

Sales 3.0
セールスイネーブルメントなどの最新トピックから担当者のモチベーション向上や営業マニュアルなどの定番まで、営業の各種トピックをカバーしているイベントです。Webページでは登録なしで2020年のセッションを、YouTubeの公式チャンネルでは過去数年分のセッションを視聴可能です。
Webページでのコンテンツの視聴はこちら)(YouTubeでのコンテンツの視聴はこちら

MAICON
Marketing AI社のデジタルマーケティング、その中でも特に技術的なトピックが充実しているイベントです。YouTubeの公式チャネルに過去のキーノートセッションがいくつかアップロードされています。
YouTubeでのコンテンツの視聴はこちら

Dreamforce
ご存知Salesforce社の一大イベントです。WebページとYouTubeの両方で過去のコンテンツを視聴することができます。また、同社のユーザー会員(トレイルブレイザー)専用のコンテンツも充実しています。
Webページでのコンテンツの視聴はこちら)(YouTubeでのコンテンツの視聴はこちら

Inbound
MAツールのHubSpot社が主催するイベントです。YouTubeの公式チャネルに過去のセッション動画だけでなく、営業やマーケティングのTips情報など様々な情報がアップロードされています。
YouTubeでのコンテンツの視聴はこちら

参考:「Best B2B Marketing Conferences 2021」(Pam Didner, Relentless Pursuit LLC, January 1, 2020)

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