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危機を機会に!米国で活性化しているB2B企業の新商品・サービス開発

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「危機を機会に変える」「ピンチはチャンス」などという言葉があります。危機的状況をバネにして新しいビジネスやイノベーションを生み出そう、という話は新型コロナウイルスの感染拡大以降、よく雑誌やビジネスブログで出てきます。

では実際に危機は機会に変えられるものなのでしょうか。2008~2009年のリーマンショックが企業の研究開発(R&D)活動に与えた影響について、経済協力開発機構(OECD)が作成したレポート(「Science, Technology and Industry Outloook 2012」)によると、OECD加盟国全体で企業のR&D投資は4.5%減という記録的な落ち込みになっていました。ただ、そのような中でもソフトウェアや医療関連の企業ではR&D投資が増え続けていたそうです。

また、Harvard Business Reviewの記事(「コロナ危機を成長の機会へ、レジリエント企業になる5つの条件」)によると、リーマンショック以降の回復・成長が特に優れている企業の特徴の1つに、「危機下においても新規事業や新技術への成長投資を加速していた」とのこと。過去のデータを見ると、危機的状況でも将来を見据えた一手を打つことが重要だというのは、どうやら本当のようです。

では、時間を現在に戻して、新型コロナウイルスの感染拡大以降に新しいビジネスやイノベーションは増えているのでしょうか。今回のトライツブログでは、2020年の新商品・サービス開発に関する米国の最新の調査データと、そこから見えてくる大事なポイントについてご紹介します。

2020年の寵児、投資家内で話題のZoomInfo

少しだけ話が脇道に逸れますが、2020年のB2B営業・マーケティングの隠れた大ニュースとして、ZoomInfo Tecnologies Inc.(以下、ズームインフォ)のNASDAQ上場があります。

ズームインフォとは、WebページやSNSサイトを自動で巡回しては企業の情報を収集して自社のCRM/MAデータを更新し、自社にとって可能性の高い見込客リストの自動生成までしてくれる、というサービスを提供している企業。このズームインフォが新型コロナの影響で急落した株価が回復途上の6月上旬に上場し、初日に62%高を記録。ブルームバーグによるとここ10年で同規模の企業の中では最大の上昇率を示したということで、投資家の中で話題にもなりました。

2020年の寵児ともいえる要注目のズームインフォが最近発表した調査レポート(「Crisis Drives Innovation: Businesses Release More Products than Last Year」)では、彼らが得意とする企業情報の自動収集技術を用いた面白いデータを発表しています。早速見ていきましょう。

調査レポート①新製品・サービスのリリース数がここ数年で最多の2020年

米国では2020年の9月までに、2019年や2018年よりも多くの新製品・サービスがリリースされています。中小企業も大企業の多くが新製品・サービスの上市に成功しています。(中略)
中小企業は何とか景気低迷を乗り越えようとイノベーションに取り組んでおり、その一方で大企業は潤沢な資金を使って新製品の販売や、新事業へのチャレンジを試してみる絶好の機会だと見ています。

驚くことに、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2020年は、米中の貿易摩擦などがありつつも好況が続いていた2019年や2018年よりも、新製品・サービスのリリースが多いというのです。それでは一体どのような新製品・サービスが開発されているのか、もう少し詳しく見てみましょう。

調査レポート②増加している既存顧客へのアフターサービス

これらのリリースに関連し、企業が既存顧客へのクロスセルに何よりも関心を抱いているというデータがあります。(中略)
例えば、製造業は既存顧客へのアップセルとクロスセルに注力しています。各企業はこれまで以上に多くのアフターサービス、販売した機器のメンテナンスやスペアパーツ、その他の付加価値サービスを提供しています。

ズームインフォのデータによると、新製品・サービスのリリースが多い業界トップ5は「製造業」「ソフトウェア業」「専門サービス業」「小売業」「金融業」とのこと。その中でもトップの製造業を中心に、アフターサービスのリリースが大きく増えているというのです。このデータを読むまで私は、「外出自粛とかリモートワーク化とかの影響で、既存の対面サービスがWebに置き換わったんだろう」と思っていたのですが、それだけではなくこの例のようなアフターサービスの充実という要因が最も大きいようです。

ここから先は推測になるのですが、おそらくアフターサービスを拡充した製造業は、コロナの影響で企業の新規の設備投資が難しくなると見越して、自社の商品・サービスを現在購入してくれている既存顧客の要望に応える、という方向に大きく舵を切ったのでしょう。

これらのデータを見ていると、100年に一度と言われている新型コロナウイルスという危機を、アフターサービスの充実という方向性から商品・サービスの開発・販売という機会に変えられている逞しい企業が多くある、ということが分かってきます。

危機を機会に変えるために不可欠な「顧客情報の収集・一元管理」

このような既存顧客向けのアフターサービスを、米国での新型コロナウイルスの拡大から半年以内というスピードで商品化できている理由は何なのでしょうか。調査レポートの最後は、顧客情報の収集・管理・活用を主な事業としているズームインフォらしく、ビジネスの拡大における顧客情報の重要性に触れた上で、締めくくられています。

現在の環境においては、顧客が自社製品・サービスを利用し始めたことを認識して、迅速にアフターサービスを提供することができれば、取引の拡大に最も成功しやすくなります。企業は顧客企業のニーズにスピーディに対応することで、顧客のロイヤルティを急上昇させることができるのです。

顧客情報を収集する手段としてズームインフォを使うかどうかはともかく、自社の製品・サービスを利用している顧客企業が何に困っていてどのようなサービスを欲しているのか、それらの最新情報を営業部門やサービス部門が常に集めておき、すぐに使えるように一元管理している。このようなことができていないと、スピーディに新しいアフターサービスを開発したり、販売先の顧客を選定するのは困難です。部門長や企画部門がExcelのファイルを配るなどして現場から逐一情報を吸い上げては、部門長会議で時間をかけて案を練るというようなことをやっていると、迅速に情報収集・意思決定する他の企業に出し抜かれてしまうことでしょう。

常日頃から様々な場面・媒体で、顧客情報を収集・蓄積することの重要性が言われています。今年のような危機的な状況において、迅速に意思決定して販売を開始して実績にまでつなげるために、顧客のニーズ情報を営業や関連部門が収集してすぐに使えるように一元管理されてる状態を維持する、ということがいかに重要であるかを改めて明らかにしているデータだと言えるのではないでしょうか。

これからもコロナ禍を乗り越えているB2B企業とそのポイントご紹介します

新聞やTVでは、GoogleやAmazon、NetflixなどのIT大手企業をはじめとして、この新型コロナウイルスの影響下でも過去最高益を上げている企業をしばしば取り上げています。日本企業でも任天堂やライフ、ニトリ、日清食品など巣ごもり需要に対応できた企業が、過去最高益を叩き出しています。

今回ご紹介したレポートは、新型コロナウイルスという危機的な状況であっても、新しい商品・サービスの開発などのイノベーションに取り組むことが可能であることを示している、前向きで明るいニュースです。またその一方で、それを実現するための条件の1つとして、顧客情報を効率的に収集し一元管理することの重要さを改めて指摘している、厳しい警告でもあると私は感じました。

欧州や米国を中心に感染が再拡大するなど先が見えない状況がまだ続いています。そのような危機的状況を乗り越える意思決定を迅速に行うのに必要な既存顧客の最新のニーズ情報が社内にあるか、すぐに使える状態になっているかをチェックするきっかけとして今回のブログを活用してください。

トライツブログではこれからも、コロナ禍を乗り越えているB2B営業・マーケティングの企業や取組について、引き続き調査してそのポイントをご紹介しますので、楽しみにしていただければと思います。

参考:「Crisis Drives Innovation: Businesses Release More Products than Last Year」(ZoomInfo Technologies LLC, October 28, 2020)

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