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ウィズコロナの今こそ求められる「バイヤーイネーブルメント」とは

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各企業が2020年4~6月期の四半期決算を発表し、コロナの影響が数字として見えてきました。小売や外食など厳しい業界が多い中、アマゾンやマイクロソフトなどのクラウド系IT企業や、任天堂やソニーなどのゲーム関連企業、半導体製造装置メーカーなどでは大幅に増収増益になるなど、一部では業績を伸ばしている企業もあるようです。

このような数字としてのコロナの影響は、B2B営業の分野でも見えてきています。そこで今回は、コロナの影響でB2B購買担当者の購買活動がどのように変わっているのか、そしてそれに対応するためになにが必要なのかについて、海外の調査レポートを使って考えてみたいと思います。

海外調査レポート:コロナの影響でB2Bの購買活動はどのように変化したか

世界第一位の広告代理店グループであるWPPの中核子会社のWunderman Thompson社が最近発表した「B2B Future Shopper Report 2020」が話題になっています。このレポートは米国のB2B購買担当者を対象に、ロックダウンさなかの4月に実施したもの。パンデミックの結果、B2Bの購買活動がどのように変化したのかについて様々な観点から調べています。大変面白いレポートではあるのですが、30ページ近くありますのでここでは一部のみを抜粋してご紹介します。

コロナ以前(昨年)と比べて、B2Bのオンライン購買の総額は22%増えている

コロナ以降、B2B購買の48%がオンラインで行われている

コロナ以前は56%あった営業担当者からの直接購買は、20%にまで減少している

調査では、まずB2B購買のオンライン化が一気に進んだことを表しています。この傾向は企業規模に関係なく、大企業や中小企業でもほぼ同じだということです。

では、B2B購買担当者はどのようにオンライン購買をしているのでしょうか。それについても調査データがあります。

オンライン購買では、B2B購買担当者は商品サービスについての「学習」に平均1.7時間、サービス内容や価格などの「分析」に平均1.7時間、「意思決定・承認」に平均1.4時間を費やしている

オンライン購買を開始する場所として、一番割合が多いのはベンダー/サプライヤーのWebページ/オンラインカタログ(34%)であり、その次はアマゾンのB2Cマーケットプレイス(21%)、さらにその次はアマゾンビジネス(20%)である

オンライン購買の67%はベンダー/サプライヤーのWebページで完了しており、これはコロナ以前の58%から上昇傾向にある

オンライン購買が始まり、完結する場所としての企業のWebページの重要性が際立っています。特に米国ではオンラインマーケットプレイスのB2B利用が増えている傾向がありましたが、コロナ以降では納期などの情報をより確実に得られる場所として、企業のWebページに回帰しているように見えます。

しかし、B2B購買担当者にとって、オンライン購買は決して便利なだけではないようです。

B2B購買担当者の45%は、オンライン購買の方がオフラインよりも複雑だと感じている

B2B購買担当者の68%は、B2Bサプライヤーはユーザーエクスペリエンスの改善のためにもっとモバイルの技術を活用すべきだと考えている

B2B購買担当者の72%は、B2Bのオンライン購買でもB2Cと同様のユーザーエクスペリエンスを期待している

各企業のWebページを使ってのオンライン購買が増えているものの、B2B購買担当者の決して少なくない層が不満を感じています。調査ではB2B購買担当者が感じる不満(複数回答)を上位から順に、在庫情報が分からない(36%)、配送情報が分からない(35%)、欲しいものが見つからない(33%)、カスタマイズできない(27%)、製品を比較できない(24%)と列挙しています。オンラインで時間をかけて「学習」「分析」しているときに、これらの不満を感じているというのです。

このような、「B2B購買活動のオンライン化」「企業のWebページへのアクセス増」「オンライン購買に対する不満」という傾向は米国だけのものではなく、日本でも共通すると私は考えます。日本でも小売や外食などのリアルでの消費が減り、ゲームや動画配信などのオンラインのコンテンツが急伸しています。そのようなB2Cでのオンライン購買に慣れた人たちが、購買担当者としてB2Bのオンライン購買を進めようとすると、使い勝手が悪かったり欲しい情報が手に入らなかったりする、というのは容易に想像がつくのではないでしょうか。

B2Bのオンライン購買を支援する「バイヤーイネーブルメント」が再注目

では、そのようにオンラインで購買を進めようとする購買担当者に不満を感じずに、購買プロセスを進めてもらうためにどうしたら良いのか。どうやら、世界中でいろんな人がこのことについて考えているようで、最近B2B営業/マーケティングに関するWebサイトで徐々に注目されつつあるキーワードがあります。それが「バイヤーイネーブルメント」です。

バイヤーイネーブルメントとは、特にオンラインでの顧客の購買活動を支援する、購買担当者がプレッシャーやストレスを感じることなく良い意思決定をできるようにする、というものです。2018年にGartner社が主張し始めたコンセプトで、このトライツブログでも2019年の春と秋に2回ずつ紹介しました。当時、注目はされていたものの中々一般に浸透しあぐねていたのですが、コロナの影響が出始めてからしばらく経ち、改めてこのバイヤーイネーブルメントに関する記事が今増えてきているように感じます。

これだけで分かる!バイヤーイネーブルメント実施のための4か条

その中でもやるべきことを端的に分かりやすくまとめているのが、Precision Marketing Group社がBoston Business Journalに寄稿した記事「Why Buyer Enablement Should Be Top of Mind in Your B2B Sales Process」です。ここでは、この記事の中からバイヤーイネーブルメントを実施する4つの方法を手短にご紹介します。

1. あなたの顧客の購買プロセスを文書化し評価する

2. 顧客が不満を感じる箇所を特定して解消する

3. あなたの言葉でなく顧客の言葉を使ってコミュニケーションをとる

4. 顧客が自身の問題を理解できるように教育的なコンテンツで支援する

バイヤーイネーブルメントの要素がコンパクトにまとまっているので、細かい説明は不要でしょう。この4か条と先ほどの「B2B Future Shopper Report 2020」の内容を組み合わせると、顧客の立場で購買活動の流れを見直し、製品の比較・カスタマイズなどの顧客が困るであろう箇所を見つけ、顧客が自分で容易に「学習」「分析」できるような教育的コンテンツを顧客の言葉を使って提供することで、顧客のオンライン購買の満足度を高められる、ということが見えてきます。

長期化するウィズコロナの時代だからこそバイヤーイネーブルメントに取り組もう

コロナの影響は当初多くの人が想定していたよりも長期化しつつあるようです。感染初期にマッキンゼー社が発表したレポートでは、新型コロナウィルスが世界経済に与える影響として以下の3つのシナリオを想定していました。
シナリオ1:2020年1~3月に危機を脱却して7~9月には需要が回復する
シナリオ2:2020年4~6月にウイルスの増殖が停止して10~12月には正常化する
シナリオ3:ウイルスが多くの国々に広がり、景気後退と消費マインドの低下により経済は年内中大きな被害を受ける
どうやら現在の状況を見るとシナリオ3を進んでいるようで、ウィズコロナの期間はまだまだ続きそうです。

そのように考えると、今回ご紹介したB2B購買のオンライン化という傾向は今後も続くでしょうし、B2Cで快適な購買体験を味わっている購買担当者が企業のWebページに対して不満を感じ、より快適な購買体験をできる企業のもとへと旅立ってしまうということも継続して起こることでしょう。私たちのWebページが将来の顧客に愛想を尽かされてしまわないようにするために、今回改めてご紹介したバイヤーイネーブルメントの4か条で自社のWebコンテンツを見直し、改善することが、ウィズコロナの状況下でも業績を維持し伸ばすために必要不可欠なのだと私は考えます。

トライツコンサルティングは、Webページの全体構成の見直しや、教育的コンテンツ作りなどの観点でバイヤーイネーブルメントの実現を支援しています。「顧客にとってストレスなく購買体験ができるWebページに変えたい」「Webからの売上を伸ばしたい」という方はぜひご相談ください。

「バイヤーイネーブルメント」関連の記事はこちら
・ 2019年B2B営業の新トレンド『バイヤーイネーブルメント』とは
・ 『バイヤーイネーブルメント』が示す営業/購買トレンドの大変化
・ アフターコロナのニューノーマルと必要となる『B2B営業・三種の神器』

参考
B2B Future Shopper Report 2020」(Wunderman Thompson Commerce, 2020)
Why Buyer Enablement Should Be Top of Mind in Your B2B Sales Process」(Precision Marketing Group, July 30, 2020)

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