トライツコンサルティング株式会社

環境激変の今こそ!「営業育成ロードマップ」で目指す姿を描き人材を育てる

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先日、2020年7月30日に日経MJフォーラム「テレワーク時代の営業改革」がWebセミナー形式で開催され、弊社の角川が基調講演ならびにパネルディスカッションのモデレーターとして登壇いたしました。幸いにも、当日は1,000人を超える方々に視聴していただくことができました。

その基調講演の中で、営業生産性を向上させるためには、単純に「テレワークになったからWeb会議システムなどのデジタルツールを入れる」だけでなく、今後自社として実現したい営業の姿を明確に描き、それに適する人材育成に取り組むことが重要だというお話をいたしました。

それでは、実現したい営業の姿をどのように具体化し、どうやって人材育成を進めたらよいのでしょうか。そこで、今回はその解決策の1つとして、トライツが実際に取り組んでいる「営業育成ロードマップづくりとそれを活用した人材育成の進め方」について、事例を交えてご紹介したいと思います。大きな環境の変化が適応するべく、あるべき営業の姿や人材育成についてお考えの方は、ぜひお読みください。

人事評価には使わない「営業育成ロードマップ」とは

トライツが作成・提供している「営業育成ロードマップ」とは、これからの営業担当者に必要なスキルを定義した表です。この表によって、営業担当者はどのようなスキルをどのレベルまで身に付ければ良いかを知ることができますし、それぞれの営業担当者のスキル習得状況を見える化することができる、というものです。文章で説明しても分かりにくいと思いますので、下のイメージ例をご覧ください。

構造はいたってシンプルで、縦軸(行)に①から始まるスキル項目が並び、横軸(列)がA~Eでレベル分けされています。そして、この構造に従って、スキル項目ごとにスキルレベルを定義していきます。上の表には例として、顧客の購買プロセスを理解してその後押しをする「顧客の購買支援力」というスキル項目のレベルをA~Dに定義しています。

ここまでご紹介すると、多くの方が「自社にも人事評価用で同じようなものがある」と思われるのではないでしょうか。実はそこに大きなポイントがあります。それは「これはあくまでも営業育成を目的としたもので、人事評価には使わない」ということです。

人事部門が作成している全社的なしくみとは異なり、営業部門のみで導入・展開されるので、営業という仕事に特化し、営業形態の違いで細かくチューニングしたり、全社戦略で項目のウエイトを変えたりもしやすく、現場の仕事と近いので、これを使った育成面接も形骸化しにくいというメリットもあります。

「営業育成ロードマップ」作成のための2つのポイント

この営業育成ロードマップを作る上でのポイントは2つあります。

1つめのポイントは、縦軸(行)のスキル項目の抽出です。これから目指す営業に何が必要なのかを考え、スキル項目として言語化しなくてはなりません。専門家として最適なソリューションを企画提案できる営業を目指すのであれば、専門知識力やソリューション企画力、資料作成力といったスキルが必要になるでしょうし、もっとデジタルツールを使った営業活動をさせたいのであれば、IT・システム活用力やデータ分析力のようなスキルが必要になるはずです。このように、これから目指す営業の姿を思い描き、それに必要なスキルを明確にすることが欠かせません。

2つ目のポイントは、横軸(列)のスキルレベルの設定です。上の表ではA:エキスパート、B:プロのようになっていますが、実際は各レベルについてもう少し細かく定義をしています。例えば、A:エキスパートは「社外でも専門家として認められる」、B:プロは「自分の業務を自律的に進められて、周囲のサポートもできる」といったものです。このようにスキルレベルを定義することで、各スキルのレベルが揃って一貫性・納得性のあるロードマップになります。

それでは、この営業育成ロードマップが具体的にどのような目的で使われていて、どのように人材育成をサポートしているのか、事例を見ていくことにしましょう。

事例A:新しく取り組むソリューション型営業に合わせた育成施策づくり

A社は、従来とは営業スタイルが大きく異なる新規事業で体系的に営業人材を育成するために、営業育成ロードマップを活用しています。従来のA社は素材を代理店向けに卸す営業スタイルでした。しかし、新規事業は直接ユーザーにソリューションを提供するものなので、必要なスキルが大きく異なります。そこで、必要なスキルを明確化し、それに合わせた育成施策を開発するためにロードマップを作成しました。

現在では、年1回定期的に営業担当者が自己のスキルを評価し、来年までの目標を設定しています。マネージャーはその結果を見ながら最終評価を付けて、メンバーとスキル開発のための面談を実施しています。また、マネージャーとトライツは、全メンバーの評価結果を見ながら、組織として強化すべきスキルが何かを議論し、「提案書作成力養成講座」「ソリューション企画力養成講座」「プロジェクト運営力養成講座」などの教育プログラムを設計・開発・提供しています。

このようにA社では、ソリューション型営業という新しい営業スタイルを組織として確立するために、営業育成ロードマップを軸としてスキル評価~スキル開発のサイクルを定量的に目に見えるカタチで回しています。

事例B:デジタル時代の新しい営業モデルづくりと育成施策の再構成

B社の属する業界では、数年前から営業活動のデジタル化の波が押し寄せてきており、各社が既存の営業人員を縮小しながらデジタルツールを使った効率的な営業スタイルへと舵を切りはじめました。そのような中、B社はこの状況を「新しい営業モデルへの変革」と捉え、デジタル時代の新しい営業モデルに必要なスキルを具体化する目的で、営業育成ロードマップを作成しました。

そして、現在はそのロードマップに基づいた研修コンテンツの整理に取り掛かっています。これまで実施してきた様々な研修や営業ツールを新しい営業モデルを軸として再構成し、体系的にテキストや動画教材にまとめているのです。新型コロナウイルスの影響で営業活動のデジタル化の流れはさらに加速していますが、デジタル時代の営業の指針となるロードマップはすでにできており、それを軸として人材育成ができる環境が整いつつあります。

事例C:既存カリキュラムの最適化と育成プログラムの効果検証

A社やB社のように、新しい営業の姿を実現するために営業育成ロードマップを作ることが多いのですが、C社はちょっと毛色が異なります。

C社は、以前から教育研修には時間と金を使っており、客観的に見ても非常に充実した、ちょっと多すぎるのではないかと思えるほどの育成プログラムが揃っていました。しかし、それだけ育成施策が充実しているのに、各担当者の営業スキル、特に各施策の育成効果が見える化できていないことが課題となっていました。

そこで、営業育成ロードマップを使って年次ごとの標準的なスキルレベルを設定し、担当者のスキルレベルを評価・見える化するとともに、年次ごとに必要十分な研修カリキュラムを再設計することにしました。その結果、特に新人研修や二年目研修の中にもっと先の年次で教えれば十分なものがいくつも見つかり、研修カリキュラムの効率化・最適化ができました。

そして今後は、それぞれの育成プログラムを期待する成果が上げられているかという観点で検証し、プログラムの中身を改善しようとしています。これは、このトライツブログでもご紹介してきた、営業活動を機能単位で分解して研修や営業ツールといった施策の有効性を評価・検証する「セールスイネーブルメント」そのものだと言えるでしょう。このようにC社では、既存の研修カリキュラムの効率化や最適化、育成プログラムの効果検証をするための軸として営業育成ロードマップが使われています。

営業育成ロードマップを「本当に使えるもの」にするために不可欠な運用の工夫2つ

ちなみにこの営業育成ロードマップを現場で本当に使えるものにするためには、上でお見せした表を作るだけでなく運用部分の工夫が欠かせません。

工夫の1つが、入力フォーマットです。Excelで作った表を営業担当者に見せてそこに自分の評価を書かせるようなやり方では、営業担当者が評価の記入方法を間違えてしまうのを防げませんし、担当者の数が多い場合に集計するのが大変になってしまいます。そこで、トライツでは担当者とマネージャーが簡単かつ間違いなく評価を入力できるようにMicrosoft PowerAppsやGoogleフォームを用いて入力フォーマットを準備し、それを使ってもらっています。

工夫の2つめは、現場への周知用のコンテンツです。いくら良かれと思ってこのようなロードマップを作っても、現場の担当者やマネージャーがその意図を理解しなければ、現場にとってはただの面倒ごとでしかありません。そのため、なぜこのようなロードマップが必要なのか、どのように活用してメンバーのスキルを伸ばしていくのかを解説したテキストや動画資料といったコンテンツもトライツが作成しています。

環境が激変する今こそ営業育成ロードマップの見える化を!

Web化による顧客の購買活動の変化に、リモートでの営業活動の増加など、現在のB2B営業は大きな変化の中にあります。そして、そのように環境が激変しているときにこそ、対症療法的にデジタル化を進めるだけのでなく、今後目指すべき営業の姿を思い描き、それを実現するための営業人材育成のロードマップを組み立て、見える化する必要があります。

その手段の1つとして、今回ご紹介した営業育成ロードマップは有効です。将来目指すべき営業の姿を具体的に示すことができ、その観点から現在の営業担当者のスキルレベルを分かりやすく診断することができ、現在の育成プログラムの過不足を客観的に見極めて、必要な施策を考えることができます。大きく変わる現在の環境に合わせて営業を改革しようという方や、営業人材育成の見直しをお考えの方にとって、きっと役に立つツールになるはずです。

トライツコンサルティングは、営業育成ロードマップを使った人材育成を支援しています。「デジタル化に合わせて目指す営業の姿を具体化したい」「これからの営業に必要な人材育成施策を考えたい」という方はぜひご相談ください。

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