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事例の概要

サービス業のG社は、小売・製造などの大手企業から物流に関する業務を受託運営しています。これまでは過去の実績と社長の営業力で業務拡大してきたのですが、大手既存顧客X社から既存受託業務の見直しを目的とした提案依頼書(RFP)を受け取り、G社として初の正式な提案書作成&プレゼンテーションを行わねばならなくなりました。

トライツはG社のこれまでの取組状況を調査・整理し、1か月で30ページ超の正式な提案書を作成するとともに、G社トップ向けにプレゼンテーションの指導を実施。

その結果、従来受託していた業務を引き続き確保できただけでなく、同一拠点内の他社が受託していた業務も新たに請け負うことになり、G社として20%の事業拡大に成功したのです。

突然の提案依頼!自分達だけではできない!

G社が創業以来ずっと仕事を請け負ってきた大手小売X社の某拠点は、1拠点でG社の年間売上の1割を稼ぐことができる、G社にとって柱となる顧客でした。そこが近年の小売業界の大再編により他の小売企業を合併し、G社が長年受託運営してきた拠点の委託先を再選定することとなりました。

そこでこれまでになかった 提案依頼書(RFP) が登場したのです。G社にしてみればビジネスの大きなルール変更で、これにG社のトップは頭を抱えることに。

というのも、これまでG社は真面目な仕事ぶりを評価され、特命受注を重ねてきたため、正式な提案書を作成したことがありませんでした。しかも競合2社はコンペ慣れしている大手企業なのです。

RFPに書かれている提案書提出期限は1か月後。さらにその1週間後にX社幹部向けにプレゼンテーションを行って今の売上を確保するためには、外部の力を借りてでも何とかしなければ!というのが社長の考えでした。

この案件の責任者に任命されたG社社長室長は、提案書作成とプレゼンテーション指導で協力してくれる会社を探すために、所属していた経済団体の担当者に相談しました。そこで、「B2B営業に関係するなら他社にでは対応してくれないような相談にも乗っている」と、トライツコンサルティングを紹介されたのです。

寺島

正直なところ、タイトなスケジュールで、かなりの難題でした。しかし、今回はしくみづくりや育成などは全く考慮する必要がなく、とにかく「受注」というゴールに向けて集中すれば良いということで、やらせていただくことにしました。

これまでの歴史を紐解き、自社の魅力を伝える提案書をつくる

RFPの内容を精査し、提案書を設計するにあたって、ポイントとなることは大きく2つでした。

  1. トップをはじめとするG社幹部の熱い思いをじっくりと聞いてそれを文章に紡ぐこと
  2. 現場で培ってきた優れた取組に光を当てて、G社の良さ/強みを再発見すること

そのために、現場に何回も足を運び、担当エリアごとに職長に話を聞いては、現場で取り組んでいる様々な工夫の資料化をすすめました。

寺島

これまでにX社やさらにそのお客様からいただいたご指摘事項とそれへの対応策、カイゼン活動を棚卸ししました。結果、提案するための材料が集まってきたので、「愚直にカイゼンを重ねながら他社ではできないオペレーションを実現していく」というG社の社風を提案資料に落とし込んでいったのです。

その結果出来上がった提案書はスライド30枚超。その1枚1枚は、X社とのこれまでの取組の中で起こってしまった事故から学んで卓越したオペレーションを確立してきたG社の歴史であり、その取組を標準化して他の拠点へも広げていこうという、壮大ではあるものの純朴で実直なG社らしい地に足の着いた提案でした。

「社長の想いを語るプレゼン」を徹底的に準備

G社のメンバーが自信をもって提出できる提案書ができたので、G社トップによるX社幹部に向けたプレゼンテーションのリハーサルを実施。

寺島

この取り組みで一番心を砕いたのが、プレゼンテーションの演出でした。
G社の最大の強みの1つが社長の存在。ひたむきで真摯で人を大事にする社長の個性をX社の幹部にまっすぐに届けるために、スライドを上手に説明するのではなく、スライドを背景にして社長の想いを語ってもらうという形式にしました。このことで「スライドに喋らされているプレゼン」から「スライドに書いてあることを自分の言葉で力強く語りかけるプレゼン」へと大きく変わったのです。

20%以上の事業拡大に成功、提案書は会社紹介資料として継続活用

プレゼンテーションから1か月後にG社トップから嬉しいお知らせが届きました。従来受託していた売上を確保できただけでなく、これまで同じ拠点内にあった他社の受託業務も併せて受託することになったのです。

G社トップからの「今の拠点での取組を標準化して、他の拠点にも広げよう」という提案をX社幹部が真剣に受け取り、「そのためにはまず今の拠点全体を任せよう」という大きな決断を下しました。

これによってX社の事業規模が20%以上拡大することとなりました。機械化が進んでいるとは言え人手が必要な拠点ですので、人員の確保や教育で大変な時期はありましたが、現在でもこの拠点はX社の物流品質の模範拠点としてG社が継続して業務に取り組んでいます。

寺島

1か月弱という短期間のプロジェクトでしたが、しっかりと成果を出すことができ、G社の事業成長にも貢献することができて大変嬉しく思っています。また、作成した提案書は会社紹介資料へと形を変え、X社への提案後も繰り返し利用されているそうです。苦労して作った甲斐があったというものです。