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事例の概要

大手製造業のA社はこれまで顧客のニーズに合わせ、自社の商品を組み合わせて提案、販売するという営業スタイルが中心でした。しかし、競合他社よりも商談を優位に進めるためには、顕在化しているニーズに対応するだけでなく、顧客の業務課題を掴み、その解決策を提案していく「ソリューション型」の営業力強化を図っていく必要がありました。

そのために研修を行ったり、社内で成功事例の共有会をしていたりしましたが、なかなか共通した軸での全体の底上げができないという悩みを抱えていました。

そこで、ソリューション営業を単なる「売るためのテクニックの一つ」という位置付けではなく、これからA社の営業担当者が目指すべき姿として定義し、その実現に向けて、本人及びマネージャが積極的に取り組めるしくみの整備を実施。

それを全体に展開すると共に、チーム編成や営業全体としての育成施策の企画にも役立てることつなげ、組織としてソリューション営業ができる体制への改革に成功できたのです。

まずは「営業のやり方」ではなく、「育て方」から

A社の営業企画マネージャは、当初新たな切り口での研修メニューを探していました。しかし、研修で知識をえて営業担当者の意識や行動を変えていくことに限界も感じておられたようです。そんな中、トライツのセミナーでご紹介した「ビジュアル思考の営業ツール」に興味を持ったことをきっかけにご相談をいただくことになりました。

角川

お話をしているうちに、ソリューション営業の「やり方」よりも、それができるように指導・育成していくべきマネージャの方に課題があることがわかってきました。
どんな能力を身につけていかないとならないかという指針がないので、その場で気づいたことを伝えるだけになっていることが多かったのです。

検討の結果、顧客の課題に寄り添い、その課題解決に一緒に取り組んでいくことができる営業担当者を育てる育成ロードマップづくりから始め、その後でA社流のソリューション営業の手法を開発していくことになりました。

営業担当者の目指すべき方向性を示す「育成ロードマップ」をつくる

まず、ソリューション型の営業のプロセスの大枠を定め、それぞれの段階で必要な能力を定義。それを5段階のレベルに分解していくという作業を行いました。

その過程の中では何度も「どこまでを目指すべきなのか?」ということが議論になり、あるべき姿を探っていくことになりました。

これに顧客との営業プロセスを進めていく上で必要な「企画力」や「リスクマネジメント力」なども加え、必要な能力とそれをどのようにレベルアップさせていくかというロードマップが出来上がったのです。

角川

5段階に整理し、表にまとめたものを縦に見ていくと、検討メンバーから「こういうように段階を経て育っていけばいいというのが見えてきたね」「将来に夢が感じられるな」というような声が出てきました。
単にできている、できていないを評価するものではなく、育成の方向性を示すものとしてまとめることができて良かったです。

育成手段まで具体化し、育成ガイドブックとしてまとめ、実践・検証

そこから各能力をレベルアップさせるために有効な施策を整理したところ、育成手段がある程度イメージできたり、これまでやってきた研修の位置づけが改めて明確になるものがあった反面、具体的な施策がないものもハッキリしてきました。

角川

これまでA社では育成の基本はマネージャ任せのOJTで、現場から「不足している」という声があったもの対応する形で研修が行われてきました。
しかし、今回は目指す姿に向けて体系的に育成するための施策の過不足をチェックすることができるようになったのです。
一般的にこのような手法では「評価」に軸足が置かれることが多いですが、今回は完全に「育成」にフォーカスしました。従って、「育成施策」まで具体化することがポイントでした。

そして、モデル部門で評価を行い、育成計画を作った上で、その実践を開始。しくみとしての有効性を検証していきました。

育成を加速させるために「ビジュアル思考営業ツール」を導入

その過程でA社としてソリューション営業で成果を上げていく上での育成ポイントが顧客の業務上の課題を引きし、それを自社商品の商談とするまでの能力にあるということがわかってきました。

せっかく顧客から課題を聞くことができても、それを上手く自社商品につなげるシナリオを組み立てることができないと、そもそも商談として始めるには至りません。

そこで、課題を顧客と一緒に整理し、優先順位の高いものに絞って具体化させていくことができる営業ツールを作成しました。そこには「ビジュアル思考」を取り入れ、わかりやすく進められるように工夫したのです。

継続的な運用で、ソリューション営業を定着化

育成ロードマップの運用は、年1回の自己診断からマネージャの診断&面談、そこから全社的な分析、育成施策企画・・・とルールを定めて継続的に行えるようにしました。

結果として、以前と比べてソリューション営業に対する姿勢が大きく変わり、数字としても見えるように改革するとができたのです。

角川

これまでトライツでは営業ツールなどのやり方からスタートさせることが多かったのですが、A社の取り組みは営業育成の考え方からのアプローチでした。
これはいろいろな種類の営業形態に対し、一度に全体の底上げをしていくのに有効だと考えています。