営業戦略

営業生産性向上の2つのアプローチ
「ムダを減らす」と「稼ぎを増やす」

営業生産性向上の2つのアプローチ「ムダを減らす」と「稼ぎを増やす」

ここ数年新聞を賑わしてきた働き方改革ですが、いよいよ4月から「働き方改革関連法」が施行されます。時間外労働の上限規制や勤務間インターバルに高度プロフェッショナル制度など、ビジネスマンの働き方が大きく変化していくことでしょう。

この働き方改革はもちろん営業部門にも及びます。いかに労働時間や作業のムダを削減しながら売上を高め、これまで以上に生産性を向上させていくかを考えなければならなくなってきているのです。

そこで、今回のトライツニュースでは「営業生産性向上に必要な2つのアプローチ」についてご紹介したいと思います。

営業向けデジタルツールで主流の「ムダを減らす」アプローチ

2019年2月21日から3月1日にかけて開催された、日経産業新聞主催のセミナー「営業部門の働き方改革~デジタルテクノロジーの活用で営業生産性向上を~」で弊社角川が基調講演を務めさせていただきました。営業生産性を高めるためのデジタルテクノロジー活用ということで、セールスフォース・ドットコム社やソフトブレーン社のSFA/CRMをはじめとして、SATORI社のMAにサテライトオフィス社のビジネス版LINE、マネーフォワード社の経費精算システムなど、営業部門向けのさまざまなデジタルツールが紹介されており、大変勉強になるものでした。

ここで非常に興味深かったのが、各社の「営業生産性向上」へのアプローチの仕方の違いです。ザックリと言うなら「生産性=アウトプット/インプット」となりますので、これを向上させるためには「分子を小さくする=インプット(コスト)のムダを減らす」と「分母を大きくする=アウトプット(稼ぎ)を増やす」の2つのアプローチがあります。ですが、今回のセミナーで紹介されたデジタルツールの多くが、データの入力/検索の手間を省こうというものや、顧客へのコンテンツやメールの配信を自動化しようというもの、経費精算を自動化しようというものなど「ムダを減らす」アプローチが主流だったのです。

「ムダを減らす」アプローチだけでは稼ぎが減ってしまう

もちろん「ムダを減らす」ことはどの営業組織でも大事なアプローチです。煩雑な業務を自動化して簡便にはしたくない、手間がかかる今のままが良い、と思っている人はいないでしょう。しかし「ムダを減らす」アプローチだけだと売上が増えないばかりか、逆に減ってしまうことがあるのです。

米国のシステムコンサルタントのG・M・ワインバーグ氏はこのことを、「ルウディーのルタバガ法則」として面白く解説しています。ワインバーグ氏が子どものころにスーパーの食品売り場でアルバイトをしていたときに、いつも店頭に並んでいるのに売れたのを見たことがないルタバガ(西洋カブ)を並べるのをやめるように店主のルウディーにアドバイスします。すると、ルウディーは無言でルタバガを片付けてからワインバーグ少年に「OK、ルタバガはなくなった。次に片付けるのはどれだ?」と尋ねるのです。これを続けていくと店頭に残るのはほんのわずかの(最終的には1種類の)野菜だけになってしまい、売上(そして自分のアルバイト代)が激減することに気付いたワインバーグ少年はこれを「ルウディーのルタバガ法則」として記憶に刻むというお話。「ムダを減らす」アプローチはこの法則と同じで、経費精算や報告資料作成などのように稼ぎには直接影響のないルタバガのようなものを片付ければ効率化できますが、それを顧客対応などのように稼ぎに影響を及ぼすものにまでやみくもに自動化・機械化してしまうと、本当は人が対応していたら拾えた商談を取りこぼして稼ぎが減ってしまう、ということになりかねないのです。

「ムダを減らせば稼ぎが増える」という錯覚

ここまで読まれて「ムダを減らして時間に余裕ができたら、その分営業活動ができるようになるから稼ぎは増えるはずでは?」と思われる方もいらっしゃることでしょう。しかし、そもそも「ムダを減らす」アプローチの大前提は、ムダな作業に使っていた時間を本来の営業活動に振り向ければ稼ぎが増えるはず、というものですが、これは現在の営業のやり方が有効なときにしか当てはまりません。顧客がWebを活用した新しい購買の仕方へと進化しているのに、十年一日のごとく昔ながらの営業のやり方をしていては、せっかくムダを減らして営業活動の時間を増やしたところで、期待するほどは売上が増加しないのです。

つまり、顧客が大きく変化している現在のB2B営業において「ムダを減らせば稼ぎが増える」と言うのは多くの場合錯覚なのです。営業生産性向上を実現するためには、よくある「ムダを減らす」アプローチだけでは不十分で、変化する顧客の購買のあり方に合わせた営業へと自ら進化する「稼ぎを増やす」アプローチが不可欠です。

それでは、「稼ぎを増やす」アプローチとして具体的に何をすればいいのでしょうか。私は、このアプローチは2つの要素で成り立っていると考えています。それは「自社の得意技を見つけ、磨く」と「顧客の購買の仕方に合った営業のやり方に変える」というもの。前者は提案力やヒアリング力などの営業担当者のスキルアップ、自社ソリューションのブラッシュアップなど、社内で取り組めることもあってそれぞれの企業で取り組まれているかと思います。一方、後者は顧客に選んでもらい売上を上げるための必要最低条件です。しかし、MAやSFAなどの導入がなかなか進まなかったり、それらのシステムを旧態依然としたこれまでの営業のやり方に合わせてカスタマイズしようとして失敗するなど、多くの営業組織がつまづいてしまっているようです。

「稼ぎを増やす」ために、顧客の購買の仕方に合った営業に変えよう

続けて、「稼ぎを増やす」ための必要最低条件である「顧客の購買の仕方に合った営業のやり方に変える」ことについて、もう少し考えてみたいと思います。

先ほども述べたように、現在の顧客はWebを最大限に活用して購買活動を行っています。海外のデータになりますが「2018 Buyer Preferences Study」によると、
1. 課題の明確化
2. 解決策の探索・特定
3. 解決策の評価
4. 懸念事項の解消
5. 購買条件の交渉
6. 購買
という6つの購買プロセスの中で、70%の顧客は「2. 解決策の探索・特定」までを自分でおこない、営業担当者には声を掛けません。さらにその70%の顧客のうちの63%は「3. 解決策の評価」以降にならないと営業担当者に声を掛けません。つまり、営業担当者が顧客のところに出向くとき、顧客の方では既に課題も解決策も明確になっており、あとはソリューションを選ぶだけという状況になっていることが多いのです。

このような購買の仕方をしている顧客に選んでもらうために大事なのが「顧客がWebなどを通じて情報収集している中で自社のソリューションを発見し、理解し、他社のソリューションよりも優れていると評価してもらうこと」と、「顧客が社内を調整して購買の意思決定ができるように後押しすること」です。この2点を意識して「顧客の購買の仕方に合った営業のやり方に変え」、「稼ぎを増やす」ということを考えなければ、せっかくコストをかけて「ムダを減らす」デジタルツールを導入しても成果が出ないということになってしまいます。

「ムダを減らす」と「稼ぎを増やす」を組み合わせて打ち手を考えよう

冒頭で紹介したセミナー「営業部門の働き方改革~デジタルテクノロジーの活用で営業生産性向上を~」で、弊社角川から営業生産性向上の2つのアプローチ「ムダを減らす」と「稼ぎを増やす」についてお話ししたところ、多くの方が熱心にメモを取っていらっしゃいました。この2つのアプローチを組み合わせて打ち手を考えることが、デジタルツールの導入だけでなく、営業改革全般において大事だということが理解いただけたのでしょう。
「変化する環境の中では『ムダを減らす』だけでは『稼ぎを増やす』ことにはつながらない」
これはワインバーグ氏の「ルウディーのルタバガ法則」にも決して引けを取らない、営業生産性向上の大事な法則なのです。

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