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Webマーケティングでよく使われるフレーズに「If your business isn’t online, it doesn’t exist」というものがあります。これは「あなたの会社がWeb上にないなら、それは存在していないということ」という意味。それほどまでに、現在のマーケティングや営業において、Web上に存在し、かつ顧客から見つけてもらうことは重要なことです。

これはすなわちWebマーケティングそのものであり、そのWebマーケティングは日進月歩の勢いで進化を遂げていっています。今回のトライツブログでは、「Webマーケティングの主流であるSEO(検索エンジン最適化)に代わるかも知れない『キーワード分析』」について、海外の調査レポートとITツールをもとに見てみたいと思います。

SEOの一部?「キーワード分析」の登場

「90%のB2B購買担当者は、お目当ての企業を見つけるまでに12回の検索行為を行っている」
これは、Google社の「think with Google」という調査レポートの中のデータです。このように現在のB2B顧客はWeb検索を活用して情報収集をしています。顧客の平均12回の検索の中で自社が引っ掛かり、見つけてもらわないと新規の商談に参加することすらできない、というのが現実なのです。

ここで「顧客のWeb検索結果に表示されて、自社のWebページに来てもらう」ための施策の代表格と言えば、皆さんご存知のSEO(検索エンジン最適化)です。

このSEOについて簡単に解説すると、Googleなどの検索エンジンが検索語(キーワード)に対して各Webページの関連性を計算してランキング表示する考え方(アルゴリズム)に合わせて、自社のWebページがより上位のランキングで表示されるように調整することです。以前は、検索エンジンのクセや抜け穴を見つけてそこを突くというような裏ワザも多くみられましたが、最近では検索エンジンの進化に伴い、本質的に顧客にとって良いWebページ作りをアドバイスしたり記事の作成代行をしたりするという企業が増えてきたように思います。

しかし、最近この「顧客のWeb検索結果に表示されて、自社のWebページに来てもらう」ための施策の1つとして、「Keyword Research」(日本語では「キーワード調査」または「キーワード分析」。以下、本記事では「キーワード分析」)というものが出てきています。これは、自社のWebページの内容が顧客が検索するキーワードとマッチしたものになっているかを調査・分析するというもの。この「キーワード分析」に関して、現在の課題と最新のツールを紹介している面白い記事を見つけましたので、以下にご紹介しましょう。

調査記事1:B2BでのSEOやキーワード分析は難しい

米国とカナダでマーケティング・サポート業務を提供しているJumpfactor社の2018年11月24日の記事「What You Need to Execute Effective B2B Keyword Research」は、B2B企業で「顧客のWeb検索結果に表示されて、自社のWebページに来てもらう」ことがいかに困難なのかについての調査データから記事をスタートしています。

マーケティング担当者の大多数(61%)が、SEOを改善しWeb上での存在感を増すことが、自社のインバウンドマーケティングにおける最重要の課題だと答えているにも関わらず、満足するコンバージョン率(見込客化する割合)を挙げられていると答えているのはたった22%だけだ。
(中略)
不幸なことに大多数の企業では、ほとんどのコンテンツは十分なアクセス数や注目を集められていない。それは、B2Bでのキーワード分析は微妙で複雑なプロセスだからだ。

調査記事2:B2Bのキーワード分析はB2Cと比べて複雑で微妙

では、B2Bキーワード分析はどのように複雑で、B2Cとは何が異なっているのでしょうか。記事では以下のように続けています。

B2Cの営業プロセスと比べて、より多くの意思決定者が関与しており、より深いレベルでの調査が求められている。

そして、記事の中ではB2Bのキーワード分析が複雑な理由の具体例として、顧客の購買プロセスを3段階に分けて、それぞれの段階で求められるキーワードが異なることを説明しています。

第1段階:この段階では顧客は起こっている症状を検索し、原因を特定した上で解決策について学習することから始めるので、検索頻度の低いキーワードが多数必要になる。
第2段階:顧客が自分のニーズに合った解決策を比較選択する。(中略)バイアスがかかっていない比較情報を求めているので「優位性」「メリット」という言葉が検索で使われる。
第3段階:顧客が解決策を選択し、購入する準備を整える。(中略)「サービス」や「ソリューション」「開発」「調達」などの言葉が一般的にキーワードとして使われる。

このように、顧客の購買プロセスの段階によって、顧客の検索する意図が異なっているために、さまざまなキーワードからなるコンテンツを用意しなければならないため、B2Bのキーワード分析は複雑で微妙だと言うのです。

複雑で微妙なB2Bキーワード分析を可能にするツールとは

このように複雑で微妙なB2Bのキーワード分析を成果が出るものにするために、記事ではおススメのキーワード分析ツールを3つ紹介しています。ここでは、3つのキーワード分析ツール「SEMRush」「Ahrefs」「SerpStat」についての説明は冗長になるので割愛する代わりに、特徴的なポイントだけを絞ってご紹介します。

この3つのキーワード分析ツールに共通する特徴は、GoogleがWebページ内を巡回(クロール)している機能を再現し、自社システム内に莫大な疑似Googleデータベースを構築して、それをもとに最適なキーワードを提案するというものです。例えばSEMRushは約4,000万フレーズものデータベースを持っており、それを一日当たり300~400万回というとてつもない回数で更新しています。その結果「莫大な語句を顧客がどのように検索しているか」という大量の検索データをもとに、顧客の視点から見た自社のWebページの実力を客観的に知ることができるのです。

つまり、複雑で微妙なB2Bのキーワード分析という課題を解決するために、顧客の生の大量の検索データを蓄え、実際に検索で使われたフレーズをもとに自社Webページの存在感を高めようというのがこれらのキーワード分析ツールなのです。

キーワード分析とSEOは似て非なるもの

これらのキーワード分析ツールと従来のSEOは、「顧客のWeb検索結果に表示されて、自社のWebページに来てもらう」という目的は一緒ですが、まったく異なるアプローチの施策です。

従来のSEOは、簡単に言うと「検索エンジンのアルゴリズムに気に入られるWebページ作り」です。これを結婚で例えると、仲人さんに気に入られるようにプロフィールや自分自身の見た目を演出しようというもの。

一方、これまで紹介したようなキーワード分析ツールは顧客の検索データそのものを持っているので、「実際に検索している顧客に気に入られるWebページ作り」だと言えます。先の結婚の例で言うなら、結婚を考えている男女の多くに好かれるようになろうというもので、仲人さんの好みに振り回されることがない代わりに、「みんなから見た自分の実力」を否応なく突き付けられてしまうものです。

SEO対策だけに止まらないキーワード分析の可能性

日本ではSEOを効率化するためのツールの1つとして紹介されることが多いキーワード分析。しかし、最新のキーワード分析ツールは大量の顧客の検索データを持ち、それをもとに自社のWebページの実力を知ることができるということから、SEO対策のみにとどまらず、真に顧客にとって価値のあるWebページになっているかを測るとても重要な物差しともなるものです。そう考えると、今回ご紹介した記事は、単なるSEOツールの紹介ではなく、SEOではないWebマーケティングの新しい分野が生まれた瞬間を捉えたものだと言えるのかも知れません。

参考:「What You Need to Execute Effective B2B Keyword Research」(Jumpfactor, 24 November, 2018)