人材育成

身近になったAIと「共存」するために必要なこと

身近になったAIと「共存」するために必要なこと

2018年もあと1ヶ月あまりとなりました。皆さんにとって2018年はどのような1年だったでしょうか。

このトライツニュースでは、2018年はAIに関するテーマをこれまでより多く取り上げた1年でした。SFAなどの営業システムに続々とAIが導入されていますし、海外の調査レポートでもAIについて触れていない記事を見つけるのが難しいほどです。そして、このAIの浸透はSFAなどにとどまらず、私たちの日常生活にもAI技術が入り込んできています。

そこで今回のトライツニュースでは、2018年の振り返りの1つとして「身近なものになってきたAIの現実と、AIと人間のこれから」について考えてみたいと思います。

AIスピーカーが教えてくれるAIの現実

2016年に「AI」が、2017年には「AIスピーカー」が新語・流行語大賞にノミネートされました。最初は「AI」そのものが新語として注目され、翌年にAIを搭載した具体的な製品になっています。最近は各社の値下げによって1万円以下で購入できるものがほとんどです。「試しに買ってみた」という方も多いと思います。まだだという方は買ってみてはいかがでしょうか。

実はトライツのオフィスにもAIスピーカーが置いてあります。購入当初はなかなか上手く使いこなせずにいました。うっかりAIの名前が入った話をするだけで文脈などお構いなしに反応してしまいますし、検索をお願いしても明後日の方向の答えが返ってくることも多かったです。ただ、そのような試行錯誤を繰り返していく中で使い手側もAIスピーカーの癖や得意不得意が分かってくるので、しばらく使い続けていくうちにだんだん便利に使えるようになってきたように感じます。

結果、今は仕事中のBGMの再生や、手が離せないときの質問対応、外出などの用事を教えてくれるアラームなどの役割でトライツ準メンバーとして仕事をサポートしてくれるようになりました。AIが学習したというよりも、我々がAIの使い方を学習した感じです。

AIはまったく意味を理解していない

このように使い手側が学習しないとならない現在のAIスピーカーですが、その理由を分かりやすく解説してくれているのが今年のベストセラーである「AI vs 教科書が読めない子どもたち」(新井紀子著、東洋経済新報社、2018/2/2)です。

この本では、東大に合格できるAIを作ろうという「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトでリーダーを務めた数理論理学を専門とする著者が、AIがどのような理屈で情報処理をしているのかを解説した上で、AIと人間の将来像を鋭く説いています。この本によると、AIは論理的な処理やパターン認識、大量のデータをもとに最も確からしい回答を返す能力に優れているものの、文章自体の意味を理解しているわけではないのでちょっとした言い回しを理解できず、そのために使い手側の方で工夫をしなければならないということ。つまり、AIは「読解力」というものを持ち合わせていないのです。

この「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトとしての結論は、東大の二次試験は読解力が不可欠なので合格は無理だということ。ただ、MARCHクラスの大学であれば、マークシート式の試験なら合格できるだけの偏差値を取れるということでした。これはつまり、今のAIは文章の意味を分かっていなくても、得意なパターン認識などの能力を駆使してかなりの精度で正しい答えを出すことができるようになっているということです。

実は人間もAIも苦手なものは同じだった

そして、「AI vs 教科書が読めない子どもたち」で衝撃的だったのが、「文章の意味を理解できないし、複雑なことを言っても分からない」というのはAIだけに限らず、人間でも実は同じだということを実験から証明したことです。AIが苦手とする読解力のテストを日本の中高生も受けたところ、問題によっては正しく回答できない生徒が7割もいたのです。

トライツとして営業現場の支援をしていても、「なぜこれが必要なのか」を読み解こうとせずに、「過去にどのような対応をしたのか」というAI的なパターン認識で処理して機械的に行動してしまって上手くいかない、という場面を目にすることがよくあります。以前、「AIに奪われる仕事」が新聞や雑誌などで頻繁に取り上げられていましたが、AI的に機械的に処理するのなら、精確で文句も言わずに24時間働いてくれるAIに置き換えよう、となるのは当然の帰結でしょう。

ちなみに、「AI vs 教科書が読めない子どもたち」でも、AIが広まっていく中で人間はどのような仕事をするべきかという問題提起をしていますが、その答えはシンプルで、「AIができないことができる人間になる」しかないということのようです。新しいビジネスを生み出したり、AIが苦手とする文脈や相手の気持ちを理解して行動することが求められる仕事をするのが仕事で人間が生き残る道であり、そのために読解力や創造力がこれからさらに重要になってくると言うのです。

このように見てくると、AIとはただ人間をラクにするためのツールではなく、AIができないことをできるように人間の成長を強いるものだと理解しなくてはならないのだと思います。産業革命の時代には「機械に仕事を奪われる」ということが現実に起こりましたが、結果として人間は機械を使って仕事をするように進化しました。それと同じことがまた起こるということです。

皆でAIとの共存を考えていこう

これまでAIとは、それを導入する立場の営業企画やマネージャーなどのごく一部の人が「どう活用するか」を考えるものでした。しかし、これからは営業に関わる全員がAIと「どう共存するか」を考え、それぞれが自分の存在価値を改めて考え直し、それを高めていくように努力しなければならない時代になってきていると言えます。

これは、凄い記憶力と業務処理能力を兼ね備えた「ウワサの大型新人」が皆さんの職場に入ってくると考えるとわかりやすいように思います。このウワサの新人はパターンを理解すると間違えずにあっという間に業務を終えてしまいますし、ケタ違いの物知りで、24時間文句言わずに働きます。しかし、ちゃんと説明しないととんでもないうっかりミスをやらかしますし、わかりやすく質問してあげないとトンチンカンな答えしか返ってこない上に、日本語を書かせるとなんかオカシイ。

そんな異色の新人君がAIなのです。彼が普通の人間なら当たり前にできることができないからと「使えない」としてしまうのか、高い能力を上手く活かすようにこちらが工夫するのか。我々はその選択に迫られていると言えるでしょう。

労働力が十分であった頃ならこれまでのように人間中心で考えれば良かったかもしれませんが、これからの人材不足の時代、そんなことは言っていられません。新人君が得意なことは彼に上手く任せて、自分はその彼が苦手なことのスキルを高め、チームとして生産性を高めていくことに挑戦しなければならないのです。

我々に必要なことは、毛嫌いしたり、頭ごなしに否定したり、使えないと決めつけるのでなく、不器用だけど仕事のできる後輩として共存を考えていくことだと思います。

2019年、トライツニュースでは引き続き「AIとの共存」というテーマで情報を紹介していきますので、どうぞご期待ください。

投稿者プロフィール

寺島 孝輔
実際に現場で成果が出るまでお手伝いします。現場の力を引き出し、現場に新しいアイデアを加えることで、顧客から選ばれるビジネスへの変革を実現します。
See more info
Return Top