この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

私が子どものころからよく見ていた番組に「パネルクイズ アタック25」があります。クイズ番組は好きなので自分でも解こうとするものの歯が立たない問題も多く、そんなものもやすやすと答える回答者を見ると「世の中には物知りな人がいるものだ」とつくづく思います。

物知りと言うことであれば、B2Bの営業担当者も負けてはいません。仕事でお会いする営業担当者の中には商品についてはもちろんのこと、顧客について相当に物知りな方が大勢います。「開発の○○さんは以前は海外事業を担当していた」「□□さんは社内結婚で、相手は本社の△△さん」などと本当に細かい人に関する情報が頭の中にインプットされていて驚かされます。ただ、いざその顧客を攻略するための作戦を立てようとすると、それに必要な情報は入手できていないということが少なくありません。

そこで、今回のトライツブログは「営業として収集するべき顧客情報」について考えてみたいと思います。

営業は顧客のことを何でも知っている?

営業部門と開発/企画部門とが一緒になったプロジェクト会議では、「顧客のことを一番知っているのは営業だから」という発言を耳にします。営業部門は毎日のように顧客と接しているわけですから、もちろん他の部署と比べて相対的に顧客のことを知っているのは当然のことでしょう。

ところが、営業部門が持っている顧客情報をもとに営業やマーケティングの戦略を立てようとすると、とたんに使えそうな情報が出てこなくなる、ということが少なくないのです。このような営業現場に共通しているのが、営業担当者は顧客の担当者の経歴や社内での人間関係など、関係性を構築/維持するための情報はふんだんに蓄えているにも関わらず、ビジネスチャンスとして使える情報をあまり持っていないということです。

ビジネスチャンスとなる顧客情報がどういうものかは、企業/業界によってまちまちです。顧客の中長期計画でどんなことが書いてあるかとか、直近/将来の投資計画とか、事業体制の変化とその理由だとか、直近で取り組んだ施策とそれに対する社内評価などが、一般的なものです。簡単な例を挙げると、周年行事等のイベント代行事業であれば、企業の設立年月日がビジネスチャンス情報になるでしょう。

これらの情報はこれまで何らかの形で共通化された顧客情報管理のしくみで管理するのが主流でした。それはSFAの中の顧客マスタにデータを持たせたものから、共有フォルダの中にあるExcelファイルで運用されているものまでいろいろあると思います。ただ、それらはどのような仕掛けにしようとも、わざわざその仕掛けを開いてデータを入力しなければならないということは同じでした。

結果として入力に手間がかかる割にはその結果はほとんど活用されずじまい、時折「顧客情報を入力・更新するように」というお触れが回ってくるものの、それがどう活用されたのかは誰も知らない、というところが多かったのではないでしょうか。

CRM機能はあるものの…営業活動報告ツール止まりのSFA

そんな中で、最近AIが注目されている中で、営業が日々入力している情報を自動的に読み取らせて顧客情報として活用できるようにしようという動きが出てきています。今まで顧客情報はわざわざ分けて入力しなければならなかったと比べると格段の進歩です。

しかし、私はこれまでいろいろな企業のSFAに入力されたデータを見てきましたが、残念ながら営業活動報告ツール、いわゆる電子日報のような状況になっている状況では、いわゆるビジネスチャンス情報がほとんど入っていないのです。

その理由として、とにかく日々の営業活動の内容を全員が入力できるようになろうということに主眼を置いている企業が多いことがあげられます。営業担当者の入力率を上げるために、入力する項目はシンプルにして制約をできる限り設けず、フリーテキスト欄が主体で自由に入力できるようになっています。

入力する内容も「営業活動報告」なので「ヒアリング」や「提案」「見積」など自分が何をやったことの報告がほとんどで、顧客情報と言えるものは本当に僅か。いくつかの企業でSFAの利用者にインタビュー調査をしたら、「SFAを自分の仕事をアピールするツールとしても活用している」という話が多くのユーザーから出てきました。こうなっていると、SFAに入力されている情報は顧客の実態を表したものと言うよりも、営業担当者が会社に伝えたい情報でしかありません。

顧客情報を集計・分析するための土壌は整っている

以前は、苦労して顧客台帳に蓄積したデータを分析しようとすると、まずは不定形に入力されたデータのクレンジングからスタートする必要がありました。そしてようやく分析ができるデータが揃ったとしても、視覚的に分かりやすいグラフを作ったり高度な統計解析などをしようとするとExcelに熟練した人にお願いしたり、高額なBI/統計解析ソフトを購入しなければなりませんでした。

それが現在のSFAには強力な集計・分析機能がついており、決められたフォームで入力すれば基本的なグラフはすぐにダッシュボードで確認できますし、高度なAIなどの機能を使うと統計解析の知識がなくても予測・分析結果を瞬時に手に入れることが可能になっています。つまり、以前と比べて入力された顧客情報を活用し、価値ある情報を導きだすためのハードルが大幅に下がってきています。

しかしながら、現在の営業報告ツールとしての使い方ですと、いかに賢いAIでも分析できるのは営業担当者の自己アピール情報ばかりになってしまいます。それでは、冒頭でお話したようなビジネスチャンスの発掘にはつながらないのです。

SFA活用の次のステージに向けて、顧客情報が集まる工夫をしよう

日本のB2B企業の多くでSFAの導入・展開が進んでいます。
「営業日報を書くクセ付けまではできた」
「でも、SFAの機能はこれだけではないはず」
「AIなどの機能をもっと活用したいが、どうしたらよいのか分からない」
という声をよく耳にします。

そのようなSFAの活用の第2ステージとして、ビジネスチャンス情報をはじめとする顧客情報の収集ツールとしてSFAを捉え直す、という考え方が有用なのではないかと私は考えます。そして、その第一歩としておススメするのが、「営業活動報告の入力フォーマットを見直して自然に顧客情報が入力されるしかけにSFAをチューニングする」というものです。

これまでと同じように営業活動を報告してもらうときに、「提案」や「見積」といった営業担当者自身の行為だけでなく、「課題の明確化」や「情報収集」「比較選定」などのような顧客が購買活動のどの段階にいるのかも選択させることで、顧客情報が入力されるようになります。同様に、「ビジネスチャンス情報」などの項目があれば、営業担当者はSFAに入力するさいに自然と客観的な顧客の事業環境に関する情報を入れるように習慣化されていきます。このように、これまで通りに営業活動を報告してもらうのですが、要所要所に顧客情報が入力されるように工夫を施しておくことで、蓄積される情報の質が変わってくるのです。

クラウドで安価かつ便利に使えるようになった最近のSFA。入力担当者にとっても使いやすく、定着させやすいシステムになってきました。次のステージに進むためには、まずは顧客情報が自然と集まるように入力フォーマットを工夫することが肝心です。今流行りのAIや統計などの機能をフル活用するためにも、まずはその前提となる顧客情報の充実から始めてみてはいかがでしょうか。

 

SFAやCRMなど、営業現場で情報収集しそれを売上につなげるためには、顧客情報を充実させることが必要ですし、どのような顧客情報を収集するかという設計が大事になってきます。トライツコンサルティングでは、顧客情報をどのように活用するかという観点から、SFAやCRMで収集する顧客情報の設計を支援しています。「もっとデータを活用した営業にしたいが、どう設計したら良いか」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。より具体的なヒントを差し上げられると思います。