マーケティング

使える?使えない?B2Bにおけるチャットボット活用

使える?使えない?B2Bにおけるチャットボット活用

LINEやFacebookのメッセンジャーなど、日常生活にチャットというものが浸透してきています。最近はChatworkのような社内チャットツールもたくさん出ていますし、SalesforceのSFAを導入していればChatterという付属のチャットツールも使えます。顧客や関係会社とのやり取りもメールではなく、チャットでやっているという人も多いのではないでしょうか。

チャットツールの中で自動的に会話をする仕組みはチャットボットと呼ばれ、B2C企業でも多く導入されています。アルバイト情報紹介などの機能を持つリクルートの「パン田一郎」や、マイクロソフトの「りんな」などが有名です。ところが、B2Bのしかも営業やマーケティングでのチャットボットの活用事例となると、AIが話題になっている現在でもなぜかあまり耳にすることがありません。

そこで、今回のトライツニュースでは「B2B営業・マーケティングでのチャットボット活用」について、最新の調査レポートを題材にして考えてみたいと思います。

海外調査レポート:チャットボットで見込客をスピーディに商談化

イギリスに本社を置くテクノロジー系の情報ポータルサイト ITProPortalの最近の記事の中に「Using conversational marketing to grow your IT business」という、B2B企業でのチャット・マーケティングの成功事例と、市場調査の結果を紹介しているものがありましたので、かいつまんでご紹介します。

記事ではまず、顧客のニーズの変化とチャットツールの成熟について触れています。

B2Bの購買担当者の96%が、業界のエキスパートからの情報を求めている中、チャットなどの対話型マーケティングに勝る手段はまずありません。(中略)5年前と比べて、チャットマーケティングの市場は準備が整ってきました。Whatsapp、Facebook Messenger、WeChat、Viberというチャットツールは世界中に広がっており、チャットのような即時性のあるコミュニケーションを友人や家族に求めるように人々は変化してきました。

日本でチャットツールと言えばLINEなのですが、国外ではあまり普及していないのでリストの中に載っていなかったのでしょう。同じアジア系のチャットツールである微信(WeChat)は全世界に普及しているため、リストの中に含まれているようです。

記事は続けて、調査レポート「2017 State of Conversational Marketing Report」の中から、即時性のあるコミュニケーションがB2Bマーケティングにとって重要であることを示すデータを紹介しています。

レポートによると、見込客からのコンタクトがあってから5分以内に回答することが、成功のためには不可欠です。5分以上過ぎてしまうと、その見込客とその後にコンタクトできる可能性は10分の1になってしまいます。

そして記事の後半では、実際にITProPortal社がDrift社のチャットボットツールをITProPortal自身とそのクライアント企業(B2Bソフトウェア販売会社)で活用した結果を紹介しています。

当社では、新規顧客が15%増え、販売サイクルが33%短縮できました。また、我々のクライアント企業で試用したところ、見込客の28%をDriftから集められるようになり、Driftで集めた見込客の獲得コストは従来の5分の1でした。そして、その見込客から50万ポンド(7,000万円)の収益を獲得し、販売サイクルを45%も短縮することができました。

補足説明すると、Drift社のツールは「LeadBot」というもので、自社のWebページに訪れた見込客の問合せに答えながら、最適な商品を選んで情報提供し、より専門的な情報を求める客は生身の専門家につなぎ、関心度合が高い客は営業担当者とのアポイントを設定する、というものです。これまで、チャットボット活用と言えば、「B2C向け」で営業よりも「カスタマーサポート向け」という印象が強かったのですが、B2Bの営業・マーケティング用途での貴重な成功事例だと思います。

チャットボットは新しくて奇抜なもの?

このB2Bの営業・マーケティング用途でのチャットボット導入ですが、「AIの進化に伴ってどんどん広がる」という前向きな意見もあれば、「営業用途では難しい」「日本人・日本語には向いていない」などという懐疑的な意見も多く見受けられます。

ここでは、日本人の性質や、主語や目的語が欠落しがちといった日本語の曖昧さ、という議論には踏み込みません。また、AIの学習の仕方が営業に向いているか、ということについても触れません。その代わりに、一緒に考えていただきたいのですが、このチャットボットは営業やマーケティングにおいてそこまで新奇なものなのでしょうか。

チャットボットはAI時代の「できる内勤スタッフ」だ

私が新入社員として働き始めた2000年ごろまでは、営業マンがいる事務所ならおおよそどこにでも、ベテランの内勤スタッフの方がいらっしゃったものです。電話で連絡するとたいていいつも席にいて、何を聞いてもすぐに的確に教えてくれて、簡単な見積ならササッと作ってくれる。営業マンの予定もおおよそは把握しているので、アポイントが取れそうな日時まで教えてくれる。

そんな「営業マンよりもよく知っているのでは?」という内勤スタッフは、組織の合理化などの流れで今では少なくなってしまいました。先ほどまで見てきたチャットボットと言うのは、その内勤スタッフの仕事を電子化・機械化するものだ、と言えるのではないかと思います。自社の商品情報やそれに関する事例などを学習させて、顧客に的確に情報提供し、興味を持った見込客には自社の営業マンとのアポイントまで設定する。B2Bの営業・マーケティング用途でのチャットボットの機能を見ると、私には以前によくお世話になった「できる内勤スタッフ」が思い出されるのです。

まずはいろんなチャットボットと対話してみよう

私は今回のITProPortal社の記事を読んでから、最近のチャットボットをいろいろと試してみました。記事に紹介されていたDrift社のチャットボットであるLeadBotは、確かによくできています。特に英語だと会話もスムーズですし、言葉足らずな部分や多少表現のあやしいところがあっても、ちゃんと汲み取ってくれて情報提供してくれます。まさに「できる内勤スタッフ」のようで、あやうく東アジアリージョン担当の方とアポイントを入れてしまうところでした。

かたや、まだまだ会話能力が低いチャットボットもたくさんあります。特に連続した会話の文脈に沿った回答が弱いものがありますし、そもそもの機能としてFAQページの検索機能しか持ち合わせていない、というものもあります。このように出来が悪いものですと、「かえって逆効果になっているのでは?」と思ってしまいます。

論語に「己の欲せざる所は人に為すなかれ」という言葉があります。チャットボットについて前向きに考えようという方も、今は情報収集だけという方も、まずは自ら最新のチャットボットで対話型マーケティングを体験してみてはいかがでしょうか。それを通じて、出来が良いものとそうでないものを見分けられるようになり、そして「これは便利」「これならうちのお客さまも喜んで使ってくれそう」というものを見つけられるようになるのだと思います。

参考:「Using conversational marketing to grow your IT business」(ITProPortal, 31 May, 2018)

投稿者プロフィール

寺島 孝輔
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