この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

SFAやMAなどのツールや、セールスイネーブルメントなどの新しいコンセプトに対し、多くの人が関心を持ち、情報収集をしています。我々のトライツブログにも沢山の方々にいろいろなルートから訪問していただいています。

また、だからと言ってどこの企業も「営業を変えよう!」「もっと生産性を高めよう!」という動きになっているかというと決してそうではなく、「情報収集段階」からなかなか次へ進めないという声も伺います。そこには昨今の好業績を背景に、本質的に「困っていない」ということがあるようです。

今回のトライツブログでは、第一歩を踏み出したい方へ、営業活動の変革へのスタートのために不可欠な「モチベーション」と「成功事例」の2つについて考えてみたいと思います。

大事なこと①:本質的に困っていないときは「機会活用型」のモチベーションをかける

組織として営業活動を変えるには、メンバーに対して「変える」ことに対するモチベーションを高める必要があります。それには大きく分けて2つのやり方があります。

1つは、業績不振や組織の合併統合、人手不足など目の前の問題に対応するいわば「問題対応型」のモチベーションです。しかし、これは業績が好調な時など問題が顕在化しづらい状況においては効かないという問題があります。仮にトップが将来を見据えて警告を発信しても、あるいは逆に現場から「このままではマズイ・・・」と声を上げても、なかなか組織全体として「営業を変えよう!」というモチベーションにつながりにくいのです。

そこで有効なのは、2つ目の「機会活用型」のモチベーションです。これは目の前にある問題をどうにかしよう!ではなく、せっかくの機会を活かそう!とモチベーションを高める方法です。冒頭で述べたSFAやMAなどのツールがこの機会にあたります。SFAやMAなどのツールを活かして好業績を上げている企業のお話を伺うと、リーダーが「この道具を使って、自分たちの営業を進化させよう」というスタンスでメンバーにハッパをかけていることが多く、「新しいことに挑戦しよう!」という前向きなエネルギーを引き出しやすいという特徴があります。

大事なこと②:組織にインパクトを与える「スゴイ成功事例」をつくる

そして、高まったモチベーションを実際の行動につなげるためには、エビデンス(証拠・証言)としての成功事例も不可欠です。ただ、これがどこかから借りてきたものだと、業界が異なればもちろんのこと、たとえ業界が同じ場合でも「ウチの営業はよそとは違う」と言う反論が出てきてしまいますし、セミナーやカタログで紹介される成功事例は、機密保持や販売促進といった観点で脚色・デフォルメされているものがほとんど。大した効き目は期待できません。

そのため、社内を説得して組織を動かすことを目的とする成功事例は、よそから調達するのではなく社内で作らないといけないのです。
とは言うものの、社内で成功事例ができたのに変革が進まない、ということも少なくありません。そこで詳しく話を伺ってみると、単にシステムへの入力が習慣化しただけだったりするのです。これではシステムがとりあえず使えるということを示しているに過ぎず、社内に対するインパクトが弱すぎます。

また、逆になかなかユニークな成果を出せているにも関わらず、「スゴイ!」と上手く社内PRできていないということもあります。

これらはどちらにしても「何ができたら皆がスゴイ!と思うか」という議論が不十分なままスタートさせているということに問題があるのです。

成功事例づくりに取り組む際のポイントはやっぱり「BHAG」

新しい取り組みが上手くいくかどうかは、最終的にはやってみないことには分かりません。しかし、そもそもどのような成功事例をつくりたいのかという当初の目標自体にインパクトがなかったり、目標設定そのものがなされていないような場合は、インパクトのある成功事例を作るのは難しいことでしょう。これはつまり、成功事例づくりに取り組むときは、後々の社内広報を見越してインパクトのある目標設定を最初にしておかなければいけない。言い換えると、インパクトのある目標設定ができない場合は、その取り組みを進めても仕方がない、ということなのです。

ここまでお読みになって「BHAG」という言葉を思い出した方も多いのではないでしょうか。BHAGとは30年以上前に出版されたビジネス書「エクセレント・カンパニー」に出てきた「Big Hairy Audacious Goals」(巨大で、困難で、大胆不敵な目標)の略で、組織変革の重要ポイントとして紹介されています。このBHAGが営業活動の成功事例づくりにおいても大事なポイントなのです。

営業変革のスタートを切るためには、徹底的な情報収集と勉強が不可欠

ここまでお話してきた、営業変革のスタートを切るために大事な2つのポイント「機会活用型のモチベーションアップ」と「インパクトのある社内の成功事例づくり」について、共通して言えることがあります。それは、一歩掘り下げた徹底的な情報収集と勉強が不可欠だということです。

機会活用型のモチベーションの場合、SFAやMA、最近ですとAIのような最新のツールが「機会」の候補となります。それらについてただ漫然と展示会で眺めるだけでなく、「これを活用できたら自社の営業はどう変わるだろうか」と考られるレベルまで掘り下げられる知識が必要です。

一方、「インパクトのある社内の成功事例」については、「どんな結果が出たら、みんなに『スゴイ!!』と言われるだろうか」ということを考えなければいけません。誰をターゲットに、どんな価値/メッセージを訴求するのか、という社内向けのマーケティングができていないと、インパクトのある目標設定ができないのです。これも、社内情報のリサーチと組織風土の理解なくしては実現できないものです。

業績が好調なときは、差し迫った必要性がないために変革への取り組みが後回しにされてしまいがちですが、このような時こそリスク低く変革に取り組む絶好のチャンスなのです。「資金的に新しいことに取り組む余裕がある」というこの好機を活かして変革へのスタートを切るためには、モチベーションのかけ方、社内に訴求する成功事例のつくり方に今回ご紹介したような一工夫が必要なのだと私は思うのです。

トライツコンサルティングではこれまで、多くの企業とともに営業改革に取り組んできました。そのすべてにスタートがあり、一つとして同じ状況はありません。これから営業改革に取り組みたいけれど、スタートするのが難しい、きっかけがないとお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。改革のスタートが切れるよう、社内の機運作りから取り組ませていただきます。