営業戦略

セールスイネーブルメントの始め方:システム導入でなく業務変革だと考えよう

セールスイネーブルメントの始め方:システム導入でなく業務変革だと考えよう

このトライツニュースで何回か取り上げている「セールスイネーブルメント」。私の周りの日本企業でも「導入を予定している」「情報収集をしている」というところが増えてきています。とはいえ、「どうやってスタートしたらよいのか分からない」という声も同時に多く耳にします。

そこで、今週のトライツニュースでは、2017年には3分の2以上の企業がセールスイネーブルメントを導入している(CSO Insights社調べ)という米国の先進企業のレポートから、「セールスイネーブルメントの始め方」について考えてみたいと思います。

海外レポート「セールスイネーブルメント導入の7ステップ」

米国で雨後の筍のように出てきているセールスイネーブルメント・システム。その中でも年率300%という勢いで導入顧客数を増やしている大手企業Highspot社が、最近「7 Steps to Getting Started with Sales Enablement」(セールスイネーブルメントを始める7つのステップ)というレポートを発表しました。新進気鋭のセールスイネーブルメント・システムの旗頭である同社は何がセールスイネーブルメント導入に大事だと考えているのでしょうか。

その前に、簡単にセールスイネーブルメントについておさらいをしておきましょう。

セールスイネーブルメントとは「営業活動改善のための一連の取組で、各種営業施策をトータルでデザインし、それぞれの施策のパフォーマンスを数値化して管理すること」です。米国ではこの中でも、特に最近のWebマーケティングやオムニチャネル・マーケティング(WebサイトやSNSなど、複数のチャネルを使ってマーケティング活動を行うこと)の隆盛によって、社内に大量にあふれるようになった営業コンテンツを管理・分析するシステムが様々な企業によって開発・販売されています。そして、このような取組を進めるために営業部門とマーケティング部門の協働・連携が重要視されています。

さて、ではこのセールスイネーブルメントを導入するために何をすればよいか、Highspot社のレポートを抜粋してご紹介します。

「セールスイネーブルメントを始めて、正しい軌道に乗せるための7つのステップ」

1.適切な責任者を配置する
営業とマーケティングの複数部門にまたがる変革を進めるには、役員クラスのリーダーの関与が欠かせません。

2.協働する組織文化をつくる
組織のトップが先頭に立ち、協働することの価値や皆にどのような行動をしてほしいと思っているかを伝える場を設けましょう。

3.部門ごとの役割と責任を明文化する
営業・マーケティング部門のそれぞれの組織役割・責任を明確にするとともに、業務手順やシステム、業務指標などの柔軟な統合や連携も促進しなければなりません。

4.営業とマーケティングの評価指標を連携させる
両部門の目標管理指標がつながるようにすることで、部門間の協働が図れます。

5.基本業務プロセスを構築し、定期的なレビュー会議を設定する
月ごとまたは四半期ごとに、営業部門とマーケティング部門の協働レビュー会議を設けて、コンテンツのパフォーマンスを振り返り、新しいコンテンツや業務プロセスを考えるようにします。

6.セールスイネーブルメント・システムを導入する
セールスイネーブルメントの実現には分析機能のついたシステムが不可欠です。これにより、営業部門が適切なコンテンツをすぐに見つけられるようになり、顧客に効率的に関われるようになり、ひいてはコンテンツのサプライチェーンが最適化されます。

7.マーケティングから営業までつながる成果指標を定義する
営業によるコンテンツの利用率、コンテンツの収益貢献度などの指標で成果を常に計るようにします。

「7つのステップ」が目新しく見えないことには意味がある!

Highspot社の7つのステップをご覧になってどう思われましたでしょうか。

「組織論の話ばっかりで、特に目新しいことを言っていないんじゃないの」
「肝心なシステムの話が最後の方に一まとまりにされていて、期待外れ」
このように思われた方が多いのではないでしょうか。私も最初にこのリストを読んだときは「なんだか普通の話だなぁ」と感じました。

しかし、実はこの「一見当たり前の組織論の話を、導入実績が豊富なシステム会社がしている」「システムの導入までに5つものステップがある」ということが、大事なのではないでしょうか。

セールスイネーブルメントに限らず、B2Bの営業およびマーケティング部門にさまざまなシステムが導入されるようになっています。ただ、「システムを入れたけど、思ったような成果が出ない」「成果を出す前に使わせるだけで一苦労」という話も多く聞きます。そのような組織では、まるでシステムを「塗ればピタリと万病に効くガマの油」のようなものだと捉えているところが少なくありません。システムを入れる前に、きちんと責任者を置くことや業務内容を見直すこと、複数部門間で業務目標を連携させて協働の気運を高めること、といったことがなされていないのです。

そのように考えると、このHighspot社のリストは、
「システムを導入する前に、セールスイネーブルメントという観点で組織と業務を見直すこと」
の重要性を、強くわれわれに訴えかけているように思われてしかたがないのです。

システム導入ではなく、組織体制に関わる業務変革だと捉えよう

コンテンツマーケティングなどのWebマーケティングに取り組む企業が増え、日本のB2B営業現場でもコンテンツがあふれるようになりつつあります。また、コンテンツ以外にも提案書やカタログ、展示会など、効果を分析することで営業&マーケティング施策の効率化の余地があるものがたくさんあります。そして、少しずつではありますがセールスイネーブルメントのシステム会社が日本にも進出してきており、日本でもセールスイネーブルメントがB2B営業・マーケティングの大きなテーマとなる日も遠くはないように感じています。

その際には、今回見てきた「システムを導入する前に、セールスイネーブルメントという観点で組織と業務を見直す」、つまり「セールスイネーブルメントを単なるシステムの導入ではなく、組織体制に関わる業務変革だと捉える」という考え方が、きっと役に立つことでしょう。

また、セールスイネーブルメント以外にCRMやSFA、MAの導入・見直しを考えているという方も、「システムをどうするか」の前にそれぞれを業務だと捉えなおして、「組織体制」や「業務手順」、「部門間連携」という観点から課題や目指す姿を考えてみてはいかがでしょうか。新たに考えるべきことや決めるべきことが見えてくるはずです。

参考:「7 Steps to Getting Started with Sales Enablement」(Highspot)

投稿者プロフィール

寺島 孝輔
実際に現場で成果が出るまでお手伝いします。現場の力を引き出し、現場に新しいアイデアを加えることで、顧客から選ばれるビジネスへの変革を実現します。
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