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今年も残り1ヶ月。年末年始はどうしてもいろいろ忙しくなりがちですが、そんな中でそろそろ来期の計画作成もスタートされる時期ではないでしょうか。

現場の各部署の売上目標と同時にそれを実現させるための営業戦略をどう組み立ててもらうようにするか。営業企画部門の知恵の絞りどころです。

そこで今回のトライツブログでは、これからの営業戦略を考えていく上で大切なポイントについて解説したいと思います。ぜひ、皆さんの営業戦略立案の参考にしてください。

みんな知っているのにちゃんとやっていない?

異なる2つの切り口を縦横の座標として分析するマトリクス分析手法。既存顧客を対象にして、縦軸に「自社戦略における重要性」、横軸に「業績貢献度」にして、それぞれの軸の中央に区切り線を引き、4つの象限にわけることで、各象限に対しての大まかな方針や戦略を作ることができます。一次元に並べられた通常のリストではどうしても一つの方向から見ることになってしまいますが、この手法を使うことで複合的にビジュアル化して考えることにつながります。

私はこの手法で顧客、商談や商品を分析することをもう20年以上やってきましたが、これ以上にそれらをシンプルでわかりやすく、次のアクションにつながるように分析できる手法はないと思います。先日も複数のクライアントのプロジェクトで、ほぼ同時期に既存顧客を対象にしてこの手法をやってみたのですが、どちらも現在の顧客の全体像がどうなっているかを一目瞭然にすることができました。

そして同時に、メンバーの皆さんは知識としては当然ご存知だったのですが、実際にはやったことがないという反応がほとんどでした。
実は今回に限らず、マトリクス分析は皆さん知っているのにやったことがない、やってみたら初めてその本当の価値に気づくというものだったりするのです。

営業戦略=選択と集中という誤解

そんなマトリクス分析について何かの機会に詳しくご紹介すると、「こんなにきちんとはやっていないけれど、ベテランの営業担当者は頭の中でやっていますよ」などという答えが返ってくることが少なくありません。あるいは「わざわざ分析までしなくても、考え方だけを伝えておけば意識するでしょう」というような反応です。

そのような発言をされる方の多くは、営業戦略というとターゲット顧客を決め、その顧客をどう攻略するか考えることである・・・と考えておられることが多いように思います。その中でマトリクス分析はターゲットを決めるだけのものとして捉えています。
従って、わざわざ分析までしなくても、考え方を説明するだけで、各営業担当者が意識してターゲットを選定すれば良いと考えるのだと思います。

とは言っても、実際にターゲットを決め、そこに大幅な取引拡大を仕掛けようとすると、それなりに準備が必要ですし、上手く商談化できてから受注に至るためには営業担当者だけでなく、組織的な体制を作って「特別対応」をする必要も出てくるでしょう。
そこで必要なリソースは明らかに以前よりも多くなってきているように思います。そしてそれが意味するのは、「それ以外の顧客が手薄になる」ということです。それによって売上が下がってしまうというリスクがあるのですが、「そこは何とかするのが営業だろう」と社内の営業戦略ではフォーカスされません。
結果、苦労してなんとか特定の顧客に集中して競合のパイをひっくり返しても、手薄になった他の顧客で逆のことをやられて結果として全体ではあまり変わらなかった・・・ということが日常的に発生してしまうのです。

「良い営業戦略とは何か」から改めて考えてみよう

以前、営業担当者は「自社のロイヤリティーが高く、行きやすい顧客にばかり訪問する」などと言われました。その背景には「営業担当者は行きやすい顧客に過度に訪問している」とか「そもそも顧客の訪問が少ない」などいう考えがあったように思います。そこでもっと購買ポテンシャルの高い顧客に強制的に訪問させて、積極的に提案をすることで売上拡大しょうと考えていたわけです。

しかし、今の営業担当者の活動を見ていると、目の前の顧客の対応に手一杯で、行きやすい顧客にのんびり訪問している余裕もない・・・ということが多いように思います。
商談がそれだけ増えているというよりも、商談一つ一つに手間がかかるようになっている・・・いや、もっと正確に表現すると、それだけ資料を作ったり、社内で打ち合わせしたりと手間をかけることが習慣化しているということです。

そんな今の営業担当者に「集中化するターゲットを決めて攻略せよ」とやるとどうなるでしょうか。更に残業時間が増え、益々余裕のないことになってしまうでしょう。そんな中で行う商談はやっつけ仕事になりがちで、決して生産性の高いものではなくなってしまうのです。

これからは営業戦略としてしっかり考えないといけないことは、単に集中化の対象を決めるだけでなく、それ以外の顧客の売上を下げないようにどのようにして効率的に対応するか、もっとわかりやすく言うと、どう上手く手を抜くかということだと思います。
これは今の時代に合わせて営業戦略のあり方が変わっているということではないでしょうか。

営業戦略とはメリハリである

実は工数を減らしても売上を下げないようにするというのは、簡単なことではありません。先を読んで早めに手を打っておく、組織の力を上手く利用するなど知恵が必要とされるものだからです。
また、最近ではWebやコールセンターの活用など、営業担当者の訪問以外の手段も有効ですが、それもいきなり丸投げするのではなく、移行のシナリオが大切になります。

そこで、営業活動にどうメリハリをきかせるか。その視点で自社の営業戦略のあり方を見直してみてはいかがでしょうか。特定の顧客に選択と集中をするというのが「メリ」だとしたら、それ以外の顧客をどうするのかを考えるのが「ハリ」。その両方をしっかり考えてこそ良い営業戦略だと思うのです。
そんな中、マトリクス分析はただ考え方だけ意識するのではなく、しっかりデータを使って分析し、全体を見た上での実践的な戦略づくりができるので、これまで以上に有用性が高まっているように考えています。「知っている」を脱却し、「やっている」にステップアップしてみてはいかがでしょうか。

トライツではこのマトリクス分析を使った短期の営業戦略策定コンサルティングも行っています。ご興味のある方は下記よりお気軽にご相談ください。