マネジメント

営業活動の進捗は「顧客の購買プロセス」で測る

営業活動の進捗は「顧客の購買プロセス」で測る

営業プロセスマネジメント。これはかなり前から営業のマネジメントにおいて大切なことだと言われてきました。売上や利益といった結果数字だけをマネジメントするだけでなく、そこに至るまでに何をやったかというプロセスをマネジメントせよという考え方です。

確かに以前は顧客を訪問し、ただカタログを使って商品を紹介したり、買ってくださいとお願いをするのでなく、しっかりと顧客の要望をヒアリングし、提案書を作って提案を行うように営業活動を変革したい!という声が多くありました。そのために「ヒアリング」とか「提案」という行為を行っているかということをマネジメントすることは有効だったのです。

しかし、最近のB2B営業においては、顧客の課題をヒアリングし、それに合わせて何らかの提案行為を行うのは当たり前のことになりました。結果、わざわざその行為を「行っているか」という視点での商談の進捗度合いを測ろうとするマネジメントは大きな意味を持たなくなってきているのです。

そこで今週のトライツニュースでは、営業プロセスに代わって、営業をマネジメントするために大切な視点である「顧客の購買プロセス」について考えてみたいと思います。

営業プロセスではB2B営業の進捗を測れない!

B2Bではないのですが、「営業プロセス」と「顧客の購買プロセス」の分かりやすい例として、夫婦が車を買い替えるケースを題材にして見てみましょう。

旦那さんは今乗っている車が古くなってきましたし、最近発売された車の中に気に入ったものがあったので買い替えたいと思っています。旦那さんは何度もディーラーへと通い、実際に展示されている車を見たり、カタログを見せてもらったり、さらには試乗までさせてもらったのでますます買いたい気持ちが高まっています。参考までにと思ってディーラーの営業担当者に見積を出してもらったところ、キャンペーン期間中ということもあってかなり思い切った見積を出してもらってもいます。

しかし、残念ながらこの家で財布の紐を握っているのは旦那さんではありません。最終的に車を買い替えるかどうかを決めるのは奥さんです。そのため、旦那さんはこっそりとリビングに新車のカタログを置いてみたり、今の車に乗っているときに「この車も随分乗ったねぇ」と話してみたりと、奥さんの機嫌を探りながらどうにか車を買い替える方向になるように地道な努力を重ねています。

さて、皆さんならこの商談の進捗をどう見るでしょうか。

多くの方が「決裁者である奥さんに会えていないし、奥さんが買い替えるつもりがないから進捗しているとは言えない」と判断することでしょう。しかし単純に「営業プロセス」で見てしまうと、「試乗」「見積」まで進んでいることになるので、商談はかなり後半まで進んでいてあとは顧客の判断待ちということになってしまいます。

このケースのようなことはB2B営業の世界で、実によく起きています。顧客の担当者は提案に乗り気になっていて、提案書を一緒に作り直したり詳細の見積を作ったりしているものの、顧客の上司にはまだ話もできていない。上司がOKを出したとしても金額が高いので部長会や役員会といった場で承認を得なければならない。上記の夫婦の例で考えると、車を乗り換えるという意思決定がなされるまでに、奥さんの後にお姑さんのOKまでもらわないといけなかったりするということなので、商談としてはまだまだ期待できる状態にはないということになります。

これらの傾向は企業の購買に関する意思決定構造がとても面倒になったリーマンショック以降、とても強くなったように思います。結果、提案や見積といった自分達が何をやったかという「営業プロセス」では進捗を正確に測れなくなっているのです。

営業活動の進捗は「顧客の購買プロセス」で測る

では、いったい何を使って営業活動の進捗を測れば良いのか。その答えが「顧客の購買プロセス」です。

顧客の購買プロセスとは、顧客が問題や課題に気付くところから社内でコンセンサスを得て購買の意思決定をするまでの過程をプロセスに分解・整理したものです。この考え方で、先ほどの車を買い替えるケースを整理するとどうなるでしょうか。
「①旦那さんの要望顕在化」→「②仕様の具体化」→「③奥さんの意欲喚起」→「④奥さんとディーラー訪問」→「⑤奥さんと試乗」→「⑥条件交渉」→「⑦購入」
という7つのプロセスになるはずです。そして、ディーラーの営業担当者からするとこの商談はまだそのうちの2つ目のプロセスまでにしか進んでいないということになります。進捗度合が7分の2というのは私にはちょうどよく感じられます。

注意点:顧客の購買プロセスと営業行為は独立した関係!

このように顧客の購買プロセスで営業活動の進捗を測ろうとするとき、陥りがちな落とし穴があります。それは、既存の営業プロセスから顧客の購買プロセスを推し量ろうとすることです。

例えば、営業プロセスが
「訪問の準備」→「課題ヒアリング」→「提案」→「見積提示」→「提案後フォロー」→「受注」
となっていて、顧客の購買プロセスを
「課題顕在化前」→「課題の顕在化」→「情報収集」→「比較選定」→「稟議・意思決定」→「発注」
としたとしましょう。

顧客の現場担当者から商談が始まって、受注するためには顧客のトップ層で意思決定をしてもらわなければならないような営業の場合、顧客の購買プロセスの各段階で提案と見積を繰り返すということがよくあります。現場の担当者の関心を惹くために、早いタイミングでボクシングのジャブのような汎用提案と仮見積を出す。相手が乗り気になったところで、中身を詰めていきながら提案と見積を作り直す。現場の担当者からOKをもらったうえで今度は社内説明用に提案書を見直し、最後は稟議書の付属資料として提案書と見積を改めて出し直す。

これを営業プロセスで見ると、「提案」と「見積提示」を何度も繰り返していることになりますが、顧客の購買プロセスで見れば、確実に「課題の顕在化」→「情報収集」→「比較選定」→「稟議・意思決定」へと進んでいることがわかるでしょう。

大事なのは、「営業プロセスと顧客の購買プロセスは独立した関係であり、それぞれを見ることで適切に状況を掴むことができる」ということです。「提案しているのだから、きっと相手は情報収集プロセスにいるはずだ」「見積まで進んだから、比較選定プロセスまで進んだはずだ」などと営業プロセスから顧客の購買プロセスを推し量ってはいけません。実際に顧客がどんな状況にあるのかは聞かないとわからないですし、そこを意識した活動をすることに意味があるのです。

B2B営業の進捗は「顧客の購買プロセス」で測ろう

今回のトライツニュースでは、営業プロセスではなく顧客の購買プロセスを使って営業活動の進捗を測ることの大事さと、その考え方について見てきました。SFAや営業会議などで営業の進捗を測るとき、現在使っている営業プロセスではうまく進捗を掴めないような場合は、「顧客の購買プロセス」という考え方が有効です。ぜひ今回の記事を参考にして「自社の顧客の購買プロセスはどうなっているのか」を考えてみてください。

投稿者プロフィール

寺島 孝輔
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