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前回のトライツブログ「米国に学ぶ!セールスイネーブルメントの活用法と主なシステム」では、海外で急成長し、最近は日本でも耳にすることが増えた「セールスイネーブルメント」について、米国でどのようなシステムが出てきているのかをご紹介しました。

とは言え「システムが色々あるのは分かったけど、成果は出ているの?」「日本のB2B企業でも取り入れたら上手くいくの?」と思われている方もいらっしゃることでしょう。
そこで、今回のトライツブログでは、セールスイネーブルメントの成功例と、これに取り組むにあたっての大事な考え方をご紹介します。

あらためて「セールスイネーブルメント」とは?

本題に入る前に、「セールスイネーブルメント」という言葉を初めて目にしたという方のために、簡単におさらいをしておきましょう。

セールスイネーブルメントとは「営業活動改善のための一連の取組で、各種営業施策をトータルでデザインし、それぞれの施策のパフォーマンスを数値化して管理すること」です。米国ではこの中でも、特に最近のWebマーケティングやオムニチャネル・マーケティング(WebサイトやSNSなど、複数のチャネルを使ってマーケティング活動を行うこと)の隆盛によって、社内に大量にあふれるようになった営業コンテンツを管理するシステムが様々な企業によって開発・販売されています。

それでは、どのような企業がセールスイネーブルメント・システムを導入し、どのような成果を上げているのか、米国での事例を2つ見てみましょう。

事例1:あふれるコンテンツの山から最適なものを自動で抽出

法人向けに業務支援システムを販売・提供しているA社は、全世界で5,000名近くの従業員を抱え、世界シェアのおよそ10%を押さえている大企業です。

このA社の営業チームは、あふれかえるコンテンツの山の中に埋もれていました。営業担当者が使用するコンテンツの種類は、なんと1,000種類以上。そのため顧客に合わせたコンテンツを探し出すのは一苦労。そのため、営業現場ではコンテンツ探しに膨大な時間が費やされたり、最新のものではないコンテンツが使いまわされたり、営業担当者が勝手に会社の方針とは異なるコンテンツを作ってしまったりと、混乱を極めていました。

そのような状況を打開するために、セールスイネーブルメント・システムが導入されました。A社が導入したシステムの最大の特長は常に進化を続ける機械学習システム。顧客のプロフィールと営業活動の段階に合わせて、最適なコンテンツが選ばれるようになっています。また、コンテンツを営業の成果と組み合わせて管理できるようになったことで、誰もが常に最新のコンテンツを見られるようになったのみならず、それぞれのコンテンツの有効性を客観的に評価することができるようになりました。

その結果、A社では一人の営業担当者がこれまで1週間に4時間以上も費やしていた、社内のコンテンツを探す時間がゼロになりました。営業担当者が世界中で1,000人いるので、時間削減効果だけでもかなりの成果を上げることができたということです。コンテンツの効果測定は「まだこれから」とのことですが、コンテンツを継続的に評価・改善するプラットフォームを構築できる環境をA社は手に入れました。

事例2:コンテンツという観点から営業教育プログラムを効率化

病院や研究所・学校向けに医療機器を開発・販売しているB社もA社と同様に、営業担当者が大量のコンテンツの中から自分の欲しいものを見つけ出すのに苦労していました。セールスイネーブルメント・システムを導入して、最適・最新のコンテンツを営業担当者が簡単に手に入れられるようになった、ということではA社とまったく同じなのですが、B社はセールスイネーブルメント・システムを使って面白い取組をおこなっています。

それは、営業教育プログラムの管理。営業担当者を育成するのに使われているコンテンツを一元管理して学習の成果でスコアリング・評価することで、営業担当者の教育を効率化することができ、育成に要する時間を短縮することができたそうです。

このように、営業教育という観点でコンテンツを管理するのは非常に面白い取組だと思います。

セールスイネーブルメント導入の成功に不可欠な「実務上の必然性」

この2つの事例に共通しているのは、営業現場が大量のコンテンツを前にして途方に暮れていた、ということです。前回のトライツブログでも強調していたことですが、セールスイネーブルメントという考え方やシステムは、このような実務上の必然性から生まれてきたものなのです。

そのため、逆説的な表現になりますが、セールスイネーブルメント・システムの導入を成功させるためには、「コンテンツが多すぎて目当てのものを見つけられない!」「管理しきれない!」というセールスイネーブルメント・システムが必要不可欠な状態になっていなければならない、ということになります。そのようになっていない中で「最近話題になっているから」と導入してみても、なかなか成果にはつながらないことでしょう。

自社の「営業コンテンツ」を見直すことから始めよう

最近話題になりつつある「セールスイネーブルメント」。大事なのは、流行の言葉だからと安易に飛びつくのではなく、実務上の必然性に基づいて導入を判断するものだということをきちんと理解することだと思います。

日本のB2B企業の中にも、コンテンツマーケティングやマーケティングオートメーションを取り入れているところが増えてきています。そのような企業ではきっと近い将来に、増大し続けるコンテンツをどう管理するか、営業担当者がその中からお目当てのコンテンツを探し出す時間をどう短縮するか、という課題に直面することになるでしょう。そのような状態になれば、セールスイネーブルメント・システム導入の準備ができた、と言えます。

また、コンテンツマーケティングなどを導入していない企業でも、大量のカタログやチラシ、事例集や商品別の提案書など、数多くの営業コンテンツがあふれかえっていて、十分に管理されていない営業現場はたくさんあります。そのような企業でも、セールスイネーブルメント・システムはきっと有効に働くことでしょう。

「自社の営業はどれだけのコンテンツを使っているのか」
「コンテンツは適切に管理されていて、最新のもの/欲しいものがすぐに見つかるようになっているか」
営業コンテンツという観点で自社の営業活動を見てみることが、セールスイネーブルメントについて考える第一歩になるでしょう。

これからはこのセールスイネーブルメントに加え、バイヤーイネーブルメントと言うキーワードも注目されていくことになると思われます。これらのキーワードについて詳しく知りたい!、自社でもセールスイネーブルメント・バイヤーイネーブルメントに取り組んでみたい!とお考えの方は下記よりお気軽にお問い合わせください。