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先週のトライツブログでは顧客がお目当ての企業を見つけるまでに12回ものWeb検索を行っているという海外のレポートを題材にして、Web時代の新しい購買プロセスの中で営業担当者が果たすべき役割について考えました。

今週は後編として、Web時代のB2B営業プロセスのポイントについてご紹介しましょう。

Webサイトは24時間オープンしている展示会の自社ブースである

インターネットがない時代、B2Bの顧客が効率的に購買のための情報収集を行う最もポピュラーな手段は展示会に行くことでした。展示会会場をウロウロし、いろいろなブースで話を聞きながら情報を集めるわけです。

そこでは期待していた展示物があったにも関わらず、説明員の説明がわかりにくく候補から外れてしまうとか、逆に何気なく入ったブースでとても面白い話を聞くことができて、その場で訪問のアポまで入れてしまうとか、顧客は情報収集しながら、次のアクションにつなげる相手を選別することをやっていました。

先週のトライツブログでお伝えした平均12回の検索は、これがWebサイトの中で起こっていることを意味しています。顧客は展示会をウロウロするのと同じように、インターネット空間をウロウロしているのです。

では、そこで顧客はWebサイトのどこを見ているのでしょうか。先週もご紹介したBusiness 2 Communityの調査記事「Understanding the Modern B2B Sales Process」にとても興味深いWebサイトの6つの要素が紹介されています。

1.Webサイト内の検索/ナビゲーションツール
2.独自性、先進性、専門性のあるコンテンツ
3.コンテンツの見つけやすさ
4.売り手ならではのコンテンツ
5.価格や他社との比較情報の見つけやすさ
6.顧客の業種/業界との親和性

これらはどれも重要だとされているものなので、たとえ一つのユニークなコンテンツに検索エンジン経由でたどり着いたとしても、サイト全体の構成がわかりにくかったり、他に有効なコンテンツが見当たらなかったりすると、顧客はすぐに離れていってしまうということを意味します。

「面白い情報だな」→「我々の業界にも詳しいんだな」→「いろいろ新しいこともやっているぞ」→「他社と比べるとここが特徴的なんだ」→「一度詳しく話を聞いてみるか」など顧客の中での心理変化を促すようなわかりやすい作りになっている必要があるということです。

このようなデータを見ていると、Webサイトは「目立つ展示物があって、優秀な説明員のいる展示ブース」のようになっていることが重要だとわかります。顧客が何らかのことをきっかけにして興味を持ち、そこから話をしていく中で、次に会ってみようという気持ちにまでなっているということです。

もし、あなたの会社の展示会のブースが、商品紹介の展示ボードが並んでいるだけで、説明員が誰もいないガランとした寂しい状態だったらどうでしょうか。きっとそんなことをしたら営業のトップに激怒されるでしょうが、Webサイトがそんな状態になっていても誰も問題視しないということが少なくないように思います。

Web時代のB2B営業プロセスは最初に相手の話を聞くことから始まる

Business 2 Communityの調査記事「Understanding the Modern B2B Sales Process」ではこれからのWeb時代の営業担当者が行う営業プロセスを次のように定義しています。

1.見込み客の選定
2.見込み客へのコンタクト
3.見込み客の調査/理解
4.商品/サービスの説明
5.デモ/トライアル
6.クロージング

ここで特徴的なのは「商品/サービスの説明」よりも「見込み客の調査/理解」が前にあることです。つまり「自社商品の売り込み」よりも「顧客のことを理解すること」が先ということであり、Webサイトによって顧客がある程度自社について情報収集を行っていることが前提になっていると思われます。これは展示会で興味付けに成功し、アポを取った顧客へのフォロープロセスと共通しています。

そこでまず大切なことは顧客が自社の商品/サービスについて正しく理解しているかということではなく、何はともあれとにかく自社に興味を持っているということです。従って、顧客は自身の情報を話そうというモチベーションが掛かっていますし、それをしっかり聞いた上で、相手に合わせて自社の話をするという流れが重要になるのです。

それにも関わらず一般的な自社の紹介をダラダラと行って顧客を飽きさせてしまったり、余計な情報提供によってあまり重要ではないことに引っかからせてしまったりしてしまったら、逆効果にしかなりません。「まずはしっかり自社の紹介を・・・」と考えている営業担当者の固定概念を壊す必要があるでしょう。

Web時代の営業は決して難しくはない

展示会では話をした顧客から名刺をいただくとか、粗品と引き換えにアンケートに記入してもらって、顧客の情報を入手することができます。

これと同じことをWebサイトでやろうとすると、メールマガジンに登録をしてもらうとか、ホワイトペーパーと呼ばれる顧客の仕事に役立つ冊子をダウンロードしてもらう際に氏名やメールアドレスなどの情報を入力してもらうことになります。このようにして自社に興味を持ってくれる顧客を特定しているわけですが、ここのハードルが高いのが現状です。

対策としてはいろいろなやり方がありますが、大前提として「相手に名乗ってもらうためにはまずこちらが名乗る」ことだと思います。その分野に詳しい社員が自分の名前でコンテンツを出すのです。これは展示会で自分の名札を付け、かつ顧客に先に自分の名刺を渡してから相手の名刺をいただくのと同じことです。

Web時代の営業プロセスなどというとつい難しいもの、わからないものだと思いがちですが、展示会の会場が凄く広くなって、いろんな人がウロウロするようになっただけと考えれば、そこで何をしないといけないのか、その後のフォローはどうすべきか、イメージできるのではないかと思います。

参考:
「Understanding the Modern B2B Sales Process」(Business 2 Community, June 13, 2017)