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2016年は世の中を「AI(人工知能)」という言葉が席捲した年でした。囲碁対戦AIの「AlphaGo」がプロ棋士に勝利したり、「人工知能に奪われて消える仕事」が話題になったりしたのは記憶に新しいことでしょう。

B2B営業・マーケティングでも、AIの活用が始まっています。特に大きな出来事としては、昨冬にSalesforceがEinsteinというAIを活用したプラットフォームサービスの提供を開始したことが挙げられるでしょう。いよいよB2B営業・マーケティングでもAIの活用について真剣に考えなければならなくなってきました。

このようにテクノロジーはどんどん進化を続け、AIやビッグデータのような新しいキーワードが常に生まれてきています。それでは、AIの次に来るテクノロジーはなんでしょうか。

今回のトライツブログでは、B2B営業・マーケティングにおける10の新テクノロジーを確認することにしたいと思います。

B2Bマーケティングで注目される10の新テクノロジー

アメリカの大手調査会社Forrester Research社が最近発表した「The Top Emerging Technologies For B2B Marketers」。世界各国のビジネスリーダー合計1,072人を対象に実施された調査の中から、B2Bマーケティングで注目されつつある新テクノロジーを10個ピックアップしたものです。非常に示唆に富む内容ですので、それぞれのテクノロジーの概要をご紹介します。英語が得意な方はぜひオリジナルもお読みいただければと思います。

テクノロジー①:マーケティング効果を分析&予測する「アトリビューション」

マーケティングにおいても投資対効果の追求は不可欠です。アトリビューションとは顧客との各種コンタクトが収益に及ぼす影響を測定・分析し、最適なコンタクトの仕方を統計的な手法で算出するというもの。CRMやMAへの活用が期待されていて、マーケティング施策の最適化を実現できるようになると言われています。

テクノロジー②:相手に合わせてコンテンツを自動生成する「コンテンツ・インテリジェンス」

顧客に合わせてマーケティング施策をカスタマイズするのは当たり前。コンテンツ・インテリジェンスは事前に入力しておいたコンテンツの要素となる情報をもとに、閲覧者の属性(業界、購買における役割、購買ステージ)などに応じてコンテンツを自動生成するというもの。MAやABM(アカウント・ベースド・マーケティング)への活用が期待されています。

テクノロジー③:複数の顧客データを統合する「カスタマー・データ・プラットフォーム」

自社CRMにSNSデータや外部顧客情報など、顧客の情報源は複数にまたがるようになってきています。カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)は、複数の顧客データを精度高く統合するテクノロジーで、これにより履歴データや趣味嗜好、現在の関心事項など顧客を様々な側面から分析してマーケティング施策を打てるようになります。

テクノロジー④:既存客の口コミを新規獲得に活かす「アドボカシー・プラットフォーム」

アドボカシーとは顧客からの好意的な口コミや評判のこと。それを高めることが長期的な利益につながるというのがアドボカシー・マーケティングというもので、Forreste社によると欧米のB2Bマーケティング担当者の3割が取り組んでいるそうです。アドボカシー・プラットフォームを使うことで、既存顧客からのアドボカシーを集約し、それぞれのアドボカシーを見込み客の購買ステージや関心度合に合わせて提供できるようになります。

テクノロジー⑤:顧客対応を自動化する「インテリジェント・エージェント」

AIを活用することで、人がやっている仕事を自動化することができるようになります。インテリジェント・エージェントは、営業担当者やマーケティング担当者の仕事のうち顧客や見込み客とのやり取りを、メールやチャット、音声認識テクノロジーを活用した電話対応などで自動化するものです。様々な分野での活用が期待されていますが、普及のためには人工物に対して感じる「不気味の谷」の克服と、価格の下落がカギだとForrester社は考察しています。

テクノロジー⑥:顧客に合わせた動画を自動生成する「パーソナライズド・ビデオ」

動画データがマーケティングや営業で活用されるようになっています。パーソナライズド・ビデオとは、その動画を相手の名前や位置情報などに合わせてカスタマイズしたり、相手の反応や選択によって次に見せる動画を変えたりするテクノロジーです。また相手の反応自体をマーケティング・データとして活用することもできます。

テクノロジー⑦:顧客に合わせたWeb広告を自動生成する「プログラム化広告ソリューション」

プログラム化広告ソリューションは、特定のターゲット顧客向けにカスタマイズ化されたWeb広告を提供できるようにするテクノロジーです。このテクノロジーの主な活用先は米国で今流行のABM(アカウント・ベースド・マーケティング)ですが、現在はインバウンド・マーケティングにその座を奪われてしまっているアウトバウンド・マーケティングが、このテクノロジーで息を吹き返す可能性があるとForrester社は予測しています。

テクノロジー⑧:商品やサービスを感覚で理解させる「VRとAR」

VR(仮想現実)とAR(拡張現実)も注目されつつあります。すでに重機メーカーや建設業者が、VRやARを商品のデモンストレーションやレイアウト案の共有ツールとして使用しています。将来は、商品カタログなどの印刷物や商品サンプルなどが、VRやARに代わるということも想定されます。

テクノロジー⑨:複数接点での顧客情報を統合する「アイデンティティ・レゾリューション」

カスタマー・ジャーニーが注目されることにより、企業は様々な接点で顧客と接するようになっています。しかし、オンラインにオフラインと接点の種類が増えてくると、そこで対応している顧客を識別して名寄せする必要が生じます。アイデンティティ・レゾリューションとは、複数の接点での顧客情報を1つの顧客プロファイルへと統合するテクノロジーです。

テクノロジー⑩:商品の利用データをリアルタイムで把握する「IoT」

IoT(モノのインターネット)は生産や管理といった領域ですでに実用化されていますが、マーケティングの領域ではまだまだ未開拓のテクノロジーです。商品をインターネット接続することで、顧客内での商品の利用データを自動的にかつ大規模に集められます。このデータを活用すれば、利用者の次の行動の予測や、利用状況に合わせた顧客フォローができるようになります。

統合化・最適化・自動化で「顧客執着型マーケティング」を実現する

これら10のテクノロジーを改めて俯瞰すると、「統合化」「最適化」「自動化」といった言葉が頻繁に出てきていることが分かります。さまざまな情報源で生じるデータをできるだけ集めて「統合」して活用する。統計モデルなどを用いて「最適」なマーケティング施策を導き出す。マーケティング施策の設計から提供をできる限り「自動」的かつ効率的に実施する。

そして、この「統合化」「最適化」「自動化」の究極的な目的は、もっと顧客に合わせてもっと顧客に適したマーケティングにしようということ。この強い顧客志向について調査の中では「Customer Obsessed Marketing」と呼んでいます。Obsessedとは「取りつかれた」などの意味がありますが、あえて和訳するなら「顧客執着型マーケティング」となるでしょうか。この徹底した顧客志向を実現するのが今回紹介した10のテクノロジーなのだと言えるでしょう。

さらに加速するテクノロジーの変化に目を向けよう

もちろん、今回ご紹介した10のテクノロジーのすべてが、今のAIのように花開くわけではないでしょう。3年後、5年後のB2B営業・マーケティングの世界では当たり前になっているものもあれば、そうでないものもあるはずです。しかし、WebやAIにより技術革新のスピードがさらに速くなってきている現在、テクノロジーの変化に定期的に目を向けることは非常に大事なことであると私は考えます。

出展:「The Top Emerging Technologies For B2B Marketers」(Forrester Research, April 6, 2017)

 

これからもトライツブログでは、B2B営業やマーケティングに関する最新のテクノロジー、話題のテクノロジーについて継続的にウォッチしていきます。B2B営業を取り巻く環境変化について学ばせたい、という方には定期的に開催しておりますセミナーやそれをもとにした個別勉強会のサービスもございます。ご興味のある方はお気軽に下記よりご相談ください。