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見込客にとって価値のある情報(コンテンツ)を提供することで、見込客を引き寄せて関係性を深め、購買を促進するコンテンツマーケティング。最近とみに書籍が増え、日本でも知名度が高まっています。アメリカでは、MozConやB2B Content2Conversion Conferenceなど、B2Bのコンテンツマーケティングに絞ったカンファレンスが開催されており、B2Bマーケティング分野の中で一大勢力を築いています。

とは言えコンテンツマーケティングを導入しようにも「どんなコンテンツを作れば良いのかがよく分からない」という企業も多いのではないでしょうか。そこで今回のトライツブログでは、海外の調査データをもとに「コストパフォーマンスの高いコンテンツの種類」について考えてみたいと思います。

調査レポート:コストパフォーマンスが高いのはどのコンテンツ?

アメリカのB2Bマーケティング分野の調査会社Ascend2社が実施しした「2016 State of Content Marketing Survey Summary」。その中に、実際に作成しているコンテンツの種類ごとに「最も有効(Most Effective)だと思っているもの」「最も難しい(Most Difficult)と思っているもの」を並べることでコストパフォーマンスを比較することができる面白いデータがありましたので、以下に転載します。

図1

出典:「State of Content Marketing Survey, Ascend2 and Research Partners, June 2016」

データ内で使われている用語を簡単に確認しながら、傾向を見ていくことにします。

Research reports」は、自社独自の調査結果や調査データです。市場の規模や他の顧客が関心を持っていることなどを定量的に把握することができますし、B2B購買担当者としては社内で説明できるデータが集まるので「最も有効」の割合が多いのも納得です。ただ、その代わりにアンケートを取るなどの大変さもあります。

Blog posts」は主に個人としての独自性ある見解やアイデアを文章形式でまとめた、ブログ記事のことです。他社では得られない貴重なアイデアがあることもありますので、調査データの次に「最も有効」の割合が多くなっています。また、他のコンテンツに比べて作成の難しさというハードルは低くなっています。

Videos/podcasts」は、ブログや対談、デモンストレーションなどを動画や音声形式で作成したもののことを言います。その中でもWeb上で配信するセミナーのことを「Webinars」(ウェビナー)と呼びます。動画が主体となるこれらのコンテンツは、「有効」よりも「難しい」が大きく上回っており、作成の手間に比べて効果を実感できないマーケティング担当者が多いようです。

News/articles」は会社としての最新情報などを文章形式でまとめたニュース記事で、その記事を複数まとめたものが「Newsletters」(ニュースレター)になります。これらもブログ記事と同様に作成の難しさは低いスコアにとどまっていますが、「有効」の面ではブログ記事よりもスコアがやや低くなっています。

Infographic」(インフォグラフィック)は調査レポートなどを、最小限の文字で視覚的に分かりやすくまとめたものです。調査レポートよりも作成の「難しさ」は低いものの、「有効」のスコアも低くなっています。

コストパフォーマンスは高いが、導入・運用は意外と難しいブログ記事

この調査データを見ると、コストパフォーマンスが高いのは圧倒的にブログ記事だということになります。確かに、調査レポートの作成には数週間から数か月の準備が必要になりますし、動画の撮影・編集には会場以外にも照明・カメラなどの専門スタッフの手配が必要です。それらと比べればブログ記事は圧倒的に低コストで作ることができます。

ただ、ここで注意しなくてはならないのは、ブログ記事のパフォーマンスは完全に個人に依存してしまう、ということです。書き手個人のアイデアが独創的で面白いか、その文章が読みやすいかによってコンテンツのクオリティが決まってしまいます。また、その人が定期的に記事を作成できるだけの時間的な余裕を作れていないと、コンテンツマーケティングとして成立しなくなってしまいます。

だからと言って、安易にコンテンツを外注して「どこにでもあるような記事」を自社HPに並べても意味がありません。そのような記事では、顧客から価値を認めてもらえて、自社との関係性を高める助けにはなりません。あくまでもオリジナルのコンテンツでなければ、意味がないのです。このように見ると、ブログ記事を使ったコンテンツマーケティングは簡単なようでいて、意外と難しいものなのです。

もう一つ、日本の大企業でブログ記事を使ったコンテンツマーケティングが難しい理由があります。それは、個人の(やや尖ったような)見解を会社の記事としてアウトプットすることに対する、抵抗感とでも言うものです。会社として出すからには、見解があまりに過激だったり極端だったりする記事は出しにくい。そうなると、書き手の個性がなくなってしまい、会社名で出すニュース記事となんら変わらない、当り障りのないものになってしまいます。

実は日本の大企業向き?調査レポ―トというコンテンツ

そのように考えると、実は日本の大企業にとってコストパフォーマンスが高いコンテンツは「調査レポート」なのではないかと思えるのです。アンケート設計から調査の実施、レポート作成までを一貫して受託するリサーチ会社に頼むこともできますし、最近はWeb調査サービスの価格も随分安くなっていますので、アンケート設計やレポート作成をできる人が社内にいるなら、安価に自前中心で済ませることもできます。大企業の名前があれば箔も付き、毎年定期的に実施できれば考察の幅も広がるので、毎年一定のマーケティング予算を持っている大企業ほど取り組みやすく、有利なコンテンツであると言えます。

トライツのHPには、閲覧者がHP内のテキストをコピーしたときにどこがコピーされたのかが分かるプラグインを入れています。それを使ってトライツブログの中でどのようなテキストがコピーされるのかをウォッチしてみたところ、多くコピーされているのは次の3つの情報だということが分かりました。

  • 定義・解説:新しい言葉や用語を定義・解説した部分
  • 数字データ:調査レポートの数字データ
  • 処方箋:課題に対する打ち手のアイデア

コンテンツの中で読み手にとって興味があり、「何かに使おう」と思われやすいこの3つの情報のうち、「定義・解説」や「数字データ」は調査レポートと親和性が高いものでもあります。このような体験からも、調査レポートはコンテンツとして非常に有用だと思います。

コストパフォーマンスという観点で自社に適したコンテンツを考えてみよう

コンテンツマーケティングは徐々に知名度を高めていますが、まだ浸透しているとは言えません。その理由には「投資対効果があるか見極めたい」「自社でできる運用の仕方を考えたい」とったものの他に、「動画マーケティングなど色々と言われているが、その中で自社に適したコンテンツが何か分からない」というものもあるように思います。

今回ご紹介した調査レポートはアメリカのものではありますが、「コストパフォーマンス」という観点でコンテンツの種類を評価した珍しいデータです。「自社に適したコンテンツはどんなものなのだろう」と考える際の参考にしてみてください。

 

参考:Ascend2「2016 State of Content Marketing Survey Summary」