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営業マンが使いこなすべき「お客様に失礼だブレーキ」とは

営業マンが使いこなすべき「お客様に失礼だブレーキ」とは

「人に嫌われたい!」という人はなかなかいないでしょう。誰しもが、できることなら嫌われずに生きていきたいと思うものです。今月からテレビドラマ化もされている「嫌われる勇気」(岸見一郎・古賀史健、ダイヤモンド社)がベストセラーになったのも、嫌われたくないという多くの人の強い思いの裏返しなのかもしれません。

これはビジネスの世界でも同じです。この嫌われたくないという思いが言葉になっているのが、B2B営業でよく耳にする「そんなことを言うなんて/聞くなんて/するなんて、お客様に失礼だ」ではないでしょうか。

今回のトライツニュースでは、この「お客様に失礼だ」について考えてみたいと思います。

気配りにも言い訳にもなりうる「お客様に失礼だブレーキ」

この「お客様に失礼だ」という発言。営業としてお客様に言いたいことや聞きたいこと、したいことはあるけれど、それを実行してしまったらお客様の心証を害してしまうだろうという判断であり、その人なりの価値基準でもあります。

この判断にはその人のこれまでの実体験や、人から受けたアドバイスや本で読んだことなどが反映されています。本来的には、顧客対応の迅速化や顧客との親密な関係作りなどに役立つものですし、人間関係に欠かせない気配りでもあります。しかしこれが行き過ぎてしまい、極端な言い方をすると「お客様に失礼だ」がやるべきことをやらない言い訳になってしまっている、という状況を目にすることもよくあります。営業マン個人がこれまでの経験から作り上げ、頭の中にたくわえている「お客様に失礼だブレーキ」は気配りにも言い訳にもなりうるものです。

「お客様に失礼だブレーキ」の踏み方で顧客対応が変わる

例えば、顧客の担当者と商談を進めているところを想像してください。顧客の課題ややりたいことを確認した上で最適な提案を出しており担当者からもOKをもらっているのですが、決裁者である上司になかなか話をしてもらえていません。どうも担当者は他の業務が忙しいことにかこつけてほったらかしにしている様子。けれども顧客の業績改善につながる大事な提案なので、顧客のためにも早く導入の意思決定をしてほしい。

このような場合、「顧客の上司に直接アポイントを取って話を進める」と「担当者を継続してフォローする」という2つの選択肢がすぐに思いつくことでしょう。

ここで、「お客様に失礼だブレーキ」を強く踏むと、「すっとばして上司に連絡したりすると、担当者がへそを曲げてしまうのでは」「その結果、この商談が上手くいかなくなるのでは」「それどころか、これまで築いてきた良好な関係自体が崩れてしまうかも」と考えて、担当者の機嫌を損ねないように継続してフォローすることになるでしょう。

一方、そのブレーキを緩めると「顧客のメリットをトータルで考えれば、意思決定の時期を早められることが最優先だ」「担当者の人も最初は機嫌を損ねるかもしれないけど、分かってくれるはず」と考えて顧客の上司にすぐにアポイントを取るのではないでしょうか。

営業スタイルによって「お客様に失礼だブレーキ」の緩め幅が異なる!

どちらの選択肢を選ぶのかは、「どちらが顧客のためになるか」や「顧客との関係を長い目で見て大事なことは何か」という観点からやるべきかどうかを天秤にかけ、どこまで「お客様に失礼だブレーキ」を緩めるかを判断するしかありません。

どこまで「お客様に失礼だブレーキ」を緩めるかについて、営業スタイルの観点で考えてみることにしましょう。

化学品原料や薬品、OA機器等のコモディティ化していて商品ごとの差がほとんどない商品を扱っている「売り込み型営業」や、納入仕様が厳密に決められている「入札対応型営業」の場合は、往々にして「前々からよくしてくれる」「気分よく話ができる」いわゆる可愛げがある営業マンの方に注文がいくものです。

このような場合に営業マンが顧客に諫言しても、顧客の不興は買うものの顧客にとって提案内容が大きく変わるということはありません。そのため、この営業スタイルでは顧客に嫌われないように「お客様に失礼だブレーキ」を強めに踏んでおく方が、顧客との長期的な関係から見て得策であることが多いのです。

それに対し、「ソリューション型営業」や「コンサルティング営業」の場合、顧客が現在直面している問題や課題を明らかにするところから商談が始まります。また、これまでに購入したことがないようなものを購入してもらう場合は、顧客に買い方を指南しなくてはなりません。たとえ顧客にとって耳が痛く、失礼なことであっても臆さずに専門家として意見を言わないと、お客様にとって最適な提案を考えられず、購入してもらうこともできません。「お客様に失礼だブレーキ」を相当緩めないと、顧客がやりたいことを実現できないのです。

こう考えると、「お客様に失礼だブレーキ」をどこまで踏むのか/緩めるのかを判断するには、自分たちがやっている営業活動がどのようなスタイルなのかを意識することも必要なことが分かります。

そのブレーキは本当に正しい?過去の経験から無意識のうちに反応していないか

しかし、実際の営業活動を見ていると、どうもこの「自分たちの営業スタイルを意識しつつ、『どちらが顧客のためになるか」という観点から選択肢を天秤にかける」ということをする前に、条件反射的に「それは失礼だろう」と判断してしまっていることが多いように思われるのです。「失礼なことだし、顧客のためにならないから」ではなく、今までの経験をもとに「これまでやったことないから/考えたことないから、そんなことはやるもんじゃない」というようにしっかり考えないままにブレーキを掛けてしまっているのです。

このような状況は、以前は売り込み型だった営業マンがソリューション型やコンサルティング型の営業をやるようになった時によく起こります。営業マン個人が以前の営業で培ってきた経験値や価値基準で判断してしまい、本当は顧客と自社のためになることなのについ尻込みしてしまうのです。実はトライツが営業現場を支援するとき、かなりの時間を「お客様に失礼だブレーキ」を緩めることに使っています。

一度立ち止まって、自分の「お客様に失礼だブレーキ」を確かめてみよう

10年ほど前から研修等でブームになっているアサーション・トレーニング(自他をともに尊重しつつ、自己主張ができるようになる考え方・手法の訓練)など、お客様に対して言いにくいことをどうやって言うか、という手法はいくつも開発されており書籍や研修という形で学習できるようになっています。

しかし、そういった手法を活かせるようになるためには、そもそも自分が無意識のうちに踏んでしまっている「お客様に失礼だブレーキ」自体に気づき、それが本当に適切な判断なのかどうかを「顧客と自社のためになるのか」という点から確かめなければなりません。

今度、営業会議や社内の打合せの中で「それは顧客に失礼だ」と思ったとき、一度立ち止まってその反応が適切な思考の結果なのか、これまでの経験から生じている条件反射的なブレーキなのかをご自身で確かめてみてください。自分がついしてしまっている反応とその理由について考えを深めることで、もっと顧客の役に立てるコミュニケーションの取り方を見つけられるかもしれません。

投稿者プロフィール

寺島 孝輔
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