この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

営業企画など営業支援の仕事の中には他社の成功事例や、SFAやCRM、Webマーケティングなどの新しい考え方、しくみに関する情報を手に入れ、営業現場に発信することがあると思います。具体的には、自分達で資料を作成し、自ら社内セミナー講師をやったり、外部から講師を招いたりして「新しいことを学ぶ場」を提供しておられることでしょう。

そんなときに、必ず「参考にならなかった」という反応をする人がいます。今回のトライツブログでは、そんなありがちな反応にありがちな反応をしてオシマイにするのではなく、もっと組織としての学びに活かそうということを考えてみたいと思います。

アンケートをムダにしていませんか?「参考にならなかった」は企画部門が学ぶ貴重なチャンス

社内で研修などの学習の場を提供すると、きっと終了後にアンケートを実施されることでしょう。
結果を集計し、「“大変参考になった”と“参考になった”を合わせると全体の8割だった」などというようにして実施したことのまとめが行われます。主催者にとってとても嬉しい瞬間です。
ただ、それで「ヨカッタ!ヨカッタ!」としてしまっていては、企画部門が学ぶ機会をムダにしてしまっていないでしょうか。

アンケートを個別に見てみると、「新しいことは何もなかった」「知っていることばかりだった」「参考にならなかった」とストレートに書いてくる人がいたりします。しかしながら、そういう意見に対しては、すぐに「誰だ?あいつか!そういうこと言いそうだな・・・」「どこの世界でもこういうスタンスの人はいるものだ」などと個人の特性を理由にして、黙殺されてしまうことが多いように思います。これがありがちな反応に対するありがちな反応です。

新しい情報に触れたときの3つの反応パターン

ここで、新しい情報に触れたときの主な反応のパターンを整理してみましょう。

1つ目のパターンは「面白い!もっと詳しい話を聞きたい」「早速自分の仕事で使ってみたい!」と言った、前向きかつ具体的な反応です。これは仕掛けた側には最も嬉しいことなので、積極的に支援しましょう。

2つ目のパターンは、「参考になりました」「勉強になりました」のような一見前向きなのですが具体的ではない反応です。1つ目の反応との違いは、自分でやろうとするエネルギーが感じられないことです。研修慣れしている会社に多いパターンで、実は何らかのアウトプットは期待できません。

3つ目のパターンが「参考にならなかった」です。この中には、本当に得るもの/新しい情報がなかった、という場合ももちろんありますし、他にもっと重要だと思うことがあるというメッセージが隠れているようなこともあるでしょう。また、何らかの理由で提供された情報を受け入れたくないという気持ちで「参考にならなかった」と言ってしまっている場合もあるはずです。

そして、本音では3つ目のパターンなのですが、それを表現することで波風を立てたくないという気持ちが働き、表面的に2つ目のパターンの反応をする人もいます。この場合は「隠れた不満」がなかなか表に出てくることがなく、潜在化しているので厄介です。そう考えると3つ目のパターンのように素直に表現してくれるのは貴重な存在とも言えるのです。

「参考にならなかった」に隠れている前向きなアイデアを見つけて、前向きなエネルギーに変えよう!

もし「参考にならなかった」という人たちのエネルギーを前向きなものに転換することができれば、新しい情報を取り入れるためにもっと前向きに関わってもらえるのではないでしょうか。また、企画部門が重要だと認識していない課題・問題点につながるかもしれません。では、いったいどうすればこのネガティブな情報発信をプラスに活かせるようになるのでしょうか。

そのヒントは、カウンセリングの世界にあるように思います。カウンセリングや心理療法にはクライエント(依頼者)の反発がつきもので、「抵抗」と呼ばれています。「抵抗が起きたらその原因を分析して解消する」という考え方もありますが、抵抗とは伝え方がネガティブなだけで「それを望んではいない」「そのままではうまくいかない」「もっとうまくいくやり方がある」という前向きなフィードバックだと受け入れよう、という考え方を最近よく目にします。

異議を受け入れなさい。クライエントの異議を価値あるフィードバックとして受け入れるのです。(中略)抵抗のようなクライエントの異議は、重要な情報源です。 (ビル・オハンロン他『可能性療法』誠信書房, 1999)

この後者の考え方が、「参考にならなかった」と抵抗している3つ目のグループにそのまま活かせるのではないでしょうか。「参考にならなかった」「新しいものがない」というネガティブな言葉の中に隠されている、「自分はもっと知っている」「こうすればうまくいく」という前向きなアイデアをしっかりと聞き出す。自分のアイデアが受け入れられる、取り入れられて大事にされる、そのように思ってもらうことで、前向きなエネルギーに変えるのです。

往々にして「めんどくさい」と思われがちな「参考にならなかった」という人たち。しかし、そのネガティブなエネルギーの中には、前向きなアドバイスが隠れていることがあるものです。めんどくさいからといってほったらかしにするのではなく、うまくいくためのヒントを教えてもらう。そのようなスタンスでその人と接することが「参考にならなかった」と言う人が持っている情報と、外部の新しい情報をうまく結び合わせて活用するためのポイントなのです。