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「クロージング」や「リスケ」「ペンディング」など、仕事のときにしかほとんど使うことのない言葉を、俗にビジネス用語というようです。「宜しくご査収ください」や「見積金額を丸める」というのも、ビジネスでしか使うことのないビジネス慣用句と言うことができそうです。

そのようなビジネス慣用句の中でも、相手から言われて厄介なのが「イメージが湧かない」という言葉。

今回のトライツブログでは、営業現場や社内で発せられる「イメージが湧かない」についての対処法について考えてみたいと思います。

営業にとって厄介な「イメージが湧かない」

商談でお客様に話をするとき、社内で上司に説明や報告をするとき、そんなときに「イメージが湧かない」と相手から言われた経験がある方も多いのではないでしょうか。

実はこれ、とても便利な魔法のワードです。仮に相手が「理解できない」という状態であっても、そう表現して自分の理解力が乏しいというようにとられたくはない・・・そんな時にこの「イメージが湧かない」はイメージという抽象的なものを使ったあいまいな表現であり、「なんとなくすっきりしない、わからない」という感じをスマートに伝えたい時に使われることが多いように思います。

ただ、言われた側はどうしたらいいのかさっぱりわかりません。そこで、とにかくその状態をリカバリしなきゃと、同じ話をもう一度してみたり、思いついたことを口頭で伝えたりと努力しますが、なかなか上手くいくものではないでしょう。かと言って、そのまま一度社内に戻って提案書を作り直したり、次の会議のときまでに報告資料を書き直したりしても、せっかくの努力がムダに終わることが少なくないと思います。
なぜなら、そう言っている相手もなぜ「イメージが湧かない」のかを明確にできていないからです。

「イメージが湧かない」に隠れているいろいろな意味

では、そのように言うときの相手の気持ちや状態について考えてみましょう。一言で「イメージが湧かない」と言っても、そこにはいくつかのパターンがありそうです。

パターンその1:文字通りに「絵」が浮かばない

フランス料理屋でメニューを見たときに、どんな料理が出てくるのか皆目見当がつかないときがあります。そもそもそこで使われている言葉を知らないと、どんな素材がどのように調理されて出てくるのか分かりません。

同じように、知らないことや馴染みのないことを一生懸命に文字だけで説明されても、それがいったいどんなものなのか「絵」が浮かばないのです。

パターンその2:因果関係がつながらない

ビジネスで話をするときは、先ほどのメニューのような単純な話ではなく、因果関係というものがあります。たとえば「これを導入すれば、御社の課題が解決します」「こういう商談の状況だから、多分受注できると思います」というようなものです。この因果関係がうまくつながらないときにも、「(うまくいく)イメージが湧かない」と言われることがあります。

パターンその3:なんとなくイヤだ/やりたくない

最後のパターンとして、ややイレギュラーではありますが「うまく言えないけどイヤ」「乗り気じゃない」というときにも「イメージが湧かない」と言われることがあります。案自体を否定しているようには聞こえないので、使いやすい拒絶反応として使われることがあるように思います。

これらの3つのパターンを見てみると、どうも同じ「イメージが湧かない」という表現でもその意味はそれぞれ違うので、パターンに応じてコミュニケーションの工夫の仕方が変わってくることが分かります。

同じことをもっと説明するのは禁止!「イメージが湧かない」と言われたら?

では、相手から「イメージが湧かない」と言われたときには、どうしたらよいのでしょうか。

確実に言えることは、そう言われたことに対して条件反射的に説明を重ねないことです。「イメージが湧かない」=「説明が足りない」と一方的に判断し、同じことをもっと説明してしまっては、相手との距離は広がる一方になってしまうでしょう。

「イメージが湧かない」というのは、その時点での相手の出した結論なので、まずはそれを受け入れること。そして、前述の3つのパターンのどれなのかを推察しましょう。できれば一人で考えるのではなく、同行者と話し合って冷静に判断することが有効です。

そして、相手のパターンに応じてコミュニケーションのあり方をシフトチェンジするのです。
例えば、絵が浮かんでいない相手には、ビジュアルで分かるようなツールを見せたり、実物やデモを見せて体験させたりしてみる。因果関係に疑念を抱いている相手には、他のユーザーを見学させてもらってそこで成功事例をユーザーから話してもらったり、部分的にテスト導入してもらって顧客の社内で小さな成功事例を作ったりしてみる。「なんとなくイヤだ」と思っている人には、相手が引っかかっていることをうまく聞き出すことを優先する。そのような柔軟性が大切です。

何よりも「イメージ湧かない」と言う相手に、「こちらの説明が悪いんだ・・・どうしよう・・・何とかリカバリしなきゃ・・・」と焦るのではなく、「なんかよくわかんなーい」と子供のようにダダをこねているんだと思って、冷静に大人の対応をすること。それが一番の秘訣です。

そして、もし自分が説明を受ける側に立った時、この言葉を使いそうになったら・・・できるだけ具体的に自分の気持ちや状況をもっと伝えてあげましょう。これも忘れがちなことだと思います。