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顧客に共感されてる?B2Bマーケティング・営業で『共感』が持つ力

顧客に共感されてる?B2Bマーケティング・営業で『共感』が持つ力

最近、ビジネスの世界で「共感」という言葉をよく聞くようになったと思いませんか?
共感とは「相手の考えや行動に、まったくその通りだと感じること。同感」(三省堂 大辞林)。これがあるのとないのとでは、マーケティングや営業の難易度が随分変わってきます。

先日、この共感が持つ力について再認識する機会がありましたので、今回のトライツニュースでは、B2Bマーケティング・営業での「共感」について考えてみたいと思います。

共感されるストーリーのある企業・商品は強い

最近ビジネスで「共感」が注目されることが多いようです。「共感マーケティング」や「共感営業」などという言葉も出てきていますし、「共感」という言葉のついたビジネス書も数多く発行されています。

例えば、自社の事業にかける思いについて共感してもらうこと、自社の商品・サービスを開発するに至った問題意識について共感してもらうこと、これらによって顧客は自社についてもっと知りたいと思うようになり、顧客の警戒心を抑えられるようになります。共感されるストーリーを持っている企業・商品には、顧客を惹きつけてファンにする力がある。日々のコンサルティングにおいても、共感が持つ力を痛感しています。

HubSpot社のイベントで共感の力を再認識

さて、そのような中、このトライツニュースでも何回か調査データをご紹介しているHubSpot社が、公開イベント「Grow with HubSpot」を東京で開催するという話を聞きましたので、先週参加してきました。

HubSpotは世界中で事業展開しているデジタルマーケティング・サービス企業で、彼らが提唱する「インバウンド・マーケティング」実現のためのソフトウェアやサービス等を開発・提供しています。インバウンド・マーケティングとは、Webなどで公開するコンテンツ(情報)を使って、顧客が自社製品や自社そのものに惹きつけられるようにすることです。

てっきり商品やサービスについて詳しい話が聞けるものと思って参加したものの、そのような話はほとんどなく、ユーザー企業が少し話す程度。HubSpotの講演者が話すのはインバウンド・マーケティングのコツと、なぜこの会社を創業したのかという背景や理由、今のサービス開発に至る思いがメインでした。

そうです。今回のイベントはHubSpotに「共感」させることが目的のものだったのです。

「(外国人の創業者が)昔日本に住んでいた時に、初めて見た相撲のTVに小錦と寺尾の一番が映っていた」
「とても体の大きい小錦と、細身の寺尾とを見比べて、どうせ小錦に寺尾が弾き飛ばされるのだとおもいながら見ていた」
「ところがなんと、小さくて細身の寺尾があの小錦を豪快に投げ飛ばした」
「私がHubSpotでやりたかったのが、まさにこれ」
「大きな会社を、小さな会社がひっくり返してやりたかったのだ!」

今回のイベントが中小企業を主なターゲットにしたものだということもあって、この話をしたときの聴衆の拍手や大きく首を振る様子はすごいものでした。まさに、その場にいた人の多くがHubSpotに「共感」した瞬間でした。

他にも、ソフトウェア開発にかける思いや問題意識など、B2Bマーケティング・営業に関わる者としてはついつい共感してしまう話も多く、午後半日という長いイベントが終わるころには、すっかりHubSpotのファンになってしまいました。

多くのB2B企業では共感が大事だと思われていない

日本のB2B企業が開催するセミナーやイベントにも足を運びますが、HubSpotのような「共感」を目的としたものはほとんど見たことがありません。あくまでも目的は「商品・サービスの理解」であり、その目的のためには余計なものである「創業の理由」や「商品・サービスの開発に至る思い」などは、もし話されるとしても軽く触れられる程度。「本題に入る前に・・・」「少し脱線しますが・・・」「私事で恐縮ですが・・・」といった枕言葉で始まって、「では本題に戻ります」と締めくくられる扱いでしかありません。

多くのB2B企業では、共感されることが大事だと思っていないのです。だから、そのためのエピソードもあまりないし、小ネタ程度にしか話されない。

しかし、セミナーの目的を「共感してもらうこと」に変えるとどうなるでしょうか。これまで長々と話していた、商品・サービスの機能や技術特性、デモンストレーションといった内容は大幅に短縮することになるでしょう。なんなら、それらの話はHubSpotのようにユーザーにお任せするのが良いのかもしれません。その代わりに、この事業を始めようと思ったきっかけや、この商品・サービスの開発を始めることになったできごとやエピソードを中心に話すことになるでしょう。

共感してもらうことで商談の成功率が高まる

セミナー以外の営業活動でも、共感は有効です。

弊社角川の近著「予算達成!法人営業7つのツール」でご紹介しているツール『インスパイア・プレゼン』。これは、営業活動で陥りがちな「売り込む人‐選ぶ人」という関係から脱却して、顧客と一緒に取り組むことを提案することで顧客からもっと興味を持ってもらえるようになろうというものです。このインスパイア・プレゼンの冒頭で「共感」をうまく使うことで、提案のメッセージがより顧客に伝わるようになります。

ある会社では、新規顧客向けのプレゼンの機会を得たときに、自社と顧客企業の創立以来の年表を作成します。そこに、それぞれの会社設立時の思いや願いに、事業の大きな転換点に差し掛かったときになにを大事にして舵を切ったのか、ということを書き込みます。そこで「実は両社とも、戦後日本の復興のために創られた会社なのだ」「両社ともに、高度成長期の環境問題を真剣に考えて、事業内容を大きく転換した」といった共通点を伝えるのです。

それを伝えることで「これまで付き合いはあまりなかったが、似た思いを持って事業に取り組んでいるのか」と共感してもらえるようになり、インスパイア・プレゼンの成功率を高めることができました。

まず自社や自社商品・サービスに対して共感してもらおう

一昔前の営業のキーワードに「ラポール」というものがありました。ギスギスした状態で商談を始めるのではなく、たわいもない会話やお互いの共通点を確認することで和やかな状態・人間関係を作ろうというものです。

今回取り上げた「共感」は、ラポールとは違います。あくまでも個人同士の関係を良くしようというラポールに対して、共感は相手に自社や自社商品・サービスについて「その通りだ」「自分もそう思う」と思ってもらうこと。

営業活動やマーケティングのあり方をデザインするときに、いきなり理解してもらおうとするのではなく、まず「共感」してもらおうとする。それによって、自社や自社商品・サービスについてもっと知りたい、話を聞きたいと思ってもらう。今回のHubSpotのイベントは「共感」の重要性について、再認識することができた良い機会でした。

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