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百聞は一見にしかず、という言葉の通り、実物を見せてもらうことでイメージが湧くということがよくあります。これはB2B営業も同じで、実際にどういうものなのか、どのように使うのか、どう動くのかを見てもらうためにデモンストレーション(いわゆるデモ)はとても有効です。しかし、顧客の購買の仕方の変化に伴ってそのデモの位置づけに変化が訪れているようです。

今回のトライツブログでは、これを題材にして顧客への情報提供のあり方について考えてみましょう。

アメリカに本社を置くグローバル・マーケティング・サービス企業であるHubSpot社が発表した調査レポート「Buyers Speak Out : How Sales Needs To Evolve」(ものを言う顧客:営業はどう進化すべきか)で、顧客の動向の変化についての面白いデータがありましたのでご紹介します。

自分でどんどん情報を調べる顧客

Web時代の顧客は、自分で商品についての情報を調べています。購買活動を、商品等についての学習をおこなう第1段階(Learn more)と、実際に購入を始める第2段階(Ready to buy)の2つに分けたところ、第1段階の顧客は「Webの検索エンジン」や「企業のWebサイト」「企業のニュースレターやEメール」を頼りに学習を進めています。そして、第2段階に進むと、多くの企業が営業担当者にコンタクトを取るようになります。

このように顧客がどんどん自分で情報を調べるようになっているため、57%の営業担当者が「数年前と比べて顧客が購買プロセスでより営業担当者に頼らなくなっている」と回答しています。

「さっさとデモを見せてくれ!」

それでは、顧客は購買の第1段階と第2段階のそれぞれで、どのような情報を欲しがっているのでしょうか。

レポートによると、購買の第1段階(Learn more)でも第2段階(Ready to buy)でも、大きな違いはなく、顧客は手に入れられるだけの情報をすべて手に入れようとしていることがわかります。

その中でちょっと着目したいのが、「デモンストレーション」の順位の高さです。「成功事例」や「専門家のコメント、レポート」よりも顧客が求めているという調査結果になっているのですが、皆さんはどう思われるでしょうか。

確かに顧客にとっては「百聞は一見にしかず」ですから、デモンストレーションを早いタイミングで見たいと考えることが理解できます。しかし、汎用品でかつコンパクトサイズである商品を販売している場合を除き、B2Bの場合は商品のデモをしっかりやろうとすると、それなりの準備が必要であることが一般的でした。

大型の機械であれば展示会や自社のショールームなどに見に来ていただかないといけませんし、食品の原料であれば相手のビジネスに合わせたサンプル料理が必要です。システムなら、顧客の状況に合わせたサンプルデータをつくり、設定の変更をしておかないと説得力あるデモにならなかったりします。

このような理由から、多くのB2B企業においては商談の早いタイミングからデモを行うのではなく、相手の本気度を見極めてから、最後の切り札としてデモを活用するというケースが少なくなかったのです。

しかし、この調査結果は「検討の早いタイミングからデモを見たい」と顧客が考えていることを示しています。確かにWebを活用しデモの様子の動画を見せることができれば、それにある程度は応えられる環境ができています。実際にあなたの競合他社が明日にでもそのようなことをやってくるかもしれません。そんな中で、「我々は最後の切り札としてデモを行う」というようなスタンスをとっているとしたら・・・
顧客はいつまでも自社のことを待ってくれるでしょうか。

情報を小出しにするのではなく、情報を持った顧客が次に何を求めるか考えよう

これから顧客は益々いろいろな情報を思いついた時にすぐに入手できることを好むようになるでしょう。営業担当者との何度ものやり取りを通じて情報を入手していく、ということではなく、Webを活用しもっと短期間で情報を入手したいと思うようになったということです。

こうなると営業担当者は情報を小出しにしながら、顧客の購買意欲が自社商品の方に向かうように顧客をリードしていくというシナリオが成立しなくなってしまいます。これは今までの営業プロセスが成立しなくなったことを意味するのです。

ただ、そのようにして短期間に情報を入手できた顧客がすぐに購買の意思決定ができるか?と考えると必ずしもそうではありません。間違いのない購買をするためには、入手した情報をもとにして「検討する」ことが必要になります。それにはこちらが専門家として「一緒に検討する」ということが求められるでしょうし、その中でもっと顧客に合わせた具体的なデモが必要であれば、それはそれで相手に合わせて実施すれば良いのです。

今回の調査結果は米国のものではありますが、提供できる情報はなるべく早いタイミングで手間を掛けずに提供し、営業担当者は「一通りの情報を得た上でどうするか」を顧客と一緒に検討できるように営業の関わり方を変えていく必要がある、ということを示唆しているように思います。

参考:「Buyers Speak Out: How Sales Needs To Evolve|HubSpot

Webが普及したことで顧客の購買活動が大きく変化し、営業担当者に対して求める情報とそのタイミングも変わりつつあります。そのような現在では、営業プロセスの設計と併せて「どの情報をどのタイミングでどのチャネルで提供するか」を考え直す必要があります。「顧客の購買活動の変化に合わせて、自社の営業プロセスを見直したい」という方は、下記よりお気軽にご相談ください。より具体的なヒントを差し上げられると思います。