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ミレニアル世代という言葉が生まれたように、2000年以降Webの進化やスマートフォンの普及など、ITによって日常生活は大きく変化してきました。AmazonなどのWebショップで誰もが当たり前に買い物をするようになり、分からないものがあればすぐにGoogleで検索して情報を探すようになりました。

これと同じように、B2Bの営業現場もITの浸透によって変化してきました。そして、特に営業現場で利用されているITツールと言えば、SFAとExcelではないでしょうか。

今回のトライツブログでは、SFAとExcelを題材にしてB2Bの営業現場でのIT活用について考えてみたいと思います。

営業が当たり前に使うITツール:SFAとExcel

SFAが日本市場に登場してから20年ほど経ちますが、最近になって改めてSFAを導入した、または導入を検討しているという話をよく耳にするようになりました。以前は自社の営業に合わせて独自に開発するのが主流だったのですが、ここ数年でSaaSと呼ばれるクラウド環境で使えるシステムサービスが普及してきたことで、より安価にSFAを導入できるようになってきたのがその原因です。

そして、B2B営業でもっとも使われているITであるExcel。商談管理シートや見積書など営業現場で作成される資料の多くはExcel形式です。また、PowerPointの代わりに「方眼状のスライド」としてExcelシートをフル活用している会社もあります。

進化を続けるSFAとExcel、その使い方は進化している?

このSFAとExcel。いずれもB2B営業の現場にすっかり浸透しているのですが、そのシステムが本来持つ能力を十分に活かせているか?と考えると、疑問があります。SFAもExcelも日進月歩で新しい機能が開発されているのですが、実際に使用されている機能は限定的で、10年前とほとんど変わらない、という現場が多いのではないでしょうか。

SFAの近年のトレンドは、CRMやSAPなどの周辺の業務システムとの連携や、Marketing Automationと言われるキャンペーンマネジメントシステムとの統合です。具体的には、名刺を写真撮影したデータを自動で読み取って顧客データベースに追加する機能や、顧客リストを地図上に展開して最短の訪問ルートを作成する機能、セミナーや展示会のWebページ作成や集客メールの送信などの運営業務をできる機能が最新のSFAにはついています。しかし、SFAを導入している企業でもこれらの最新機能を使いこなしているところは多くなく、別のツールを使ってこれらの作業を行っているようです。

また、Excelでもアドインソフトを活用すれば、色々な作業を効率化・自動化することが可能になります。実際にトライツが5月に実施した「出版記念セミナー」でも、参加のお申込みをいただいた方向けのリマインドメールをExcelのリストに対してワンクリックで一斉送信できるソフトを活用しています。また、以前は高価な統計解析ソフトでしかできなかった分析も、Excel上で動くソフトを使って簡単にできるようになっています。しかし、実際の営業現場を見ていると、そのようなツールを活用しているところはほとんどありません。

このように、営業現場に浸透しているSFAやExcelですが、そこでは最新の機能はほとんど使われていないというのが実態なのです。

「IT活用による生産性向上」を担う人がいないB2B営業

では、なぜSFAやExcelの最新機能が使われていないのでしょうか。営業現場や本社の営業スタッフ部門の人とお話をすると、「ITにはうといもので・・・」などと言われることがありますが、本当にそれだけなのでしょうか。

ExcelについてはPCの導入が決まった10年以上前に簡単な講習を受けただけで、以降は学ぶ機会はまったくないということがほとんどではないかと思います。従って、それから何度もExcelはバージョンアップしていますが、操作する側はまったくバージョンアップしていないということになってしまっています。

例えば全社で毎月マネージャに提出を義務付けている資料があったとしましょう。その資料の作成にあたって、部下のファイルをそれぞれ開いてコピーをするという作業が必要だとしたら、マネージャは部下の人数分、その作業を毎月行わねばなりません。このような単純作業は「月に1回だし、30分位だから・・・」と見過ごしがちなのですが、実は全社で見ると、30分×マネージャの人数×12カ月の莫大な人件費を投入していることになるのです。

このような作業、実はExcelのマクロ機能を上手く使えば、ほんの一瞬で終了してしまえるようになります。既存のシステム環境のままで、何の投資もしないでも、マネージャの時間が増えるのです。これは一つの例ですが、今あるITをもっと上手く使えば、それだけで仕事の生産性を向上させることができるのに、それができていない。それは営業の現場をわかっている上で、「こう活用しよう!」と旗振り役をする人が誰もいないということが最大の問題です。

この問題を解決するために、今まで使っていなかったシステムの機能など新しいものを活用しようとする場合、いろいろ情報収集した上で自社で使えそうなものを「目利き」し、社内で使えるようにカスタマイズも含めて「手順化」して、それを「普及」させるという3つの役割が必要になります。この役割をIT部門が担うのは難しく、営業活動を熟知している営業支援部門が担うべきではないかと思います。

ITの活用度合は、外部の良いものを取り入れる力のバロメーター

ゴルフなどスポーツの分野では、チタンやカーボンなどの新しい素材、使い勝手のよいデザイン、ミスショットをしにくいような設計など、最新の技術がツールに込められています。

それと同じように、SFAやExcelのような営業現場で使用されているITツールにも、業務の生産性向上につながる機能が込められています。しかし、それらの機能を試すことなく10年前と同じ使い方をしている営業部門が多いのです。これは、例えるなら10年前のゴルフクラブでゴルフをしているようなもの。大変もったいないことです。

さて、みなさんの営業現場でのSFAやExcelの使い方は10年前と比べて大きく変わっているでしょうか。これらのIT活用度合は、外部の良いものを社内に取り入れる力を計るバロメーターにもなるのです。もし10年前からSFAやExcelの使い方が変わっていないのであれば、自社の営業は外部の良いものを10年間取り入れていない、端的に言うならば世の中から10年間取り残されてしまっているということかもしれません。

トライツコンサルティングでは、SFAやExcelにとどまらず「営業のデジタル改革」をご支援しています。「もっとデジタルツールを活用したい」「今使っているExcelやSFAなどのソフトを進化させたい」という方は、いつでもお気軽にご相談ください。これまでの取組事例やツールのイメージなどをご紹介いたします。