営業戦略

B2B営業のモデル化ってどういう意味があるんだろう?

B2B営業のモデル化ってどういう意味があるんだろう?

営業・マーケティングの世界では日々新たなモデルが生まれてきています。これまでに生まれてきたモデルの中には、すぐに消えてしまうものだけでなく、CRMやWebマーケティングなどいつの間にかビジネスをする上で当たり前になっているものもあるので、常にアンテナを伸ばしておきたいものです。

さて、今回のトライツニュースでは、アメリカで最近発表されたB2B営業の新モデルをご紹介し、そこからそもそもB2B営業をモデル化して考えることの価値について一緒に考えてみたいと思います。

B2B営業の新モデル「レベニューライフサイクルマネジメント」

2016年2月にアメリカの出版社Forbesの調査子会社であるForbes Insights社と、B2B企業向けITソリューション企業であるServcie Source社が共同制作したレポートを発表しました。タイトルは「Mastering Revenue Lifecycle Management: Customer Engagement Leads to Competitive Advantage(レベニューライフサイクルマネジメントを使いこなす:顧客エンゲージメントで競争優位を実現する)」です。

タイトルにある「レベニューライフサイクルマネジメント(以下、RLM)」とは、Servcie Source社が開発したビジネスコンセプトでありモデル。顧客との付き合いを1年や3年といった輪切りで評価するのではなく、付き合いの始まりから終わりまでの長いライフサイクルとして捉えて、収益を最大化させようというものです。

Service Source社はB2B企業が自分たちのRLMの実態や課題・改善ポイントを把握するための統計的なモデルや、自社のRLMの成熟レベルを評価するためのモデルを開発しています。今回のレポートでは、334人のアメリカのB2B企業幹部に対して調査した結果、RLM成熟レベルが高い企業ほど顧客の維持率が高く、その結果として利益率や利益成長率も高い傾向にあることが分かった、と報告しています。

なぜ同じようなコンセプトが繰り返し現れる?

このRLM、確かに「顧客のKPI達成率を自社のKPIにしよう」など新しい提言もありますし、顧客や市場に自社の製品や営業プロセスなどの様々な観点からデータ分析を行うことで、現在の課題や今後何をすべきかが明確にできるなどの特徴もあります。また、このようなキーワードを使うことで現場のメンバーやマネージャーに強く意識させられるという利点もあります。

しかし、皆さんもお気づきのとおり「顧客との長期の関係を築いて収益性を上げよう」「そのために顧客のビジネスにもっと貢献しよう」「これらを評価できるように顧客の情報を集めよう」という考え方は今に始まったものではありません。カスタマーロイヤルティプログラムという考え方は以前からありますし、自社のスループット(売上)を最大化するためには顧客の売上を増やさなければならない、ということは大ヒットしたビジネス書『ザ・ゴール』シリーズでも言われていることです。

それではどうして、このように同じような考え方が何度も形や名前を変えて出てくるのでしょうか。もちろん、本質的に大事なことだから、ということはあります。しかし、それ以外に、考え方としては素晴らしくても実際のビジネスの場において、特にB2B企業にとって活用し定着させるのが困難だということがあると思います。

これは、ダイエット本や自己啓発本に通じるものがあるのではないでしょうか。煎じ詰めると多くの本は似たようなことを書いているのですが、なかなかそれを実践して習慣化するのが難しい。だから手を変え品を変え、色々なアプローチが生み出されていく。それに近いものがあるのです。

B2B営業をモデル化する壁「顧客データの入手」

では、RLMのような取組を一般的な日本の会社に導入しようとすると、何がボトルネックになのでしょうか。新しいことに取り組むためにメンバーやマネージャーのモチベーションをかけ、それを維持することなど様々ありますが、特に日本のB2B営業では顧客のKPI達成率など必要な顧客データを入手することが極めて難しいのです。

B2C企業ではPOSデータなどから購買情報を得られますし、顧客情報は会員カードやクレジットカードなどで入手できます。また、最近ではTwitterなどのSNS上での情報を収集・解析するツールもあります。B2Cでは多くのデータをあえて人手を掛けずしても入手することができます。

一方、多くのB2B企業では、顧客情報は営業担当者が手間を掛けて自ら収集するしかないことがほとんどです。営業担当者としては、苦労して集めた情報が自身の成果に直結するかどうかわかりにくいですし、また、人力で集めた情報がどこまで正確なのか、という懸念も残ります。

例えば、部品メーカーの営業が顧客である完成品メーカーに営業活動を行う場合を考えると、自社の部品が採用されている顧客商品がどの程度売れているかは、自社の部品の売上で推測できますが、その利益率とか来年度の開発投資金額まではなかなか教えてもらえるものではありません。かと言って公開されているその企業全体の営業利益率や投資予算などではおおざっぱ過ぎます。

このように「この情報がわかっていれば、もっと正確に顧客への貢献度や今後のビジネスの可能性がわかるのに・・・」と思っても、「いかにして入手するか」ということが大きな問題になってしまいます。

このようなことから、B2B営業の現場では、精密なモデルを考える前に、いかに現場の営業担当者が必要なデータを集められるようにするかという「データの取り方」を考えなくてはなりません。

しかし、実際によくある話としては必要なデータ項目だけ列挙したエクセルシートを渡して、「これを来週の木曜日までに埋めてきて」と言われるだけだったりするので、精度の高い情報を収集することができないのです。

顧客データは集めるものではなく、顧客に役立つことをしていくうちに集まるもの

とは言っても、パフォーマンスレベルの高い営業担当者の中には、驚くほど顧客のいろいろな情報をしっかり掴んでいる人がいます。顧客にその理由を聞くと「あの人は特別だから」などという答えが返ってきたりして、顧客にとって特別な存在になっていることがわかります。

その人達に共通しているのは、顧客が情報を提供することによる「顧客側のメリット」を自ら作りだしており、決して自社都合の情報収集をしていないということです。そこではあくまでも「顧客の視点で一緒になって考える」ということが主であり、それができているからこそ、結果として顧客のいろいろな情報を聞き出すことができています。

例えば「上手いことやって、新商品への開発投資予算を聞き出してやろう!」と意気込むのでなく、「A社の新商品の開発についてブレストしよう!」というスタンスで自然に話す中で、来期の商品開発の規模感を共有するために、顧客の予算数字は必要不可欠な情報となり・・・顧客から自然に教えてくれた・・・というような感じです。

もちろん、営業担当者のテクニックとして顧客が「話してもいいな」という気持ちになっているにも関わらず、はっきりとこちらが聞かないのであいまいなままになってしまうということもあるでしょう。そんな時に必要なことをズバっと聞くという営業スキルも大切なことですが、それ以上に大切なことは前述のように顧客のビジネスに役立つ内容の会話ができるかどうかということなのです。

情報が収集できた段階で目標が達成できている?

実は今回ご紹介をしたRLMのような指標を導入するということは、
顧客への貢献度を指標化して測ろう→顧客のことをもっと知ろう→顧客のビジネスに貢献できるようになろう
ということになり、顧客との関係をつくり、情報を入手できた段階で、きっと既に目的は達成していることになるでしょう。

そういう意味で、今回ご紹介したRLMなどを「難しそうな取り組みだから」と敬遠するのではなく、売上一辺倒の営業現場の意識を変えるカンフル剤として、トライしてみることに本当の価値があるのではないかと思います。

 

参考:Study: Focus on revenue lifecycle management leads to growth

投稿者プロフィール

門田 尚之
顧客とB2B営業のコミュニケーションデザインや販売促進、商品・サービス企画・開発における課題解決が得意領域。「現場感覚を大切に」がモットーです。
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