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営業力強化のために「営業担当者のモチベーション向上」はとても大事な要素です。

「営業活動が楽しくない」
「キャンペーンや営業プロジェクトが苦痛で仕方ない」

そんな風に感じるのではなく、営業担当者が楽しく取り組めるようにしたいものです。

今回のトライツブログでは、営業現場のモチベーションを高める施策としての「ゲーミフィケーション」について考えます。

調査結果:営業は「社内で認められる」ことで成果が上がる

少し前のものになりますが、アメリカのリサーチ会社であるAberdeen社が行った2016年の調査によると、営業担当者のやる気を出させる項目でそれまで断トツの1位だった「インセンティブ」の比率が低下し、2位の「社内で結果を認められる」の比率が上昇したそうです。さらに、「社内で結果を認められる」を選んだ回答者の企業と、そうではない企業とを比較したところ、前者の方が「顧客維持率」や「部門の年間目標達成率」といった業績が良い傾向にあることが分かりました。

また、同社が1980年~2000年生まれのミレニアム世代の若者を対象に実施した調査でも、その世代の営業担当者はこれまでの世代と比べて出世に興味を持っておらず、「感謝されている」「関心を持ってもらえている」と感じている方がより良い結果を出している、という結果が出ています。

どうやら、最近の営業にとって「社内で認められる」「褒められる」といったことが、モチベーション向上のカギになっているようです。日本の若者に対して同じようなことを感じておられる方は少なくないと思うのですが、どうやらそれは日本に限ったことではないようなのです。

褒め合える営業現場への近道「ゲーミフィケーション」

とは言え、実は「認める」「褒める」というのは簡単なようで難しいものです。ましてやこれまでのビジネスマン人生で、そのような経験がほとんどなかったある年代より上の層の人たちにとっては、どうしていいのやら?という状況ではないかと思います。

それに対して、先ほど紹介したAberdeen社の調査の中にヒントがありました。

それは「ゲーミフィケーション」。

仕事に遊びや競争などの要素を入れて、ゲーム仕立てにすることです。回答者の中で「自社の営業部門にゲーミフィケーションが導入されている」と回答した営業担当者は、そうでない営業よりも良い成果を出していることが分かりました。具体的には

  • 商談期間が30%短い(233日 vs. 336日)
  • 商談の受注率が6ポイント高い(37% vs. 31%)
  • 個人の年間目標達成率が6ポイント高い(56% vs. 50%)

といった成果が出ているようです。

毎日の営業活動を、小さな目標に分解して進捗を見える化し、メンバーに競わせ合って目標を達成するたびにしっかりと褒めたたえる。このような「営業活動のゲーミフィケーション」が、結果が認められ、感謝・称賛されてモチベーションの高まる営業チームづくりに有効だというのが2016年時点の調査結果でした。

益々広がりを見せるゲーミフィケーション活用の流れ

そして、この傾向はここ数年でより加速しているようです。営業分野でのゲーミフィケーション活用についての最近の調査データでは、ゲーミフィケーションが企業の中で広く使われるようになってきていることがうかがえます。

  • ゲーミフィケーション市場は2018年時点で世界で68億ドルに達しており、2024年にはおよそ6倍の市場規模となると予想される(ReportLinker – TechSci Research)
  • 2018年から2023年のうちに、ゲーミフィケーション市場のうち最大のユーザーが企業・法人部門(54%)となる(Metaari 2018-2023 Global Game-based Learning Market Report)
  • ゲーミフィケーションを利用している企業では97%以上が業務改善に役立っていると回答し、87%以上が以前より生産性が向上していると回答している(Talent LMS)

また、営業分野で使えるゲーミフィケーション・ソフトウェアも充実してきており、eLearning Learning調べによると「LevelEleven」「FantasySalesTeam」「Hoopla」「Ambition」「Bunchball Nitro」が5大営業ゲーミフィケーションツールとなっています。ちなみに、5つ目の「Bunchball Nitro」はIBMやSAP、Salesforceといった企業でも利用されています。

ちなみにトライツが関わっているある営業部門でも大手顧客攻略のための活動を「ゲーミフィケーション」的に運営することでモチベーションを高めることに成功しています。

具体的には、巨大な顧客の組織図を描くと、最初は今までに誰にも会ったことがない部署ばかりで、虫食いだらけの組織図になります。しかし、いろんなツテを使って顧客との接点が増えると「ここの部署も攻略できた!」と虫食いが埋まって、ゲームをクリアしたような達成感を感じてもらえます。

そして、新たに攻略した部署から案件が出たら(たとえそれがまだ受注確度が低いものだとしても)「案件発掘おめでとう!」と称賛しながら、商談のステージが進んでいく様子をゲームのようにモニタリングしています。

このように、一見壮大でどこから手を付けたらよいか分かりにくい大手顧客攻略も、工夫次第で「接点づくり」「案件づくり」「商談のステージ進捗」と小刻みにブレークダウンして営業のやる気をかき立てることができます。1つステージをクリアするごとに「やった!」とお祝いして楽しみながら前に進めていくことも忘れてはいけないポイントです。

営業成績グラフはゲーミフィケーション?

このような話をすると「別にゲーミフィケーションなんて言葉を使わなくても、営業は元からゲームみたいなものだし、我が社でもプロセス目標を決めてそれを達成するために、それぞれ工夫して競い合いながらやってるよ」などと言われることがあります。つまり、既に自社はゲーミフィケーションに取り組んでいると言う認識です。

もし、自社の営業担当者が好きなスポーツや、カードのゲームに取り組むように積極的で、真剣で、かつ何よりも営業活動を「楽しむ」ことができているのであれば、問題はないと思います。しかし、若手のモチベーションに悩んだりしておられるのだとしたら、決してその取り組みは十分ではないと考えるべきです。

例えばマネージャが「個人別の売上成績グラフを壁に貼って、ゲーム感覚で楽しく競い合おう!」と考え、それを始めたとしましょう。ゲームとして楽しむためには、まずそれに参加する人が「楽しもう」という気持ちがあることが不可欠です。しかしながら、マジメなマネージャほどつい力が入ってしまい、「仕事なんだからマジメにやるのが当たり前」「厳しく言うのは○○のため」というようなスタンスで成績の悪い人を吊し上げるというような運用をしてしまいがち。結果として、楽しくなくなってしまいますし、自分がやり玉に上がらないようにしようと考え、暗黙のルールの元に「上司の地雷を踏まないゲーム」に変質してしまうのです。

そうなると、成果につながるゲームとして成立しているとは言えません。

また、「売上」という結果数字にだけ焦点を当てるというやり方は、ゲームの「見せ方」として問題があります。ゲームを楽しくするためには、結果が出るまでのプロセスやその進捗状況をお互いに見ることができることが大前提。そうでないと、済んでしまったことに後からゴチャゴチャ言われるだけになるからです。

ゲーミフィケーションを取り入れるのであれば、「どうすれば前に進むことができるか」ということが一目瞭然にわかるようにすることが必要だと思います。

あのゲームの楽しさをどう営業活動に取り入れるか?

ご紹介した調査結果では、「つらい仕事でもお金さえもられば我慢できる」という人は減り、「お金も大事だけど、もっと認められたい、褒められたい」という人が増えてきていることを示しています。そして、そんな中でゲーミフィケーションを取り入れた企業が成果を上げています。

ここからわかることは、もっと営業活動に遊びや競争の要素を取り入れて、楽しくできるようにすることの重要性が高まっていえるということだと思いますが、実際の営業現場では「競い合う」ということはできていても、「楽しくする」という工夫が弱いという問題があることがわかります。

言い換えると、その仕事に取り組んでいる人が前向きで、笑顔でいられるようにするというように工夫しなければならないということでしょう。

ポケモンのようにお客さんの中で仲間を増やし、
テトリスのようにアイデアを組み合わせ、
スーパーマリオのように商談のステージをクリアし続け、
たまごっちのようにお客さんの成長を支援する

そんなスーパー営業を増やしていくためには、それぞれのゲームの「楽しさ」を自分達の営業のマネジメントに取り入れていくことだと思います。それぞれのゲームでは何をすれば、何ができれば、前に進んだり、ポイントを稼ぐことができるか、誰でもわかるようになっていますし、「見せ方」も工夫されています。

これからの営業マネジメントにはそんな工夫が求められているように思います。

参考:What Motivates Best-in-Class B2B Sellers? You’ll Be Surprised. |Hubspot Blogs

トライツコンサルティングでは、客先で使用する営業ツールや営業マネジメント、営業研修などにゲーミフィケーションの手法を取り入れています。「もっと現場が自ら活用するようにしたい」「もっと楽しく営業改革に取り組ませたい」という方は、お気軽にご相談ください。