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B2B営業にとって価格交渉は商談において欠かせないものであると同時に、頭痛の種でもあります。それは、失われた20年における顧客のコスト意識向上や、グローバル化や東アジア諸国の成長による安価な海外商品の進出により、より厳しいものとなってきています。

今回のトライツブログでは、コストにシビアな顧客担当者と価格交渉を優位に進めるために、B2B営業で何が大事なのかを考えてみたいと思います。

購買のしかたが様変わりしているB2C営業

これまでに何回も触れていますが、Webの浸透により顧客の購買のしかたが大きく変わってきました。とりわけ顕著なのがB2C営業です。電化製品が欲しいとき、少し前までは家電量販店に出向いて売り場の販売員に要望を伝えて最適な製品を見繕ってもらい、安くしてもらえないかと販売員と価格交渉をする、というのが主流でした。いくつもの製品をまとめて買うような場合は、わざわざ店員が一度奥の方に行ってから「店長決裁で特別にお安くできました」と伝えるという『演出』もあったものです。

しかし、Amazonや楽天のようなショッピングサイト、価格を比較するサイトなどでの購買が増えつつある現在では、家電量販店には実物を見に行き、家に帰ってから(もしくは、帰りの車内や喫茶店で!)ショッピングサイトで家電量販店の割引値段よりも安く買うというやり方をする人が増えてきています。

Web時代の顧客担当者は『情報通』

このような購買のしかたの変化は、B2C営業だけにとどまる話ではありません。実際に色々な会社の営業の方と話をしていると、B2Bでも顧客が以前よりも価格をはじめとする商品情報をよく知っているので、以前よりも営業担当者が価格交渉で苦労するようになった、という話をよく伺います。

「これまでは品質が良くて自社が選ばれていたのに、価格だけで海外品に切り替えられた」
「担当者が他社価格情報を持っていたので、当初設定していた価格よりも大幅に安い価格で売らざるをえなくなった」
というように、顧客は価格をこれまで以上に重要視するようになるだけでなく、競合商品を含めてさまざまな情報を集めている『情報通』になっているのです。

『情報通』な顧客と営業担当者の間の情報格差

このように顧客の担当者が情報通になっているのに対し、営業担当者の価格についての情報武装は決して十分ではないことが多いようです。

「競合の実売価格はどのくらいか?」
「これまでにこの商品をいくらで売ってきたのか?」
「この商品の正確な原価はいくらで、いくらまでの値下げなら自社として利益を確保できるのか?」
こういった情報をきちんと持つことができている営業担当者はほとんどおらず、『情報通』な顧客との情報格差は広がるばかり。

「通り一遍の見積もりを出してしまったので、顧客から連絡が来なくなった」
「価格競争で引くに引けずに、利益の出ない価格で売ることになってしまった」
「本当はもっと値下げしても利益を出せたのに、価格を合わせられずに失注した」
ということが起きています。営業担当者はもっと価格について顧客と対等に交渉するための『情報武装』が必要なのです。

営業担当者には価格情報を武装させない方がよい?

しかし、営業のマネジメント側には
「営業に情報を全部出すと、しなくてもいい値下げや無理な値下げをしようとする」
「営業には内輪の数字だけを出しておいて、それ以上の値下げをしようとしたら支店長決裁、本社役員決裁と段階を踏ませることで営業担当者による値下げの抑止力にしよう」
という考え方が根強くあり、「余計なことは教えず、一円でも高く売るようにさせるのが重要」という声も聞きます。

しかし、そのように営業活動をさせようとしても、自分のことを『情報通』だと思い込んでいる顧客担当者は、今までのように営業担当者に一から相談してくれない傾向があります。かなりの精度の情報を手元に集めていると思っているので、それをもとに社内で検討し、「ここの会社からこれだけの価格が出てこないなら、あっちの会社に発注しよう」などと前もって作戦を立てた上で見積依頼の連絡をしてきているのです。

プロとして適切な購買のしかたをアドバイスできるように価格情報武装を考えよう

ここで大切なことは、顧客の自称『情報通』が持っている情報はWebで収集した中途半端だったり偏ったりしている情報なので、ホンモノの『情報通』ではないことが多いということです。

まったく同じ商品・サービスであれば価格だけが決め手になるということはわかるのですが、B2Bの場合はプラスアルファのサービスやノウハウの提供など、目に見えない価値の違いが実は大きかったりしますし、価格だけでの判断は顧客のビジネスの成功の妨げになることも少なくありません。

「他社が安いのには、安いだけの理由がある」
「長い目で見たトータルコストでは、逆にこちらの方が割安になる」
というように、プロとして顧客の適切な購買をアドバイスする、いわゆる「買い方を教えてあげる」ことが大切なのです。

そのためには、競合の情報をもっと知っている必要がありますし、それらの情報をどのように伝えればよいかというシナリオも大切なノウハウです。これらをしっかり組み立てた上で、営業に対する価格情報武装を考えていくことが大切なのではないでしょうか。

AIが営業の仕事を奪うと言われている今、これからの営業には情報武装が不可欠です。もっと情報武装させることで、営業活動そのものが顧客に価値を与えられるような営業組織に変えていきたいとお考えの方はお気軽に下記よりお問い合わせください。