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営業現場はもちろんのこと、営業企画や営業推進といった営業支援部門では、営業ツールや営業トークといったさまざまな営業施策づくりやその見直しがなされています。これらの営業施策を検討するにあたって、トライツコンサルティングでは『売れるメカニズム』を考えることを大事にしています。

今週のトライツブログでは、営業施策づくりのベースとなる『売れるメカニズム』についてご紹介します。

「営業ツールの見直し」の前に考えるべきことがある

先日、ある企業から営業力強化のための施策として「営業ツールを見直したい」というご相談をいただきました。よくよくお話しを伺ったところ、商品カタログやキャンペーンチラシ、汎用提案書など社内にたくさんの営業ツールがあるものの、どれも現場ではあまり効果がないようなので、どこが悪いのか調べてほしいということでした。

お客様から営業ツールの見直しについて色々と要望を聞かせていただいたのですが、営業ツールの効果を高められる確証が持てません。そこでお客様に質問をしました。
「そもそも、この商品が『売れるメカニズム』はどのようなものですか?」「顧客がどうなればこの商品は売れますか?」「商品を理解すること以外にも、この商品を買うために必要な顧客の変化はありませんか?」
すると、お客様は何かに気が付かれたようで、少し考えてから話し始めました。
「今まで、相手を説得するためのツールづくりばかりやってきましたが、顧客の立場から『売れるメカニズム』というのを考えたことはないかもしれません。そこにヒントがありそうですね」

営業現場にあったのは『売れるメカニズム』ではなく『説得のロジック』

この企業が今まで営業ツール化してきたのは、『売れるメカニズム』ではありませんでした。それは営業が顧客を説得するための一連のプロセスで、あえて名前を付けるとしたら『説得のロジック』とでも言うものです。

『説得のロジック』は、営業が顧客を説き伏せるための一方的なコミュニケーションの手順です。相手が反論する余地を残さないように、ロジックとして厳密に組み立てられていき「この間の商談ではこういう理由で失注した」となるとその穴をふさぐためにロジックが追加されていきます。そのため、応酬話法のロープレ集や提案書はどんどんと分厚くなっていきがちです。

これに対して『売れるメカニズム』は、顧客が自ら進んで買うようになるための仕掛けです。目の前の顧客を説得しようとするのではなく、顧客の状態に応じて顧客が購買の次のプロセスに進むための仕掛けを提供し、その結果として「営業に買わされる」のではなく「顧客が自ら買う」ように顧客をいざなうのです。

多くの営業現場では『売れるメカニズム』ではなく『説得のロジック』を土台として営業ツールや営業トークが考えられているように思われます。これまでの社内営業研修などで、応酬話法や汎用提案書を使った一方的なプレゼンテーションの仕方ばかりを教えられた、という営業の方も多いのではないでしょうか。

それでは、実際に『売れるメカニズム』を解明した事例を2つ紹介します。

事例1:見たこともないITシステムが売れるメカニズム

とある業務用ITシステムは安価で使いやすく、導入済のユーザーの多くからは追加発注をしてもらえているのですが、新規開拓で苦戦していました。というのも、ほとんどの企業ではその業務は人力で対応しているもののため、ITシステムを購入したこともなければ検討したことすらありません。そのため、市場には他にどんなシステムやサービスがあって、どんな基準/手順で自社に最適なものを選んだらよいのかを顧客が分かっていないのです。そのような顧客にカタログやデモを使っていくら商品の良さをアピールしてもうまく説得できずにいました。

このような状況を打破するために、その企業では商談を顧客の学習カリキュラムに置き換えて、自社システムだけでなく他社システムまで含めて顧客が学習・理解し、最適なシステム/サービスを選べるように変えました。

このITシステムが『売れるメカニズム』は、顧客の学習支援です。顧客が業務に関係するITシステムの全貌を理解し、自分たちがどのように活用したいのかを明確にした上で最適なシステムを選択することができれば自ずと自社のITシステムに目が行き、選ばれ、売れるのです。

事例2:更新注文メインの什器が追加で売れるメカニズム

とある店舗用什器メーカーの営業は、既存客からの定期的な更新注文はあるもののさらなる売上拡大のために頭を悩ませていました。ほぼ数社で独占している市場のため、いったん他社品が導入されてしまうと、使い勝手が変わることが嫌がられ、なかなかリプレースが難しくなります。また既存の顧客に対していくら新商品のプレゼンをしても、商品寿命が長いのでなかなか追加の受注には至りません。既存客での売上拡大を実現するためには、什器が足りなくなることで注文が入ることを狙って顧客の事業拡大を促すことが一番の早道でした。

そのため、この営業は顧客と一緒に事業拡大計画づくりをおこなうようになりました。手書きのシートを使って将来の店舗拡大の計画を考え、そのために必要な什器や備品を考えて提案することで追加受注を得られるようになったのです。

このメーカーにとっての『売れるメカニズム』は、顧客の事業拡大計画づくりです。顧客の店舗を将来どう拡大したいのかという目標を見える化し、その計画の実現をサポートすることが追加注文につながるのです。

売れるメカニズムの解明こそが営業施策づくりの土台

このように、扱う商品や顧客によって売れるメカニズムはさまざまです。そして、どのような商品であってもそれが少しでも売れているからには、必ず売れるメカニズムは存在します。

さらに、売れるメカニズムが明らかになることで、ターゲットとなる顧客が誰なのか、その顧客と商談の場でどんなことをおこなえばよいのか、そこではどんなツールがあればよいのか、といったことが芋づる式に明らかになります。これによって、作ってみたものの実際の商談ではあまり効果がない営業ツールが乱立している、という事態を避けられるはずです。

売れるメカニズムを解明するためのポイントは、自社ではなく顧客を見ることです。過去の商談の中で「自社が何をしたのか」ではなく、商談のそれぞれのタイミングで「顧客がどうだったのか」を振り返りその行為や変化の意味を読み解くことで、売れるメカニズムが明らかになるのです。

Web時代だからこそ必要な『売れるメカニズム』

最近の顧客は営業担当者から話を聴くだけでなく、Webを使って色々な情報を集めています。昔のように売り手が情報を独占しているのであれば、目の前の顧客を説得することで商品を買わせることはできるでしょう。しかし、顧客が自分でどんどん情報を集めて変化している今の時代は、顧客のその時々の変化を捉えて購買プロセスを前に進めるための『売れるメカニズム』がより重要になるのです。

御社は『売れるメカニズム』をお持ちでしょうか?トライツコンサルティングが最も自信を持ってお役立ちできる領域の一つがこの『売れるメカニズム』づくりです。自社の『売れるメカニズム』に不安がある、もっと進化させたいとお考えの方は下記よりお気軽にご相談ください。