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「営業向けのちょうどいい研修がない」
「うちの営業にピッタリの本が見当たらない」
部下の営業担当者に自社の営業のやり方を教えようとして営業研修や営業の本を探してはみるものの、ちょうどよい「教科書」がないことに悩んだことのある営業マネージャの方も多いのではないでしょうか。

今回のトライツブログでは、営業のやり方を教える「教科書」について考えてみましょう。

営業には「教科書」がない

そもそも営業の教科書とはどういうことでしょう?
教科書は文部科学省が定める学習指導要領に準拠しているため、出版社による多少の違いはあるもののほぼ全国共通の内容です。また、経済学などの大学のテキストや資格試験用のテキストも、著者や出版社による多少の差はありますがほぼ同じ構成でできています。これに対して、営業には共通の教科書やテキストはありません。さまざまな教育研修会社やコンサルティング会社が独自の内容でつくっており、それ以上の数の「営業のプロ・講師」による独自の体系やノウハウが沢山あります。従って、企業としては自社の現在の営業のやり方に使えそうな流儀を選び、それに基づいた営業研修を使って社員に教えるという方法が一般的です。

そしてそれを受けた社員は自らの営業に置き換えて考え、明日からの仕事に活かすという流れになっています。ここには「自社の営業に合わせて解釈する」という作業が発生します。それぞれの現場ではいろいろ異なる事情があるので、そこが一般的な教科書による勉強と違って難しいところです。
また、お金を掛けて自社向けに分厚い営業マニュアルを作成しても、現場ではほとんど見ていない、使われていないという声も聞きます。

もちろん優秀な営業担当者は研修で教わったことやマニュアルに書いてあることを理解し、自分の仕事にどう活かすかということを置き換えて考え、実践することができますが、そうでない人は知識として学んだだけになってしまいます。そこで営業マネージャが具体的に指導できればいいのですが、なかなかそれができていません。その一番の理由は、マネージャが研修やマニュアルの内容を理解していないということです。研修を何年も前に受けたことがあっても、忘れてしまっていることがほとんど。だからその研修で教わった内容をどのように日々の仕事に置き換えて、活かすための知恵を授けることができないのです。

マネージャが自分で教えるための教科書をつくる

ではどうするかということですが、まず社外の講師の営業研修を採用するのであれば、その研修をしっかりマネージャが受けることです。それは決して自分が営業としてスキルアップするためではなく、そこで教えていることをベースにしてどのように部下に教えるかを自分で考えるためです。
その際、大切だと思うことを箇条書きで良いので、マネージャ自身がきちんと明文化しておきます。それがそのマネージャが教える上での教科書になるのです。そして教えながらその内容をブラシュアップしていく。何年かしていくと、そのマネージャの魂のこもった生きた教科書として出来上がっていきます。

またこのような取り組みは「自分で責任を持って育てる」というマネージャの意識を高めるためにも有効なのです。

さらにもっとマネージャが自ら教科書をブラシュアップさせている事例をご紹介しましょう。B2B向けサービス業A社では、半期ごとに2つの振り返りをおこなうことで、自社の営業の教科書の素材を集めています。

A社の事例①「提案書の全件レビュー」

A社では上期と下期に1回ずつ、その期間内に顧客に提出したすべての提案書を会議室に持ち込んで、営業マネージャ以下全員でレビューするという場を設けています。

提案書を見ながら参加者は顧客の反応などについてお互いに質問をし合います。すると、今までにない提案書の構成にしたことが功を奏していることが分かったり、これまでは定石だと思っていた解決策で失敗していたことが分かってきます。こういった提案書づくりのノウハウや提案の進め方のノウハウを書記がメモしておき、レビューの最後の時間を使って教科書に記録するノウハウをメンバー全員で選ぶのです。

この提案書レビューの場を継続的に持つことにより、A社の営業担当者は提案書づくりについての個人のノウハウが散らばってしまうことを防ぐことができています。

A社の事例②「全商談の受失注要因分析」

A社では上期末と下期末に半期の全商談を棚卸します。受注した案件と失注した商談を並べて、受注した商談はどのタイミングで受注が確実なものとなり何が成功要因だったのか、失注した商談はどのタイミングで失注が決まり何が失敗要因だったのかを客観的に分析します。

半年分の商談を並べて見てみると、似たような理由で受注/失注している商談が意外と多いことに驚きます。この振り返りにより、受注確率を高めるためのポイントは何か、失注を避けるための注意点は何かが見えてきます。書記はこれらのノウハウをメモしておき、事例①と同じように最後の時間で教科書に記録するノウハウをメンバー全員で絞り込みます。

この商談棚卸しの場を持つことで、A社の営業は商談の受注確率を高めるためのノウハウをメンバー全員で共有することができ、教科書づくりに直結できているのです。

自分で考えたことではないと魂は伝わらない!

A社の事例は、営業の改善活動を教科書づくりに直結させられ、継続できている好事例だと言えます。A社がこのような作業を習慣化できたのは、営業マネージャが提案書や商談についてのノウハウを1つ1つメンバーと一緒に考え明文化し続けたことによって、それぞれのノウハウが営業マネージャ自身の言葉になったことにあります。

営業の教科書づくりを継続させるコツは、気付いたことを明文化して人に伝える習慣をつけること。「何回も同じこと言わせるな!」と部下を叱る前に、わかりやすい文章にまとめて伝えるようにしましょう。自分で考えてまとめたものは、決して上手い文章でなくとも魂が人に伝わるものです。