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営業では以前から顧客管理の重要性が語られています。これは具体的には自社の商品・サービスを買ってくれた顧客がまた自社から継続して購買してくれたり、他の顧客を紹介してくれたりするように顧客関係を管理することです。そしてそこで大切なことは顧客の「情報」をしっかり管理し、有効に活用すること。ただ、これが簡単なようでなかなかできている会社はありません。今回のトライツブログではこの顧客情報管理について一緒に考えてみたいと思います。

「知ってるなら教えてよー」を生まない2つの秘訣

顧客情報管理のために、名刺ホルダーや手帳の住所録などの様々なツールが昔から使われていますし、最近ではパソコンやスマホの電話帳を使って顧客管理をしている方も増えています。しかし、某名刺情報管理システムの会社のCMにあるようにまだまだ情報が個人に閉じられてしまっていて、「知ってるなら教えてよー」というあのシーンのような状況に陥らないようにまだまだ工夫が必要なことが多いのではないでしょうか。

顧客情報を活用するためには、そもそも顧客情報が常に新鮮な状況に保たれるようにしておくことと、日々の仕事で有効に活用することの二つが重要です。

基本は情報の鮮度を保つこと。ではその先は?

これまで一般的には全社的に顧客情報を入力、検索、閲覧できるシステムがあればその問題の多くは解決されると言われてきました。しかし、実際にはなかなか正確な情報が入力されなかったり、メンテナンスが不十分だったりするために、情報が古いものになってしまい、いざという時に頼りにならないものになってしまいがちです。

そこで最近はスマホで名刺を撮影すれば、それを読み取って入力を代替してくれるだけでなく、いろいろな企業から送られてくる名刺情報を一元管理し、所属や役職などの変更にも迅速に対応できるようなクラウドサービスを提供する会社も出てきています。これを上手く活用すれば、名刺に記載されているような基礎的な情報であれば、各企業で個別に手間を掛けてメンテナンスすることなく、常に正確な顧客情報を維持することができます。

ただ、これはあくまでも基本中の基本でしかありませんし、システム側からのアプローチの限界でもあります。これ以上はシステム側でなんとかしようとしてもできないということです。ここから先、どうやって自社らしい顧客情報活用を考えていくかが大切なのです。

キーワードは「組織図化」と「ストーリー化」

しかしながら顧客情報を十分に活用できていない企業のほとんどが、この先の議論をしっかりやっていません。「活用は現場でいろいろ考えるだろうから、システムとしては情報を入れる箱だけ用意しておこう」などということで中途半端なシステムを作ってしまうので、結果として誰も使わないものになってしまっています。

では顧客情報をもっと活用するためにはどのように考えればよいのか。大事なキーワードが「組織図化」と「ストーリー化」です。

顧客情報の「組織図化」で営業アイデア発掘&効率化

ある営業組織では、大型顧客ではビジュアルな組織図上に関係者の役割やつながりを整理するという取り組みを行っています。部署同士の力関係や仕事の流れを組織図の中に書き込んだり、顧客キーマンが以前に一緒に仕事をしていた人や、顧客キーマンの大学の同期など、顧客社内の人的ネットワークを棚卸しすることで、具体的な商談の適切なアプローチ方法や、次のビジネスチャンスの発掘の切り口などが見えてくるのです。

この作成方法を体得してしまうと、常に顧客の人間関係を意識しながら働きかけができるようになり、営業としてのレベルが確実にアップします。そしてこの情報は当然のことながら引き継ぎの時にも有効です。このようなアウトプットは、従来の顧客情報管理のシステムの情報項目に納まるものではありません。むしろホワイトボードに書かれた組織図の写真がシステムにアップされている方がわかりやすいのです。

隠れた営業のヒントが見つかる「顧客とのストーリー」の見える化

た別の営業組織では、その顧客とのビジネスが生まれた背景から、自社とのこれまでの接点をストーリーとして語り継ぐということを大切にしています。ついつい目の前の仕事に気を取られ、現在のキーマンを中心に仕事をすすめようとしてしまいますが、このような機会を作ることで、今までと全く違うアプローチが見えてきたり、隠れたキーマンがわかったりすることが少なくありません。

管理は効率的に。顧客情報活用に時間と知恵を使おう!

これらの活用方法の共通点は、どう使うかわからない情報の整理に時間を費やさないということです。現在の営業に必要な顧客情報をまとめ、それを写真に撮って残しておいたり、知ってる人に語ってもらう機会をつくる。すでにおわかりだと思いますが、これはシステムの問題ではなく、仕事の仕方であり、習慣です。

従って、これからの顧客情報管理は、まず基本的な情報管理については外部のサービスなどを活用し、できるだけ手間を掛けずに維持できるようにする。そして、それをベースにした上で、どのような顧客情報を使ってどのように仕事をしていきたいか、それを上手くやるためにどう工夫するかなどを考え、人の育成やマネジメント側から実現を考えるという二段階アプローチが必要なのです。