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「オープンイノベーション」「新規事業創造」をテーマとした「日本ベンチャー大賞 新事業創造カンファレンス&Connect!」というイベントに参加してきました。経産省が主催しているもので、ホテルニューオータニに1500名以上が集まり、大盛況でした。
基調講演が「世界で最もイノベーティブな会社」に選ばれたグローバルなデザインコンサルティング会社IDEOの共同経営者のTom Kelly氏。とても面白い内容でしたので、ここでご紹介して、営業にも活かせないか考えてみたいと思います。

デザイン・シンキングで最も重要なことは”共感”

<講演骨子>
1.創造性は誰もが持っている
2.発揮するためには、デザイナーのように考えること(デザイン・シンキング)が重要
3.デザイン・シンキングには①共感、②実験、③ストーリーテリングの3つのキーがある
4.共感から始めること
5.その人の立場に立ってみて考える
6.実験はなるべく早く、小さく、安く、失敗を恐れない
7.共感して、生活の中で実験して、その中にテクノロジーを含める

お話の中で「共感=empathy」という言葉を何回も使っておられたことが印象的でした。テクノロジー視点でモノづくりをして、使えないのはユーザーが悪いと考えるのでなく、顧客の立場で考えよ。それも表面的なレベルでなく、顧客に共感できるレベルまで顧客のことを知ることでイノベーションのアイデアが生まれると。それをさっさとカタチにしてやってみることでいろんなことがわかってくるということを事例交じりにお話しいただきました。
日本だけでなく、欧米でもいかにイノベーションを起こす人材を育てるか、組織を作るかということが大きな経営課題になっているようです。

営業においてもデザイン・シンキングは活用できる

この考え方は、営業のプロセスにも通じるところがあります。特にパターン化された手順で売るのではなく、新商品とか既存商品でも新たな用途や新市場に売ろうとすると顧客の中にイノベーションを起こす必要が出てきます。そこでデザイン・シンキングはとても参考になると思います。

具体的には、「共感」ついてはまず想定される顧客とか、使ってる場面のことをとにかく良く知ること。ユーザーに共感するということですね。自社商品の提案のために必要な事項を確認するのではなく、顧客の視点で考えることができるようになるまで、顧客の話を聞き、そして現場を見せてもらうということです。

「実験」の目的はさっさとやってみて、自分が描いている将来像を相手も頭の中に描けるようになること。そう考えると、こちらが企画・提案した内容についてサンプルを提供して顧客にテストしてもらったり、デモを見てイメージを持ってもらったり、テスト的に運用してもらったりするようなことが含まれます。これが簡単にすぐできるようになっていると、営業はとてもやりやすいですね。

最後の「ストーリーテリング」は、顧客内で提案している商品・サービスの購入の意思決定をしてもらい、それによって期待する成果を得るまでのストーリーを描いて顧客と共有することです。

このように考えると、今の営業プロセスの中で、「本当に顧客に共感できる程、顧客のことがわかっているか、もっとわかるためにどうすればいいか」「顧客に成果を早くイメージしてもらうためにできる工夫はないか」「顧客が社内の意思決定をスムーズに進めるためにはどんなストーリーで提案すればよいか、何か支援できることはないか」などと見直す点が浮き彫りになってきます。

ちなみにその後で行われたパネルディスカッションでは、イノベーションのためには、それを自ら推進しようとする「イノベーター」を中心にして、「経営者のコミットメント」と、それにイノベーターを支援したり、外部のネットワークとつなげたりする「加速支援者」が重要であるという話が出ていました。

顧客のイノベーションを加速支援する営業担当者

顧客担当者が新しい商品・サービスを導入して、仕事の生産性を大幅に向上させたり、競争力のある画期的な新商品開発につなげたいと考えたら、そこにはイノベーションが必要です。
もし、それに取引先の営業担当者が「デザイン・シンキング」を活用して顧客の創造性をもっと引き出し、さらには「加速支援者」として機能してくれるのなら、とても重要なビジネスパートナーになるでしょう。この「顧客にとっての加速支援者」はこれからの営業担当者が目指すべき一つの姿だと考えらるのではないでしょうか。